副業で地域に関わるという話は、たいてい都市に住む人が地方へ出ていく図で語られる。週末に通い、平日は本業をこなし、受け入れ側の自治体が交通費を持つ。その図は間違っていないが、どこに副業をしている人が多いのかという分布を見ると、思っていたほど都市に偏っていない。
総務省統計局の令和4年就業構造基本調査 結果の概要によると、非農林業従事者のうち副業がある者は304.9万人で、5年前より59.8万人増えた。全体に占める副業者比率は4.8%で0.9ポイントの上昇である。この4.8%を都道府県別に割ると、上位に地方の県がいくつも入ってくる。
比率の上位に、人口の少ない県が並ぶ
最も高いのは京都府の7.5%で、5年前の4.9%から2.5ポイント上がった。次が東京都の6.5%だが、三番目以降は和歌山県5.6%、鳥取県5.5%、長野県5.3%、島根県5.3%、高知県5.2%と続く。いずれも全国平均の4.8%を上回っている。
逆に低いのは宮崎県3.3%、大分県3.5%、静岡県3.6%、青森県3.7%だった。地方だから副業が多い、あるいは少ない、という単純な線は引けない。同じ地方のなかで3.3%と5.6%が並んでいる。
| 都道府県 | 副業者比率 2022年 | 2017年 | 副業がある者 |
|---|---|---|---|
| 京都府 | 7.5% | 4.9% | 9.7万人 |
| 東京都 | 6.5% | 5.0% | 52.4万人 |
| 和歌山県 | 5.6% | 4.5% | 2.3万人 |
| 鳥取県 | 5.5% | 4.5% | 1.4万人 |
| 長野県 | 5.3% | 4.9% | 5.4万人 |
| 島根県 | 5.3% | 5.3% | 1.7万人 |
| 高知県 | 5.2% | 3.7% | 1.6万人 |
| 全国 | 4.8% | 3.9% | 304.9万人 |
| 静岡県 | 3.6% | 3.5% | 6.7万人 |
| 大分県 | 3.5% | 3.5% | 1.8万人 |
| 宮崎県 | 3.3% | 3.4% | 1.6万人 |
5年のあいだ動かなかった県もある。島根県は5.3%のまま、岐阜県は4.2%のまま、大分県は3.5%のままで、全国が0.9ポイント上がった局面に乗っていない。副業の広がりは全国一律に起きたのではなく、県によって始まった年が違うと見たほうが実態に近い。
比率と人数は別の話であることも、表の右端を見るとわかる。京都府は比率で全国一だが人数は9.7万人で、東京都52.4万人の5分の1に届かない。鳥取県は比率5.5%でも1.4万人である。受け入れ側が人を探すときに当てになるのは人数のほうで、比率が高いことは「その県で副業が珍しくない」という意味しか持たない。
増えた59.8万人は、どこで増えたのか
副業がある者の推移をたどると、2007年241.5万人、2012年214.6万人、2017年245.1万人と横ばいに近い動きが続き、2022年に304.9万人へ跳ねている。比率でも3.9%、3.6%、3.9%、4.8%と、直近の5年で初めて明確に上がった。
増分の配分は均等ではない。東京都は37.6万人から52.4万人へ14.8万人増え、神奈川県が6.4万人、大阪府が5.8万人、愛知県が5.4万人増やした。一方で秋田県は0.3万人減って比率も0.5ポイント下がり、岩手県、山形県、新潟県、宮崎県も減少している。
雇用形態で割ると、正規の職員・従業員の副業者比率は2.5%、非正規は7.2%だった。正規は0.6ポイント、非正規は1.3ポイントの上昇である。制度として副業を解禁した勤め先が増えた影響は正規側に出るはずだが、水準そのものは非正規のほうが3倍近く高い。
関係人口の流れは、都市から地方だけではない
関わる側の分布も、都市起点だけでは説明がつかない。国土交通省「全国の関係人口は18歳以上の2割強」は、18歳以上の居住者約1億275万人のうち約2,263万人、2割強が特定の地域と継続的に関わっていると推計した。訪問をともなう関係人口が約1,884万人、訪問をともなわない層が約379万人である。
この調査で興味深いのは流動の内訳だ。三大都市圏を除く「その他地域」から「その他地域」への流れが約763万人で最も多く、「首都圏都市部からその他地域」の約293万人を大きく上回る。「首都圏都市部から首都圏都市部」は約222万人だった。
地方に住む人が別の地方に関わるという形が、量としては主流である。副業者比率で和歌山県や鳥取県や高知県が平均を超えていたことと、この763万人は同じ方向を指している。地方の人材が地方を支える経路は、すでに数のうえで存在している。関わりが何年目に厚くなるかは若者の関係人口は3〜4年目が多いで整理した。
制度の線は、この分布の上に引かれていない
では公的な仕組みはどこを向いているか。総務省「地域活性化起業人等について」によると、副業型は令和6年度から始まり、自治体と企業に所属する社員が契約を結ぶ方式をとる。勤務日数と時間は月4日以上かつ月20時間以上、受入自治体での滞在は月1日以上、任期は6か月から3年である。
対象になる人には条件がある。三大都市圏に所在する企業等に勤務する人が基本で、三大都市圏に本社機能を持つ企業であれば三大都市圏外の勤務者も含まれる。受け入れ側は三大都市圏外の市町村などで、対象は1,433市町村、企業の所在地が政令市や中核市や県庁所在市である類型では1,375市町村に絞られる。
つまり、鳥取県や島根県の地元企業に勤める人が県内の別の町で副業をしても、この枠組みには乗らない。763万人という最大の流れと、制度が財政措置を用意している範囲は重なっていない。地方同士の関わりは、各自治体が独自に予算を立てるか、制度の外で進めることになる。派遣型の仕組みは地域おこし企業人は今どこにいるかで人数の内訳を追っている。
足りないのは意欲ではなく条件のほう
やりたい人の母数は小さくない。同じ就業構造基本調査で、非農林業従事者のうち追加就業希望者は493.4万人、比率は7.8%だった。5年前より93万人、1.3ポイント増えている。正規の職員・従業員では7.7%で2.4ポイントの上昇と、伸びが大きい。副業をしている305万人の1.6倍の人が、増やしたいと答えている。
その差を埋めるのに何が要るかは、国土交通省の調査が聞いている。今後地域と関わりを持つための改善点として挙がったのは「仕事やプライベートでの時間的な余裕の確保」27.4%、「移動や滞在に伴う金銭的な負担の軽減」26.7%、「地域に行くための交通の利便性の改善」26.4%で、三つがほぼ並んだ。
時間と金銭と交通の三つは、本人の努力でどうにかなる部分が小さい。勤め先の規則、交通費の出どころ、路線の本数が関わる。副業そのものの注意点は副業のメリットと留意点にまとめたが、地域と結びつける場合はここに移動の条件が加わる。
学生の立場だと、この三つの制約はまだ軽い。授業の空き方次第で時間を作れるし、勤め先の副業規定にも縛られない。その反面、月4日以上という契約型の枠には乗りにくい。FLASPOが地域と学生をつなぐときに短い関わりから始める形を取るのは、この条件の違いに沿っているからでもある。
よくある質問
副業者比率が高い県は、副業しやすい県ということですか
比率は非農林業従事者に占める割合なので、その県で副業が珍しくないことは示す。ただし人数は別で、京都府は7.5%でも9.7万人、鳥取県は5.5%でも1.4万人である。人を募る側から見れば、比率の高さは当てにしづらい。
地方に住む人が地方で副業をする場合、制度の対象になりますか
総務省の地域活性化起業人の副業型は、三大都市圏に所在する企業等に勤務する人を対象としている。地方の企業に勤める人が近隣の自治体で副業をする形は、この特別交付税の枠には入らない。
副業を増やしたいと考えている人はどのくらいいますか
追加就業希望者は493.4万人で、比率は7.8%だった。5年前から93万人増えていて、正規の職員・従業員では2.4ポイント上がっている。実際に副業をしている人数を上回る規模である。
関係人口として関わり続けるには何が障害になりますか
時間的な余裕の確保を挙げた人が27.4%、移動や滞在の金銭的な負担の軽減が26.7%、交通の利便性の改善が26.4%で、ほぼ同じ重さで並んだ。どれか一つを解いても残りの二つが残る形になっている。
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