コンビニのレジに立つ学生、塾の教室で丸付けをする学生、倉庫で荷物を仕分ける学生。講義室に座っている人のうち、働いていないのは7人に1人を下回る。アルバイトが例外ではなく前提になっていく過程は、公的な調査の数字にそのまま残っている。
働く学生は9割に近づいた
日本学生支援機構は平成16年度から隔年で学生生活調査を続けている。令和6年11月に実施された回では、82,593人を対象に12,659人から有効回答を得た(回収率15.3%)。この調査で、調査時前1年間にアルバイトに従事した大学学部(昼間部)の学生は86.4%にのぼった。
推移を並べると増え方がはっきりする。令和2年度80.7%、令和4年度83.8%、そして令和6年度86.4%。2年ごとに3ポイント前後ずつ積み上がっている。働いていない学生は13.6%まで減った。短期大学(昼間部)も同じ方向で、従事率は83.7%である。
全国大学生活協同組合連合会の第61回学生生活実態調査では、2025年の10月から11月にかけて「現在アルバイトをしている」と答えた学生が77.4%だった。1年間の経験を聞く問いと、その時点の状況を聞く問いでは数字が変わる。前者は9割近く、後者は8割弱と覚えておくと取り違えずに済む。
職種の分布はこの数字ほど均等ではない。飲食と小売に大きく偏っていて、通える範囲の求人がその2業種で埋まることも多い。どの職種がどれだけ募集を出しているかは大学生のアルバイトの探し方で整理されている。
収入の4分の1がアルバイトに移った
同じ調査は収入の出どころも聞いている。大学学部(昼間部)の年間収入額は2,030,100円で、前回の令和4年度から62,700円(3.2%)増えた。増えた額そのものより、何が増えて何が減ったかのほうが事情を語っている。
| 収入の区分 | 令和4年度 | 令和6年度 | 構成比の動き |
|---|---|---|---|
| 家庭からの支援 | 1,096,900円(55.8%) | 1,029,700円(50.7%) | 5.1ポイント減 |
| 奨学金 | 407,600円(20.7%) | 437,500円(21.6%) | 0.9ポイント増 |
| アルバイト収入 | 375,900円(19.1%) | 507,700円(25.0%) | 5.9ポイント増 |
| 定職・その他 | 87,000円(4.4%) | 55,200円(2.7%) | 1.7ポイント減 |
| 合計 | 1,967,400円 | 2,030,100円 | 3.2%増 |
家庭からの支援は67,200円減り、構成比では初めて5割台のふちまで下がった。入れ替わるようにアルバイト収入が131,800円増え、全体の4分の1を占めるに至った。仕送りが細った穴を、学生本人の労働時間が埋めている形である。
支出側はもっと速く動いた。学費と生活費を合わせた学生生活費は2,019,100円で、前回より194,400円(10.7%)増えている。収入の伸びが3.2%にとどまる一方で支出が1割増えたのだから、差は家計の緊張としてどこかに現れる。
支援だけでは足りない層が増えた
アルバイトをしている学生を、家計の見通しで二つに分けた集計がある。「家庭からの支援のみで十分修学可能」と答えた人は51.3%で、前回より1.1ポイント減った。これに対し「支援のみでは修学がやや困難・非常に困難、及び支援無し」と答えた人は35.1%まで伸び、3.6ポイント増えている。
同じ86.4%のなかに、小遣いを増やすための労働と、学費や家賃を埋めるための労働が混在している。後者が増えているという事実は、シフトを削る自由度が人によって大きく違うことを意味する。試験前に休めるかどうかは、意志の強さではなく家計の構造で決まる場面がある。
奨学金の側は逆を向いた。何らかの奨学金を受給している大学学部(昼間部)の学生は51.1%で、前回から3.9ポイント減っている。借りる額を抑えて働く時間を増やす選択が、全体としては広がったと読める。
仕送りの減少とアルバイト依存が重なったときに家計がどう傾くかは、大学生の一人暮らしのデメリットで具体的な金額とともに扱われている。
週あたり11時間から15時間に山がある
では、どれくらい働いているのか。学生生活調査は週間平均の生活時間も聞いており、アルバイトと定職に充てる時間の分布は次のようになっている。0時間19.3%、1から5時間10.4%、6から10時間19.0%、11から15時間23.1%、16から20時間16.9%。最も多いのは11から15時間の層だった。
週11から15時間は、1回4時間のシフトを3回か4回入れる水準にあたる。授業と課題を抱えながら無理なく回せる上限が、そのあたりに落ち着いているのだろう。21時間以上と答えた層も合計で10.9%あり、そのうち31時間以上が3.1%を占める。
注意したいのは、学業に充てる時間との兼ね合いである。同じ調査では、授業の予習・復習や課題に週1から5時間と答えた学生が54.8%を占めた。アルバイトの時間が学習時間を上回る学生は、珍しくないどころか相当な厚みをもって存在している。
時間を投じた見返りを収入だけで測ると、判断を誤ることがある。職場で何が身につき、何が削られるのかという観点は大学生がアルバイトで得るものにまとめられている。
若い世代の時給と、始める前に確かめること
働く量が同じでも、単価が違えば残るものは変わる。厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査によると、短時間労働者の1時間当たり賃金は男女計1,476円だった。ところが年齢階級で見ると、19歳以下は1,137円、20歳から24歳は1,228円にとどまる。
一方、令和8年度の地域別最低賃金は全都道府県で答申され、全国加重平均は1,177円となった。前年度の1,121円から56円の引き上げで、最高額は1,280円、最低額は1,085円。令和8年10月1日から12月2日までの間に順次発効する。19歳以下の平均が最低賃金の全国平均をわずかに下回る位置にあることは、若い世代の賃金が下限に張り付きやすい事情を示している。
厚生労働省は平成27年度から「アルバイトの労働条件を確かめよう!」キャンペーンを続けており、令和7年度は4月1日から7月31日まで実施された。重点として挙げられたのは、労働契約を結ぶときの労働条件の明示、シフト制で働く人の適切な雇用管理、労働時間の適正な把握、商品の強制購入の抑止と代金を賃金から控除しないこと、罰金額をあらかじめ定めることと労働基準法に反する減給制裁の禁止の5点である。
学生の進路を見てきたFLASPOの実感としても、もめごとは働き始めてから起きるのに、防げるのは働き始める前だけだ。条件が書面で渡されているか、支払い日と締め日が分かっているか。この2点を初日に確かめておくだけで、後の交渉の足場がまるで違う。
よくある質問
アルバイトをしている学生は実際には何割ですか。日本学生支援機構の令和6年度調査では、大学学部(昼間部)で調査時前1年間に従事した人が86.4%だった。全国大学生協連の2025年の調査では、その時点で働いていると答えた人が77.4%である。聞き方の違いで1割近く差が出る。
仕送りは本当に減っているのですか。年間の家庭からの支援は令和4年度の1,096,900円から令和6年度は1,029,700円へ、構成比では55.8%から50.7%へ下がった。金額でも割合でも減少しており、同時にアルバイト収入が131,800円増えている。
週にどれくらい入れるのが標準的ですか。最も多い層は週11から15時間で23.1%を占める。次に多いのが6から10時間と0時間で、いずれも19%前後。20時間を超えると学習時間の確保が難しくなる傾向があり、試験期に調整できる職場を選ぶほうが長続きしやすい。
時給が最低賃金を下回っていたらどうなりますか。地域別最低賃金は強制力のある下限なので、これを下回る契約は賃金部分が無効となり、差額を請求できる。令和8年度の改定額は10月1日から12月2日の間に都道府県ごとに発効するため、発効日をまたぐ月は日割りで単価が変わる点に気をつけたい。
学生のアルバイトにも労働条件通知書は必要ですか。労働基準法は労働契約を結ぶ際の労働条件の明示を使用者に義務づけており、学生アルバイトも対象になる。厚生労働省のキャンペーンでも明示が重点事項の先頭に置かれている。渡されていなければ求めてよい。
出典
日本学生支援機構「令和6年度学生生活調査結果」/厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金額改定の答申について」/厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査 短時間労働者の賃金」/厚生労働省「アルバイトの労働条件を確かめよう!」キャンペーン/全国大学生活協同組合連合会「第61回学生生活実態調査」
アイデアコンテストプラットフォーム「FLASPO」

アイデア1つで、地域や企業とつながれる。
FLASPOは、全国の自治体・企業が開催する若者向けアイデアコンテストのプラットフォームです。
地域や企業が抱える課題に対して、あなたのアイデアで解決策を提案できます。
賞金やユニークな地域体験が獲得できるコンテストも多数。誰でも参加無料・オンライン完結で挑戦できます。
