援農ボランティアが置かれた場所|従事者103万6千人と雇用54万人の間

自営で農業をしている人は、25年で半分以下になった

収穫の時期だけ人手がほしい、という声がどこから出てくるのかを先に押さえておきたい。自営農業を主な仕事としている世帯員を基幹的農業従事者と呼ぶ。農林水産省の統計表によると、この人数は令和7年の農林業センサスで103万6千人だった。

農林水産省の令和7年度 食料・農業・農村白書は、平成12年の240万人と比べて半数未満になったと書いている。平均年齢は67.7歳で、令和2年からは0.1歳下がった。年齢の内訳を見ると65歳以上が72万1千人で全体の69.6%、49歳以下は13万人で12.6%である。

年次 基幹的農業従事者数 平均年齢 調査
令和2年 136.3万人 67.8歳 農林業センサス(全数)
令和7年 103.6万人 67.7歳 農林業センサス(全数)
令和8年 98.7万人 67.7歳 農業構造動態調査(標本・推定値)
農林水産省の統計表より作成。令和8年は標本調査の推定値なので、前の2時点と直接は比べられないと注記されている

令和8年の98.7万人は標本調査による推定値で、全数調査の数字とは性質が違う。それでも100万人という線をまたいだことは記録しておいてよい。働き手の7割が65歳以上という構成のまま、総数が下がり続けている。

募集中の地域コンテスト

読んだら、地域に行ってみよう

地域が出したお題に、オンラインでアイデアを応募できます。受賞すると、現地に無料で招待されます。

募集中の地域をすべて見る

雇って埋めようとしても、採れていない

減ったぶんを人を雇って埋める道はある。白書によれば、農業における雇用者数は令和7年で54万人である。農林漁業の有効求人倍率は平成26年以降1.0倍を上回り続けており、求人のほうが多い状態が10年以上続いている。

新しく入ってくる人の数も伸びていない。令和5年の新規雇用就農者は9,300人で前年に比べ12.0%減り、新規参入者は3,830人で1.0%減った。49歳以下の新規就農者は1万5,890人で5.8%の減少である。白書は、他産業との採用競争や厳しい経営環境が影響した可能性を挙げている。

市町村から青年等就農計画の認定を受けた認定新規就農者は、令和6年度で1万954経営体だった。前年度から0.5%の増加で、ほぼ横ばいである。受け皿として法人経営体の役割は大きくなっており、49歳以下の新規就農者のうち新規雇用就農者の割合は令和5年に43.3%となって、新規自営農業就農者の40.4%を上回った。自分で始める人より、雇われて入る人のほうが多い構図になっている。

外から人を入れる手も打たれている。農業分野の外国人材は令和7年で6万4,826人、前年より6,687人増えた。特定技能の在留外国人は令和8年2月末で3万9,234人、前年同月末から9,903人増えている。それでも5年以内に経営を引き継ぐ後継者を確保できている経営体は全体の3割に届かない。常勤の担い手を増やす手段は、どれも時間がかかる。

果樹の収穫期は、一時に大勢が必要になる

ここで出てくるのが、農業に関心のある市民が手を貸す援農ボランティアである。農林水産政策研究所は、JAふじ伊豆(旧JAなんすん)が果樹類で行っている仲介の事例を分析し、労働力不足軽減に資する援農ボランティアとして2022年度の研究ピックアップにまとめている。

この研究が最初に挙げるのは作物の性質である。果樹は収穫期にスポット的に多くの労働力を要する。だから居住地や組合員資格といった制限を設けず、広く募集することが求められるという整理になる。年間を通じて人を雇う形では合わない需要が、そこにある。

仲介はJAの地区営農課が担い、参加者と受入農家の双方を募集して日程を調整する。実施後は双方から報告を受ける。受入農家を集める側では生産部会の協力を得ることと、経営にどんな効果があるのかを説明することが要点として挙げられている。参加者を集めるのとは別の説得が必要だという指摘である。

順番 動くところ 内容
1 JA→参加者 募集し、応募を受ける
2 JA→受入農家 募集し、応募を受ける(生産部会の協力を得る)
3 JAと両者 日程を調整する
4 受入農家→参加者 作業内容の指示と指導を行い、援農を実施する
5 受入農家→参加者 交通費を支給し、携わった作物を持ち帰ってもらう
6 両者→JA 実施後に報告する
7 参加者と受入農家 二年目以降は相対でのやりとりも行う
農林水産政策研究所「労働力不足軽減に資する援農ボランティア」(2022年度研究ピックアップ)の図より作成

交通費と持ち帰りを、先に明示しておく

参加する側が気にするのは、結局のところ持ち出しがどれだけになるかである。研究が「きっかけ作り」として挙げるのは、交通費の支給と、援農に携わった作物を土産として持ち帰れることを、あらかじめ明示しておく点だった。終わってから渡すのでは参加の判断に効かない。募集の段階で書いてあるかどうかが参加意欲を左右するという指摘である。

もう一つの要点は「定着のための枠組み作り」で、ここでは参加者と受入農家の人間関係を意識して組むことが最も重要だとされている。二年目以降は農家と直接やりとりする形に移すのが、そのための有効な方法として挙げられていた。初回はJAが間に入り、続く人は農家とつながっていく。仲介役が最後まで握り続けない設計になっている。

働く条件の側も動いている。白書によると、農業は労働関係法制で特例的な取扱いが認められてきたが、若者や女性にも選ばれる産業にするには他産業並みの労働環境を備えた経営体を増やす必要があるとして、農林水産省は令和6年度から「農業の労働環境改善に向けた政策の在り方に関する検討会」を開いている。労災保険の任意加入の促進も議題に入っている。雇用された人の条件が整っていない場では、無償で入る人の立場も曖昧になりやすい。

研究はJAの強みにも触れている。農家との密接な関係に加えて地域住民との接点も多いため、仲介役としてより大きな役割を担い得る、という見立てである。誰が間に立つかで、同じ援農でも集まる人の層が変わる。

無償の手伝いと、賃金が出る仕事の間

援農ボランティアという言葉には、無償という前提と労働力という役割が同時に入っている。交通費や作物の受け渡しがある形は、謝礼でも賃金でもない中間に置かれる。どこから先が雇用になるのかは、ボランティアと有給活動はどこが違うのかで扱っている労働者性の線引きの問題になる。作業内容の指示と指導を受けるという点では、援農は指揮命令に近い要素を含んでいる。

体験として行く農業との違いもある。参加費を払って田植えや収穫を体験する枠組みは、受け入れ側が人手を得るためのものではない。農業体験の種類と選び方で整理されているように、期間と作業内容と受け入れ先で性質が分かれる。援農は収穫期の労働力をあてにしている側なので、途中で抜けられると困る位置にいる。

学生が関わるなら、この違いを先に確かめておきたい。人手として数えられる前提で入るのか、学びの機会として入るのか。前者であれば、作業の時間と安全の責任が誰にあるのかまで聞いておくことになる。FLASPOが扱う地域プロジェクトでも、受け入れ側が何を期待しているかの確認は最初の作業にあたる。

よくある質問

援農ボランティアの全国的な登録者数はわかるのか。農林水産省の統計に援農ボランティアという区分はなく、全国の人数を示した公表値は見当たらない。仲介しているのはJAや自治体、NPOなど個別の団体なので、募集の状況はその単位で確かめることになる。

無償なら受入農家は得をするだけなのか。研究では受入農家の参加を促すことも課題として挙げられている。作業の指示と指導をするぶん、受け入れる側にも手間がかかる。経営上どんな効果があるのかを説明しなければ農家が応じないという前提で、仕組みが組まれている。

交通費が出るなら収入になるのか。実費の支給は、働いた対価として支払われる賃金とは扱いが違う。ただし名目と実態がずれると判断は変わるので、金額の根拠と支給の名目は募集要項で確かめておくのが安全である。

人手不足はどの作物でも同じなのか。同じではない。研究が対象にしたのは果樹で、収穫期に一時に人手が要る性質があった。畜産や施設園芸は年間を通じた作業が多く、スポットの手伝いでは埋まりにくい。関わり先を選ぶときは、作物ごとの作業の波を見るところから始めたい。


アイデアコンテストプラットフォーム「FLASPO」

FLASPO

アイデア1つで、地域や企業とつながれる。

FLASPOは、全国の自治体・企業が開催する若者向けアイデアコンテストのプラットフォームです。
地域や企業が抱える課題に対して、あなたのアイデアで解決策を提案できます。

賞金やユニークな地域体験が獲得できるコンテストも多数。誰でも参加無料・オンライン完結で挑戦できます。

コンテストを探す▶︎

FLASPOで募集中のコンテスト

自治体や企業が出したお題に、学生・若者がオンラインでアイデアを応募できます。募集中のものも、これまでのお題と結果も、一覧で見られます。