アントレ教育の受講率は5.2%|学内の活動を事業に変える手順

学内の活動を事業に変える人は、どれだけ通ってきたのか

ゼミの地域調査や学生団体の活動が、そのまま会社になる例は毎年出てくる。ただ、その手前にある起業の学びにどれだけの学生が触れているかを確かめると、思っていたより細い道筋が見えてくる。文部科学省が2025年11月に結果を公表した全国アントレプレナーシップ醸成促進に向けた調査分析業務は、国公私立の大学・短期大学・高等専門学校の計1077校を対象に、2024年6月から7月にかけて実施された。回答は871校で、回収率は80.8%である。

この速報版の集計によると、起業家教育を実施している大学の割合は2020年度の27%、2022年度の33%を経て、2024年度は40%になった。実施校は着実に増えている。一方で、学生側の受講率は2020年度が1%、2022年度が3.2%、2024年度が5.2%である。20人に1人が通っている水準まで来たが、残りの19人は学内にそうした科目があっても触れずに卒業していく。

人数で見ると、2024年度に受講したのは大学生と大学院生を合わせて約13万5000人だった。研究者や社会人学生、高校生などを含めるとさらに増える。母数の大きさに対して割合が小さいという形は、制度が足りないのではなく、学内で情報が届く範囲が限られていることを示している。

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学校の種類によって届き方がまったく違う

同じ調査を学校区分ごとに分けると、平均値では消えてしまう差が出てくる。区分は、文部科学省とJSTのSTARTスタートアップ・エコシステム形成支援に参画している大学等、参画していない大学、短期大学、高等専門学校の四つである。

参画している大学等では90%が起業家教育を実施しており、受講人数は2020年の約1万人、2022年の約3万2000人を経て2024年は約5万6000人まで伸びた。参画していない大学は60%強が未実施のままだが、学校数そのものが多いため受講人数では約7万7000人と上回る。

短期大学は90%以上が未実施で、受講人数も2020年と2022年の約700人から2024年の約850人へと小幅な増え方にとどまる。対照的に高等専門学校は実施校が約85%に達し、実施見込みを含めると100%になった。2022年度調査と比べて実施校はおよそ倍である。自分の在籍先がどの区分に入るかで、学内で見つかる受け皿の数は変わる。

学校区分 実施の状況(2024年度) 受講人数の推移
START参画大学等 90%が実施 約1万人→約3.2万人→約5.6万人
START非参画大学 60%強が未実施 約2万人→約5.5万人→約7.7万人
短期大学 90%以上が未実施 約700人→約700人→約850人
高等専門学校 約85%が実施(見込み含め100%) 実施校数は2022年度の約2倍

連携先の顔ぶれが、活動の性格をそのまま決める

地域をテーマにした学内プロジェクトは、外部の誰と組んでいるかで進み方が変わる。調査では外部支援者との連携状況も聞いており、START参画大学等は90%以上、大学全体では約80%が何らかの外部連携を行っていた。短期大学は50%、高等専門学校は70%以上で、高専は2022年度調査から8ポイント増え、実施学校数は1.1倍になっている。

顔ぶれには区分ごとの偏りがある。参画大学等では他大学や自治体との連携が最も多く、教育産業や金融業などの企業、起業家、卒業生まで幅広く広がる。参画していない大学では中小企業が最も多く、次に自治体が来る。短期大学は自治体・中小企業・他大学に限られ、なかでも自治体との割合が高い。高等専門学校は起業家との連携が全区分のなかで首位になった。

この違いは実務に直結する。自治体が主な相手なら、活動は地域課題の調査や実証の形に寄りやすく、予算年度の区切りに合わせて動くことになる。相手が中小企業なら、商品や受託の単位で小さく回しやすい。起業家や卒業生との接点が多い学校では、資金調達や法人化の相談が早い段階で具体化する。在籍先の連携先がどこに厚いかを把握しておくと、同じ熱量でも進む速さが変わる。学内の受け皿を探す順番は学生が地域プロジェクトを始める順番でも整理した。

体制と検証が追いついていないところに隙がある

受け皿が増えても、運営の形が整っているとは限らない。全学体制で起業家教育を運営している学校は、2020年度が72校、2022年度が103校、2024年度が169校と増えた。起業家教育に取り組む学校を分母にした割合で見ると45%、35%、48%と動いており、半分はいまも学部や研究科の単位で個別に動いている。

効果の検証はさらに手前の段階にある。検証を行っていると答えた学校は2022年度の61校から2024年度の90校へ増えたが、取り組み校に対する割合では23%から26%と小さな伸びにとどまる。学校側が挙げた課題で最も多かったのは指導できる教員の不足で、次に裾野の拡大、学内を横断する連携の不足が続いた。

この数字は、学生の側から見ると機会でもある。全学の窓口がない学校では、所属学部の外にある研究室やセンターが同じテーマを抱えていても互いに知らないことがある。学内を横断する連携が課題として挙がっている状況は、学生が複数の部署に声をかけて橋をかける余地が残っているという意味になる。個別の大学で窓口がどう置かれているかは京都大学の地域創生プロジェクトで確かめられる。

在学中に事業の形へ寄せていく順番

手元の活動を事業に寄せるなら、学内と地域の制度を順番に当たるのが早い。まず確かめるのは、在籍先が起業家教育を実施している40%の側に入っているかどうかである。実施していれば科目や学生コミュニティがあり、指導教員や卒業生への経路がそこに集まっている。

実施していない学校の場合は、外部連携の相手から入る方法が残る。参画していない大学の連携先で中小企業と自治体が上位に来ている事実は、地域側に受け入れ窓口があることを意味する。自治体の地域振興担当や商工会議所に活動内容を持ち込むと、実証の場や発注の単位に変わることがある。高等専門学校に近い環境なら、起業家との接点が最も太いので、法人化の相談を先に置いても噛み合う。

公的な資金の枠は、法人化の前後で入口が変わる。地域課題を扱う起業には自治体経由の支援枠があり、移住を伴う場合は起業支援金の交付決定を受けてから移る順番で扱われる。経済産業省の調査では大学発ベンチャーの数が6220社まで増えたとされており、母集団そのものは広がっている。自分の活動がどの枠に当てはまるかを早めに確かめておくと、年度をまたぐ待ち時間を減らせる。枠の金額と発注元の規模は学生が地域課題で起業するならにまとめてある。

よくある質問

在籍している大学に起業の科目がない場合、どこから始めればよいか

学内にこだわらず、他大学や自治体との連携経路を探す方が早い。調査では大学全体の約80%が何らかの外部連携を行っており、科目がなくても地域側の相手とつながっている部署は存在する。地域振興や産学連携を担当する事務組織に、活動の記録を持って相談するところから動ける。

短期大学や高等専門学校でも事業化は狙えるか

狙える。短期大学は未実施が90%以上と厳しい数字だが、連携先では自治体の割合が高く、地域の実証に入りやすい。高等専門学校は実施校が約85%で、起業家との連携が全区分で最も太い。区分ごとに強い経路が違うだけで、入口が閉じているわけではない。

受講率5.2%という数字は、競争が緩いという意味になるのか

応募倍率の話ではなく、情報が届いている範囲の話として読むのが近い。指導できる教員の不足が最大の課題に挙がっているため、受講者が増えれば一人あたりに割ける時間は減る。早い段階で窓口に接触しておくほど、伴走してもらえる余地は大きい。地域での働き方や活動の選択肢はFLASPOの情報もあわせて見ておきたい。


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