副業は関係人口を続かせるか|年間8日以上31%と移動の壁

一度行った土地と、なぜ続かないのか

夏に訪ねた集落の人と連絡先を交換して、また来ますと言って帰ってくる。その「また」が来ないまま一年が過ぎる。地域と関わりたい気持ちがある人ほど、この失速に心当たりがあるはずだ。国土交通省が2025年6月に公表した関係人口の実態調査は、その理由を当事者に聞いている。

特定の地域と関わりを持ちたいと思っている人が挙げた改善点は、「仕事やプライベートでの時間的な余裕の確保」が27.4パーセント、「移動や滞在に伴う金銭的な負担の軽減」が26.7パーセント、「地域に行くための交通の利便性の改善」が26.4パーセント。気持ちや情報の不足ではなく、時間と費用と移動手段という三つの物理的な条件が並んでいる。

移動手段の内訳も具合が悪い。訪問先までの主な手段は自家用車が約58パーセントで単独では最多である。鉄道や新幹線、飛行機、高速バス、フェリーを合わせれば自家用車を超えるが、裏を返せば、車を持たない人の選択肢は分散しているということだ。学生にとっては、この三条件がそのまま足かせになる。

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年に何日行くかで、関わり方は二つに割れる

同じ調査は、訪問の頻度も数えている。訪問系の関係人口のうち、年間の訪問日数が「1日以下」は約20パーセント、「2日から7日」が約49パーセント、「8日以上」が約31パーセント。半数は年に一週間以内で、関わりの大半は年に数回の訪問で成り立っている。

ここで目を引くのは類型ごとの差である。報告書は、「就労型(現地就労)」と「就労型(テレワーク)」では8日以上の人が約半数を占め、ほかの類型より訪問日数が多いと書いている。趣味や消費で通う関わりと、仕事として関わる関わりは、同じ関係人口のなかで頻度の分布が違う。

項目 数値 出典と時点
関係人口(訪問系) 約1,884万人/18歳以上の約18% 国交省・2025年6月公表
関係人口(非訪問系) 約379万人/約4% 同上
年間8日以上訪問する人 訪問系の約31% 同上
副業がある人 305万人/非農林業従事者の4.8% 令和4年就業構造基本調査
地域活性化起業人の副業型 299人/148団体 総務省・令和7年度実績
関係人口の推計は18歳以上の居住者約10,275万人を母数とし、有効回答は118,963人(調査時期は令和5年9月から10月)。

仕事として関わる形は、頻度を押し上げる力を持っている。給料が発生すれば移動費の壁は低くなり、業務なら時間も確保しやすい。先ほどの三つの改善点のうち、二つに同時に効くのが副業という形である。

ただし副業をしている人は20人に1人

期待はできても、実数は小さい。総務省統計局の令和4年就業構造基本調査によれば、非農林業で働く人のうち副業がある人は305万人。5年前より60万人増えたが、全体に占める副業者比率は4.8パーセントにとどまる。20人に1人という水準である。

雇用形態で割ると差が出る。正規の職員・従業員は2.5パーセント、非正規は7.2パーセントで、約3倍の開きがある。副業は「余力のある人の選択」というより、働き方の制約が緩い人ほど実際に手を出しているという姿が見える。都道府県別では京都府が7.5パーセントで最も高く、東京都6.5パーセント、和歌山県5.6パーセントが続く。

関係人口2,263万人という推計と、副業者305万人という実数のあいだには7倍以上の差がある。副業が関係人口を生む主要な経路だと考えるのは、現状の数字から見れば早い。むしろ関わりの入口は趣味や消費が多数で、仕事として関わる人は少数派だが訪問が濃い、という構図になる。関係人口全体の現在地は数字で確かめた記事にまとめてある。

制度の側は「月4日・月20時間」で線を引いた

行政もこの経路に手を付けている。総務省の地域活性化起業人には、企業と自治体が協定を結んで社員を送り出す従来の型に加えて、令和6年度から副業型が設けられた。社員本人が自治体と契約を結び、本業を続けながら地域の仕事を受ける形である。

要件は具体的だ。制度の資料では、勤務日数と時間が月4日以上かつ月20時間以上、受入自治体に滞在する日数は月1日以上とされている。月1日の滞在を12か月続ければ年12日で、先の調査でいう「8日以上」の層に自然に入る。国が特別交付税で見る経費は1人あたり上限200万円(報償費等100万円と旅費100万円)で、企業派遣型の上限590万円とは桁がひとつ違う。

実績は令和7年度の集計に出ている。全体で1,215人・538団体となり、前年度から344人増えた。内訳は企業派遣型904人、副業型299人、令和7年度に始まったシニア型12人。副業型は148団体で使われている。分野別ではDXが293人で24パーセント、観光振興が253人で21パーセント、地域経済活性化や雇用対策が135人で11パーセントを占める。制度全体の人数の動きは871人だった年の内訳、派遣が決まる手順は協定と勤務日数の記事で追える。

続く関わりにするなら、先に決めることがある

数字を並べると、順番が見えてくる。先に決めるべきは「どこに関わるか」ではなく「月に何日なら無理なく動けるか」である。月1日の滞在と月20時間の作業という制度の線引きは、続けられる最小単位として国が置いた目安だと読める。

行き先の選び方にも傾向がある。国交省の調査では、訪問系の流動は三大都市圏以外の「その他地域」から「その他地域」への約763万人が最も多く、次が首都圏都市部からその他地域への約293万人。都市から地方へという一方向のイメージとは違い、地方どうしの行き来が最大の塊である。地方の大学に通う学生なら、遠い土地を探すより近隣の自治体のほうが条件に合うことも多い。

学生の場合、副業型は企業に所属する社員か退職した個人が対象なので、そのままでは入れない。使えるのは授業期間外の滞在やインターン、自治体の企画への参加といった入口になる。学生のうちから地域の企画に関わる道筋はFLASPOでも扱っている。月に何日なら続けられるかを先に決めておけば、社会人になってから副業型という選択肢が現実味を帯びる。

よくある質問

副業で地域に関わると、関係人口に数えられるのですか。
国交省の調査は関係人口を訪問系と非訪問系に分け、訪問系の類型に「就労型(現地就労)」と「就労型(テレワーク)」を置いています。仕事として地域に関わる形はこの類型に入るため、副業での関わりも集計の対象です。ただし副業という区分での人数は公表されていません。

副業型の報酬はどれくらいですか。
国の資料に出ているのは自治体が使える経費の上限で、報酬額そのものではありません。副業型は報償費等が1人あたり上限100万円、旅費が上限100万円で、合計200万円が特別交付税の対象になります。実際に受け取る額は自治体と結ぶ契約次第なので、募集ごとに確認が必要です。

勤務先が副業を認めていない場合はどうなりますか。
副業型は企業に所属する社員が自治体と契約を結ぶ仕組みなので、勤務先の就業規則で副業が認められていることが前提になります。副業者比率が正規で2.5パーセント、非正規で7.2パーセントと差があるのも、この条件が働き方によって違うことの反映です。勤務先の規定を先に確かめてください。

月1日の滞在で、地域の役に立てるのでしょうか。
令和7年度の分野別の内訳では、DXが24パーセント、観光振興が21パーセントを占めています。設計や分析、情報発信のように、手を動かす場所を選ばない仕事が多いということです。月1日の滞在は現地での打ち合わせや確認に充て、残りは離れた場所で進める組み方が想定されていると読めます。

関係人口を増やしたい自治体は、副業人材に頼るべきですか。
副業型を使っているのは148団体で、全国1,700余りの自治体から見れば一割に届きません。訪問系1,884万人の大半は趣味や消費による関わりで、副業はまだ小さな経路です。頻度の高い関わりをつくる手としては有効ですが、これ一本で関係人口全体を動かす規模にはなっていません。


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