地元に戻る動きは、統計のどこに出ているか
求人サイトを開くより先に確かめておきたいのは、自分と同じ方向に動いている人がどれだけいるかという量感である。総務省が2026年2月3日に公表した住民基本台帳人口移動報告の2025年(令和7年)結果によると、国内の市区町村間移動者数は519万548人で、前年に比べて0.3%減った。都道府県間の移動に限ると251万5731人である。
向きを見ると偏りがはっきりする。転入超過になったのは東京都、神奈川県、埼玉県など7都府県だけで、残りはすべて転出超過だった。転入超過数が最も多いのは東京都の6万5219人、拡大幅が最も大きいのは神奈川県の1089人である。東京圏の4都県を合わせると12万3534人の転入超過で、前年より1万2309人縮んだとはいえ、日本人の移動者だけで数えても11万2738人の転入超過となり、これで30年続いている。
一方、名古屋圏は1万2695人の転出超過で13年連続、大阪圏は8742人の転入超過で3年連続という結果だった。前年から向きが変わった県もあり、滋賀県は転出超過から転入超過へ、山梨県は転入超過から転出超過へ転じている。地元へ戻る動きは、統計の表面では依然として少数側に位置する。だからこそ、同じ方向を向いた求人を集めている窓口を先に押さえるかどうかで、選べる範囲が大きく変わる。
窓口は民間・国の拠点・自治体の三層に分かれる
「Uターン専門」と名乗るサービスは民間の転職エージェントに多いが、同じ役割を持つ公的な窓口が別に二層ある。法律上はどれも職業紹介事業で、職業安定法にもとづいて厚生労働大臣への報告や届出が必要になる。違いは、誰がお金を出しているかという点に集約される。
国の層にあたるのが内閣府のプロフェッショナル人材事業である。東京都を除く46の道府県に「プロフェッショナル人材戦略拠点」が置かれ、地域企業の経営課題に必要な外部人材をつなぐ役割を担う。ポータルサイトの表示では、累計のマッチング件数は2026年3月時点で3万9446件である。相談そのものは無料だが、実際の採用では民間の紹介会社が入って手数料が発生する場合があると明記されている。
自治体の層は、厚生労働大臣への通知によって無料の職業紹介を行う「特定地方公共団体」である。厚生労働省の令和6年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報)では、報告を出した特定地方公共団体の事業所は749か所、うち就職実績があったのは278か所だった。常用の求人は21万8639人分あり、常用就職は5948件である。求人の数に対して決まった件数が少ない構図は、求人票があることと引き合わせが成立することが別だという事実をそのまま表している。
| 層 | 運営 | 費用の出どころ | 規模(令和6年度・速報) |
|---|---|---|---|
| 民間の有料職業紹介 | 株式会社など | 採用した企業が手数料を払う | 報告3万0561事業所/常用就職88万8993件 |
| 国の人材戦略拠点 | 内閣府と道府県 | 相談は無料。採用時は別途手数料の場合あり | 46道府県に設置/累計3万9446件 |
| 自治体の無料職業紹介 | 特定地方公共団体 | 公費。求職者も企業も無料 | 報告749事業所/常用就職5948件 |
1件103万円という手数料が、求人の偏りをつくる
民間のエージェントを無料で使えるのは、費用を払うのが採用側の企業だからである。ここに地方の求人が集まりにくい理由が隠れている。厚生労働省の同じ速報によると、有料職業紹介事業の手数料収入は約9835億円で前年度から17.6%増えた。うち常用就職にかかる手数料は約9136億円、1件あたりの平均は約103万円で、前年度より10.9%上がっている。
採用1人につき100万円前後を出せる企業でなければ、エージェント経由の募集は続かない。事業所の数と実績の差もそれを裏づける。報告書を提出した有料職業紹介事業所は3万0561か所あるのに、就職実績があったのは1万3946か所にとどまる。看板を出している事業者のうち、実際に人を決めているのは半分以下という計算になる。
ここから導ける見極め方は単純である。求人票の件数ではなく、自分が狙う県と職種で過去に決まった実績を尋ねることだ。「全国対応」と書かれていても、常用就職の実績が首都圏の高年収職に寄っていれば、地元の中小企業の枠はほとんど通っていない。あわせて、同じ県の求人を自治体の無料窓口でも探しておくと、手数料を払えない企業の枠が視野に入る。地方の採用イベントの開き方は地方就職フェアはどこで開かれているかでも整理している。
移住支援金は「どこで求人を見つけたか」で決まる
窓口選びがお金に直結する場面がひとつある。内閣府の移住支援金は、東京23区の在住者や東京圏から23区へ通勤している人が東京圏外へ移る際に、都道府県と市町村が共同で交付するものである。金額は世帯で100万円以内、単身で60万円以内、18歳未満の世帯員を連れて移る場合は1人につき最大100万円が加算される。
見落としやすいのは、就業の条件が仕事の内容ではなく入手経路で書かれている点だ。地域の中小企業等への就業で申請する場合、道府県のマッチングサイトに掲載された求人であること、またはプロフェッショナル人材事業や先導的人材マッチング事業を利用したことが要件になっている。同じ会社の同じ職種でも、民間サイトから直接応募した場合は対象から外れることがある。
このほか、移住前の業務をテレワークで続ける形、関係人口として市町村が独自に認める形、地方創生起業支援事業で起業支援金の交付決定を1年以内に受ける形の三つの入り方がある。移住元の側にも条件があり、直前10年間で通算5年以上、直近1年以上は23区に在住または通勤していることが必要だ。転入後1年以内の申請と、5年以上その市町村に住む意思も求められる。金額の内訳や5年要件の数え方は移住費用と支援金に詳しい。
交付実績のばらつきを先に見ておく
制度があることと、自分の移住先で動いていることは別である。内閣府が公表している地方創生移住支援事業の交付実績(令和7年3月末時点)では、令和元年度から令和6年度までの累計が1万1205件・2万3783人となっている。年度ごとの件数は71件、290件、1184件、2495件、3542件、3623件と伸びてきた。
都道府県別に見ると差が大きい。累計で最も多いのは静岡県の1135件、次いで群馬県849件、栃木県708件、長野県641件、新潟県608件、茨城県604件と続く。反対に京都府は15件、滋賀県は29件、三重県は46件で、大分県と愛媛県は41件だった。東京都・神奈川県・大阪府は制度の対象外として記号が入っている。
| 県 | 累計交付件数 | 累計の移住人数 |
|---|---|---|
| 静岡県 | 1135件 | 2367人 |
| 群馬県 | 849件 | 1822人 |
| 栃木県 | 708件 | 1576人 |
| 長野県 | 641件 | 1537人 |
| 三重県 | 46件 | 92人 |
| 京都府 | 15件 | 33人 |
件数が少ない県は、制度の運用が市町村単位に限られていたり、年度途中で受付を終えていたりする。実施の有無と受付期間は市町村が決めるため、候補地が決まった段階でその市町村の公表資料を確かめるのが先になる。エージェントに相談する際も、支援金の対象求人かどうかをその場で聞いておくと、後から経路を作り直す手間が消える。地域側の受け入れ体制の違いは過疎化と若者のUターンで扱った。
よくある質問
複数のエージェントに登録してもよいか
問題はない。厚生労働省の集計でも、求人者と求職者が複数の職業紹介事業者を利用する前提で件数に重複があると注記されている。ただし移住支援金を使う場合は、最終的に内定を得た求人の入手経路が要件を満たしているかが判定の対象になる。登録数を増やすより、対象経路をひとつ確実に通しておく方が安全である。
専門エージェントと自治体窓口は、どちらを先に使うべきか
候補地が絞れていないうちは自治体の窓口と道府県のマッチングサイトを先に見るとよい。手数料が発生しないため、採用予算の小さい企業の枠も載っている。職種や年収の条件が固まっているなら、実績のある民間エージェントを並行して使う形が噛み合う。
Uターンの支援に強い相談先を自分で確かめる方法はあるか
三つ聞けば十分である。狙う県での直近の決定件数、扱っている求人が道府県のマッチングサイト掲載分を含むか、そして移住支援金の申請に必要な書類を出してもらえるか。この三点に答えられない窓口は、地域の採用枠を日常的に扱っていない可能性が高い。地域で働く選択肢を広く見たいときはFLASPOの情報もあわせて参照できる。
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