ご当地キャラの失敗はどこで起きるか|1,084自治体の調査から読む

商店街のポスターに描かれたままで、何年も動いていないキャラクターがある。着ぐるみは倉庫にあり、担当者は代わり、公式アカウントの最後の投稿は数年前で止まっている。こうした状態は「人気が出なかった」と片づけられやすいが、全国の自治体に同じことを尋ねた調査を読むと、つまずきの場所はもっと手前にあることがわかる。

手がかりになるのは、公益財団法人東京市町村自治調査会が平成27年3月に公表したご当地キャラクターの活用に関する調査研究報告書 概要である。平成26年8月5日時点の全1,741市区町村に郵送でアンケートを配り、1,084票を回収した(回収率62.2%)。都道府県33団体と、住民を対象にしたインターネット調査も同時に行っている。10年以上前の数字だが、全自治体を対象にした悉皆調査でこれに代わるものは公表されていない。

「作るかどうか」はすでに論点ではなかった

調査の時点で、キャラクターを持たない市区町村は1,084票のうち211票だった。そのうち今後作る予定があると答えたのは33.2%で、1,084票全体に広げると新規作成の意向は13.1%、都道府県では6.1%にとどまる。新しく生まれる数は、この時期にはもう細っていた。

一方、すでに持っている678団体に今後の方針を尋ねると、「活動を拡大したい」が49.6%、「現状を維持したい」が43.4%で、合わせて93.0%が拡大か維持を選んでいる。都道府県でも81.8%が同じ側に並んだ。縮小や中止を選んだ団体はごく少数だった。

つまり、自治体の視線は作る側から運用側へすでに移っていた。にもかかわらず止まってしまうキャラクターが出るのだから、原因は誕生のしかたではなく、生まれたあとに誰がどう面倒を見るかに寄っていることになる。

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成果を測っていない団体が半分近くある

評価指標の設定状況を見ると、「特に現時点では評価指標等は設定していない」が48.4%を占めた。設定している団体が挙げたのは「イベントへの参加数」33.8%、「着ぐるみの貸し出し数」27.0%、「ライセンス許諾数」14.9%が上位である。

お金に近い指標はほとんど使われていない。経済効果を定期的に把握しているのは1.0%、不定期でも3.1%にすぎず、観光客数は8.6%、関連グッズの販売額は11.8%だった。公共交通等の利用者数を見ている団体は0.3%である。

指標がなければ、うまくいっていないことに気づく瞬間も来ない。予算が減るか担当者が異動するまで判断が延び、気づいたときには「いつからか動いていない」という状態になる。測っていないことは、失敗の原因というより失敗が見えなくなる仕掛けだと言ったほうが近い。地域ブランド全体でも同じ構図が指摘されていて、SNSの数字は地域ブランドのどこを測っているかでは指標の立て方そのものを扱っている。

予算より先に人が足りなくなる

課題を複数回答で尋ねた結果は、順位がはっきり分かれた。市区町村で最も多いのは「担当職員等、人員が不足している、職員の負担が大きい」の57.1%で、二番目の「十分な予算が確保できない」25.4%の倍以上ある。都道府県では人員が45.5%、予算が42.4%で、両方が重い(報告書 第2章「全国及び多摩・島しょ地域におけるご当地キャラクターの現状と課題」)。

活動の課題(複数回答) 市区町村 678団体 都道府県 33団体
担当職員等の人員が不足している、職員の負担が大きい 57.1% 45.5%
十分な予算が確保できない 25.4% 42.4%
特に困ったことはない 21.4% 18.2%
地元住民に根付いていない 9.9% 3.0%
知的財産に関するトラブル・リスクがある 6.3% 12.1%
引き際/辞め時がわからない 5.9% 6.1%
人気が無い 5.3% 3.0%
政策目的を達成できていない 3.2% 0.0%
予算に対して活用の効果が乏しい 2.2% 6.1%

注目したいのは「特に困ったことはない」が市区町村で21.4%あることだ。5団体に1団体は困っていないと答えている。裏返せば、残りの約8割は何かしらの持ちこたえにくさを抱えながら運用を続けていたことになる。

人手の問題は、イベント出演の調整、着ぐるみの管理、許諾の審査、SNSの更新といった細かい実務の積み上がりとして現れる。箱物の整備が維持費で行き詰まる流れと似ていて、ハコモノはなぜ失敗するのかで扱った構造がここにも当てはまる。

住民は褒めながら、使い方には点を付けていない

住民調査の結果は、評価が二層になっていることを示している。多摩・島しょ地域を除く全国の1,438人に印象を尋ね、「そう思う」と「どちらかというとそう思う」を合計すると、「地域の知名度を上げている」が81%、「地域の魅力をPRするのに役立っている」が78.8%、「地域の経済に好影響がある」が75.1%、「地域住民がその地域の魅力を見直すきっかけになる」が61.9%だった。

同じ人たちが、否定的な項目にも手を挙げている。「行政がキャラクターをうまく活用できていない」が58.4%で最も多く、「行政主体であり、市民の意見が反映されていない」が51.8%、「何のために作っているのかわからない」が37.7%、「地域の印象が崩れている」が21.5%である。多摩・島しょ地域では「何のためにつくっているのかわからない」が42.6%と全国より高かった。

キャラクターそのものへの好意と、行政の運用への評価は別に動いている。住民はキャラクターを嫌っているのではなく、使い方に納得していない。この段差を読み違えると、人気が落ちたと解釈してテコ入れの方向を間違える。

辞め方を決めている団体はほとんどない

「引き際/辞め時がわからない」を課題に挙げたのは市区町村で5.9%、都道府県で6.1%だった。数字としては小さいが、やめる基準を持たない団体が、やめる基準がないことを課題として認識できているとは限らない。測る指標がない48.4%と並べると、この5.9%は氷山の見えている部分に近い。

ほかの低い数字も同じ読み方ができる。「政策目的を達成できていない」は市区町村3.2%だが、多摩・島しょ地域では9.1%に上がる。「地元住民に根付いていない」は全国9.9%に対して多摩・島しょ地域が22.7%だった。小さく出ている項目は、問題が軽いのではなく、答えるために目的と現状を突き合わせる作業が必要なぶん申告されにくい。

やめるときに実務として残るのは権利関係である。「知的財産に関するトラブル・リスクがある」は市区町村6.3%、都道府県12.1%、多摩・島しょ地域13.6%で、規模の大きい団体ほど高い。使用許諾を出した事業者やグッズの在庫、作者との契約は、活動を止めても消えない。地域の名前と権利の関係は地域ブランドの失敗事例に学ぶでも繰り返し出てくる論点だ。

学生や若い世代が地域の発信に関わるとき、作る楽しさの側だけを渡されると、この運用と権利の重さが見えない。FLASPOが地域と学生の接点を扱うときにも、続けるための体制と撤退の条件を最初に言葉にしておくかどうかで、取り組みの寿命が変わってくる。

よくある質問

失敗したかどうかは、どこを見れば判断できますか

活動を始めるときに指標を決めていたかどうかが分かれ目になる。調査では48.4%の団体が評価指標を設定していなかった。参加数や貸し出し数のような手元で数えられるものでも、記録が続いていれば伸びが止まった時点に気づける。

キャラクターが増えすぎたことが原因ではないのですか

調査の時点で新規作成の意向は市区町村13.1%、都道府県6.1%まで下がっていて、増やす動きは弱まっていた。団体が挙げた課題の上位は人員の57.1%と予算の25.4%で、数の多さを理由に挙げた項目は用意されていない。

小さな自治体のほうが続かないのでしょうか

この報告書は人口規模別の集計を示していないため、規模と継続のつながりは確かめられない。ただし知的財産のトラブル・リスクは市区町村6.3%に対して都道府県12.1%と、大きい団体のほうが高く出ている。

活動を止めるときに先に確認することは何ですか

許諾を出した相手と、作者との取り決めの範囲である。グッズを作っている事業者やイベントで使う団体がいる場合、終了の告知だけでは片づかない。調査研究報告書 全体版には自治体の自由記述も収められていて、費用対効果を慎重に見るべきだという声が並んでいる。


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