移住の見積もりで抜けやすいのが税の欄である。家賃や引っ越し代は請求書が来るので忘れないが、税は払う時期が後ろにずれるうえ、出どころが国と県と市町村に分かれている。しかも「移った年に一度だけ出るもの」と「持っているあいだ毎年出るもの」が混ざっているため、ひとまとめに概算すると桁を間違える。分けて数えるところから始めたい。
一度だけの税と、毎年続く税は別の列に書く
税を時間軸で並べると、三つの塊になる。買った瞬間に出るもの、持っているあいだ毎年出るもの、そして前の年の所得に応じて翌年に来るものである。賃貸で移るなら一つ目はほとんど出ないので、家を買う場合といきなり差が開く。車も同じ構造で、買う段階と持ち続ける段階の二回効いてくる。
| 税目 | いつ出るか | 税率など | 課す主体 |
|---|---|---|---|
| 不動産取得税 | 取得したとき一度 | 本則4%。住宅と土地は3%(令和9年3月31日まで) | 都道府県 |
| 登録免許税 | 登記したとき一度 | 売買による所有権移転は本則2%。住宅用家屋は0.3% | 国 |
| 固定資産税 | 毎年 | 標準税率1.4% | 市町村 |
| 都市計画税 | 毎年(市街化区域) | 0.3%を上限として条例で設定 | 市町村 |
| 自動車税環境性能割 | 取得したとき一度 | 0〜3%(軽自動車は0〜2%) | 都道府県 |
| 自動車税種別割 | 毎年 | 自家用乗用1,000cc以下で25,000円 | 都道府県 |
| 軽自動車税種別割 | 毎年 | 四輪自家用乗用で10,800円 | 市町村 |
この表の上三行が、都市から移るときに新しく出てくる顔ぶれになりやすい。都心で賃貸に住み、車を持たずに暮らしていた人なら、不動産取得税も自動車税も縁がなかったはずだ。移った先で戸建てを買い、車を一台持つと、七行のうち六行が自分に関係する欄に変わる。
家を買うと、引き渡しの前後で二つの税が一度だけ出る
最初に来るのが不動産取得税で、これは都道府県の税である。国土交通省の資料によると本則の税率は4%だが、令和9年3月31日までに取得した住宅と土地には3%の特例が適用される。土地についてはさらに課税標準を2分の1とする特例が重なるため、実際の負担は本則から見た印象よりだいぶ軽い。
住宅そのものにも控除がある。新築住宅なら課税標準から1,200万円が差し引かれ、既存住宅は新築された時期に応じた一定額が控除される。地方で中古の戸建てを買う場合、評価額が控除額の範囲に収まって税額がゼロになることも珍しくない。逆に、物件価格が安いからといって土地が広いと、土地側の評価で額が動く。概算のつもりでも、価格ではなく固定資産課税台帳の価格に税率をかけるという点だけは押さえたい。
もう一つが登録免許税で、こちらは国の税である。売買による所有権移転の登記は本則2%だが、住宅用家屋には0.3%の軽減税率があり、所有権の保存登記は0.4%が0.15%になる。土地の売買による移転登記は令和11年3月31日まで1.5%とされている。本則と特例で6倍以上ひらく項目なので、自分の物件がどの軽減に当たるかを司法書士に確かめるだけで見積もりの精度が上がる。古い家を買う場合の費用の積み方は古民家の購入費用の内訳でも扱っている。
持ち続けるあいだは1.4%が毎年。基準の日は1月1日
買ったあとに毎年来るのが固定資産税である。総務省の制度説明では標準税率は1.4%で、市街化区域なら都市計画税が上乗せされる。都市計画税は0.3%を上限として条例で決まるので、同じ県内でも市町村によって合計の率が変わる。
移住の時期を考えるうえで効いてくるのが賦課期日である。その年度の初日が属する年の1月1日に所有していた人に課される、という決め方になっている。年末に引き渡しを受けるか、年明けに受けるかで、最初の1年分を誰が負担するかが変わる。売買契約では日割りで精算するのが慣習だが、納税通知書が届くのは所有者として登録されている側である。12月の引き渡しを急ぐ理由があるなら、この点を確認しておきたい。
免税点も覚えておくと判断が早い。課税標準額が土地で30万円、家屋で20万円に満たない場合は課税されない。令和9年度以後の年度分からは家屋が30万円、償却資産が180万円に引き上げられる予定が注記されている。評価の見直しは土地と家屋について3年ごとに行われ、それ以外の年度は原則として据え置かれる。買った年に安かったから毎年同じとは限らず、評価替えの年に額が動くという前提で家計を組むほうが安全だ。
車の税は、買う時と毎年の二回効く
公共交通の本数が少ない地域では、車を持つかどうかが生活の前提になる。その車にも二段の税がかかる。総務省の資料によれば、取得の段階では環境性能割がかかり、燃費基準の達成度に応じて0〜3%、軽自動車では0〜2%の税率が決まる。電気自動車とプラグインハイブリッド車は非課税で、取得価額が50万円以下の車は免税点以下として課税されない。地方で中古の軽自動車を安く買う場合、この免税点に収まることが多い。
毎年来るのが種別割である。自家用乗用車の標準税率は総排気量で刻まれていて、1,000cc以下が25,000円、1,000cc超1,500cc以下が30,500円、1,500cc超2,000cc以下が36,000円と上がっていく。令和元年10月より前に初回登録を受けた車には、それぞれ29,500円、34,500円、39,500円という従前の額が適用される。軽自動車税の種別割は四輪の自家用乗用で10,800円。普通車のいちばん軽い区分と比べても半分以下で、初度検査から年数が経った車は重課で額が上がる仕組みもある。
一台を持つか二台を持つかで、毎年の固定費が2万円台から7万円台まで動く。しかも税だけでなく車検、保険、タイヤの入れ替えが乗ってくる。車にまつわる固定費の積み方は移住後の生活費で扱ったので、台数を決める前に合わせて見ておきたい。FLASPOが扱う地域の暮らしの記録を読むと、台数の判断が地域の地形や通勤距離で変わることがよく分かる。
前年の所得で決まる税は、移った翌年に効いてくる
ここまでは家と車という「物」にかかる税だった。これとは別に、所得にかかる税が移住の家計を揺らす。住民税は前の年の所得をもとに計算され、その年の1月1日に住んでいた市町村に納める。都市で働いていた収入をもとにした額が、移った先での暮らしが始まったあとに請求される形になる。
収入が下がる移り方をする人にとって、この一年のずれは重い。手取りが減った最初の年に、前年の高い収入に対応する住民税を払うことになる。国民健康保険料も前年の所得で決まるため、同じずれが二重に効く。会社を辞めて移る場合は、天引きが止まって自分で納める形に切り替わるので、納付の回数と月も変わる。時点のずれをどう表に落とすかは移住費用のシミュレーションで24か月の形に組んだ。
逆に、移った年の所得が低く抑えられていれば、翌年の負担は軽くなる。収入が切り替わる時期を年度の前半に置くか後半に置くかで、二年目の額が変わるということだ。税の欄は見積もりの最後に足す項目に見えるが、動かせる余地があるのは時期のほうである。金額を削るより、いつ来るかを先に知って現金を残しておくほうが現実的な備えになる。
よくある質問
賃貸で移るなら税は増えないのか。家にかかる一度だけの税は出ない。ただし車を持てば環境性能割と種別割がかかり、住民税と国民健康保険料のずれは賃貸でも同じように起きる。
不動産取得税はいつ払うのか。取得したあと都道府県から納税通知書が届いてから納める。登記の時期や自治体の事務の進み方で数か月後になることがあり、引き渡しの支払いとは別の時期に来ると考えておきたい。
固定資産税は家が古ければ安いのか。評価額が低ければ税額も下がり、課税標準額が家屋で20万円に満たなければ課税されない。ただし土地は別に評価されるので、敷地が広い物件では家屋が古くても土地側で額が出る。
軽自動車に替えると毎年いくら変わるのか。四輪の自家用乗用の標準税率は10,800円で、普通車のいちばん軽い1,000cc以下の区分が25,000円。単純な差でも年14,200円で、排気量が大きい車からの乗り替えなら差はさらに開く。
都市計画税は必ずかかるのか。市街化区域内の土地と家屋が対象なので、区域の外にある物件ではかからない。地方では同じ市のなかで区域の内と外が分かれていることが多く、物件ごとに確認が必要になる。
特例の税率はいつまで使えるのか。住宅と土地の不動産取得税3%は令和9年3月31日まで、土地の登録免許税1.5%は令和11年3月31日までとされている。期限は延長されることも終わることもあるので、契約の時期が期限に近いときは最新の案内を確かめたい。
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