18歳になれば、親の同意なしに契約を結べる。NPO法人の役員になることを年齢で禁じる条文もない。それなのに、全国のNPO法人の代表者のうち20歳代は0.5%しかいない。制度の入口は開いているのに、実際にそこを通っている若者はほとんどいない。この落差がどこで生まれているのかを、数字の並びから追っていく。
法律は年齢で入口を閉じていない
まず確かめておきたいのは、制度の側に年齢の壁があるのかどうかである。特定非営利活動促進法第20条は役員の欠格事由を列挙しているが、そこに並ぶのは破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者、拘禁刑以上の刑に処せられて一定期間を経過しない者、暴力団の構成員等といった項目で、年齢に関する定めは置かれていない。条文はe-Gov法令検索の特定非営利活動促進法で確認できる。
契約の側も変わった。民法第4条は年齢十八歳をもって成年とすると定めている。未成年者については第5条第1項が、法律行為をするには法定代理人の同意を得なければならないとし、同条第2項でこれに反する法律行為は取り消すことができるとしている。裏返せば、18歳以上の学生は同意を得ることなく契約の当事者になれる。条文はe-Gov法令検索の民法にある。
設立の要件にも年齢は出てこない。第12条第1項第4号が求めるのは十人以上の社員を有することであり、その十人が何歳であるかは問われていない。制度を読む限り、大学一年生が十人集まって法人を設立し、そのうちの一人が代表になることを妨げるものはない。
それでも代表者の20歳代は0.5%にとどまる
では実態はどうか。内閣府が全国のNPO法人6,591法人を対象に行った2023年度(令和5年度)特定非営利活動法人に関する実態調査 報告書(令和6年3月・内閣府)は、代表者の年代を集計している。認証法人2,208法人の回答から得られた分布は、想像以上に上の世代へ偏っている。
| 代表者の年代 | 認証法人(n=2,208) | 認定・特例認定法人(n=718) |
|---|---|---|
| 10歳代 | 0.0% | 0.1% |
| 20歳代 | 0.5% | 0.8% |
| 30歳代 | 3.2% | 1.5% |
| 40歳代 | 10.3% | 7.8% |
| 50歳代 | 18.2% | 17.3% |
| 60歳代 | 28.9% | 28.3% |
| 70歳代以上 | 38.9% | 44.2% |
この調査は2023年7月19日から10月3日にかけて行われ、6,591法人のうち2,937法人から回答を得ている。回収率は44.6%で、代表者の年代の設問には認証法人2,208法人、認定・特例認定法人718法人が答えた。母数としては十分な規模があり、一部の地域や分野に偏った数字ではない。
認証法人では70歳代以上が38.9%で最も多く、60歳代以上を合わせると67.8%に達する。一方で40歳未満は、10歳代と20歳代と30歳代を足しても3.7%にすぎない。報告書は認定・特例認定法人についても70歳代以上が44.2%、60歳代以上で72.5%と記しており、こちらのほうがさらに上に寄っている。
認定を取った法人ほど年齢構成は上に寄る
表を縦ではなく横に読むと、別の傾向が見えてくる。30歳代の割合は認証法人で3.2%、認定・特例認定法人で1.5%と、後者のほうが低い。40歳代も10.3%に対して7.8%で、やはり低い。認定という段階に進んだ法人ほど、代表者の世代が上に移動している。
理由は構造から説明がつく。認定を受けるには運営の実績と体制が求められ、そこに至るまでに年数がかかる。設立から年を重ねた法人ほど認定に到達しやすく、その間に代表者も年齢を重ねる。つまりこの偏りは、若者が排除された結果というより、時間の経過がそのまま年齢構成に表れたものと読むほうが自然である。
注意したいのは、この表が代表者一人の年代しか映していない点である。理事全体の年齢構成も、職員やボランティアの年齢構成も、ここからは読み取れない。現場に若い世代が何人いるかという問いに、この数字は答えていない。代表者の年代は団体の年齢構成の代理指標として使えるが、それ以上のことを読み込むと解釈を誤る。
この読み方が正しいとすれば、若者の少なさを是正する方法は「若い代表を立てる」ことではない。設立から日の浅い法人や、これから立ち上がる団体のほうに入口があるという話になる。NPOとNGOという言葉の使い分けを含めた全体像はNPOとNGOの違い|法律に定義がある言葉とない言葉で分けるが参考になる。
入口は代表ではなく社員と現場の側にある
代表者の統計だけを見ると、若者には場所がないように思えてくる。しかし法人の構成員は代表者だけではない。社員として総会で議決権を持つ立場、役員として理事会に加わる立場、有給職員として働く立場、ボランティアとして関わる立場。それぞれ求められる関与の深さが違う。
このうち社員は、第12条第1項第4号が十人以上と定めている構成員であり、総会における意思決定に直接加わる。代表に就くより負担はずっと軽いにもかかわらず、団体の方針に関与できる。年齢の制約がない以上、学生が最初に検討すべきはこの位置である。実際の法人の規模感は学生NPOの事例|経常収益600万円・有給職員2人という実像で数字とともに確かめられる。
もう一点、代表者の年代分布は、団体が何を必要としているかの裏返しでもある。70歳代以上が四割近くを占める状況は、後継者を探している法人がそれだけ多いことを意味する。需要の側から機会を数える視点はNPOで活動するメリット|人材不足65.6%という需要側から数えるに譲るが、年代の表はその前提を数字で支えている。
数字を自分の判断に落とすとき
0.5%という数字は、若者がNPOに向いていないことを示すものではない。示しているのは、代表という一点に限れば前例がきわめて少ないという事実だけである。前例の少なさは、制度上の障壁とは別物として扱う必要がある。
判断の材料にするなら、三つに分けて考えると迷いが減る。法律が禁じているか、団体の定款が制限しているか、単に慣行として誰もやっていないか。第20条と民法第4条を確認した時点で、一つ目の答えは出ている。二つ目は関心のある法人の定款を見れば分かる。残るのは三つ目だけで、これは説得と実績で動かせる領域である。学生の活動が社会とつながった事例はFLASPOでも取り上げられている。
よくある質問
18歳でもNPO法人の理事になれますか。特定非営利活動促進法第20条の欠格事由に年齢の定めはなく、民法上も18歳で成年です。ただし法人の定款が独自に要件を置いている場合があるため、その団体の定款を確認してください。
学生だけで法人を設立できますか。第12条第1項第4号が求めるのは十人以上の社員を有することで、年齢や職業の要件はありません。設立自体は可能ですが、設立後に続く事務の負担を見積もったうえで判断してください。
社員と会員はどう違いますか。社員は総会で議決権を持つ構成員を指し、会費を払う賛助会員などとは区別されます。募集の案内に会員と書かれていても、議決権の有無は団体ごとに違うので確認が必要です。
若い代表が少ないのは問題ですか。年齢構成の偏りは設立からの年数と連動している面があり、それ自体が不正常というわけではありません。ただ後継者の確保という課題と表裏であることは、数字から読み取れます。
この0.5%は学生の割合ですか。代表者に占める20歳代の割合であり、学生かどうかは区別されていません。20歳代の社会人も含む数字です。
どの段階から関わるのが現実的ですか。まず社員やボランティアとして総会や現場に入り、運営の流れを把握してから役員を検討する順序が無理がありません。代表から始める必要はありません。
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