空き店舗率は下がったのに、現場が楽になっていない
シャッターの並ぶ通りを見て何かしたいと思うのは自然だが、商店街の数字は見た目ほど単純に悪化していない。中小企業庁が3年に1度行っている商店街実態調査の令和3年度分では、平均の空き店舗率は13.59%で、前回の平成30年度調査の13.77%からわずかに下がった。結果は2022年4月に公表されている。
それでも現場の見通しは明るくない。同じ調査で、空き店舗は今後増えるとみている商店街が49.9%あり、回答のなかで最も多い。率が下がった理由には、店が埋まったのではなく空き店舗そのものが住宅や駐車場に変わって商店街から外れた、という動きも含まれる。数字の出どころは中小企業庁の公表ページにある。
抱えている問題として挙がる筆頭は空室ではなく人である。近隣型の商店街では「経営者の高齢化による後継者問題」を挙げる回答が最も多く、全国で7割を超える。店は開いているが、十年後に誰が立っているか決まっていない通りが大半だ、という前提で企画を考えることになる。空き店舗を埋める話と、後を継ぐ人の話は別の問題である。
この調査は全国の商店街に景況や直面している課題、取り組んでいる事業を尋ねるもので、3年ごとに実施されている。つまり手元で使える全国の数値は、最新でも調査時点から数年遅れている。都道府県や市が独自に毎年調べている例もあり、自分が関わる地域の数字はそちらのほうが新しいことが多い。全国の傾向を背景に置き、足元の数字は地元の調査で確かめる、という二段で見るのがよい。
四つの型で、打てる手が変わる
同じ調査は商店街を四つの型に分けて集計している。来街者がどこから来て何を買うかで分類したもので、学生が企画を持ち込むときの前提がここで変わる。近隣型と地域型は数のうえで大半を占め、歩いて来る住民が客の中心になる。広域型や超広域型は大型店や専門店が並び、遠方から人が来る。
| 型 | 扱う商品と来街の仕方 | 学生が入りやすい打ち手 |
|---|---|---|
| 近隣型 | 日用品が中心。地域住民が徒歩や自転車で日常的に通う | 住民への聞き取り、子ども向けの催事、個店の手伝い |
| 地域型 | 日用品と買回り品が混在。徒歩・自転車・バスでやや広い範囲から来る | 空き店舗の一日利用、マップ作り、回遊を促す仕掛け |
| 広域型 | 百貨店や量販店があり、買回り品の店が日用品の店より多い | 情報発信、来街者の動線調査、他地域からの誘客企画 |
| 超広域型 | 有名店や高級専門店が中心で、遠方から来街する | 調査と発信に寄る。催事は既存の枠に乗る形が現実的 |
自分が関わろうとしている通りがどの型かは、商店街の事務局か市町村の商業担当課に聞けば分かる。近隣型で遠方からの誘客を提案しても噛み合わないし、超広域型で手作りの市を開いても埋もれる。型を確かめないまま企画書を作ると、熱意はあるのに的が外れた提案になる。
学生が持ち込めるものは四つある
一つめは聞き取り調査である。各店が何年続いていて、客層がどう変わり、後継者がいるのかを店主から直接聞いて書き起こす。商店街の側は日々の営業で手が回らず、通り全体の状況を誰も把握していないことが珍しくない。十数軒を回った記録そのものが資料になる。
二つめは情報発信。個店は店頭の張り紙で足りてきたため、写真も営業時間もインターネット上に出ていない店が多い。撮影と文章を学生が担い、更新の仕方を店主に渡すところまでやると残る。三つめが催事で、空き店舗や通りを一日借りて市や展示をやる形である。四つめは個店の手伝いで、繁忙期に入って中から仕組みを見る。似た取り組みの並びは地域活性化の事例18選で確認できる。
このうち負担が軽くて効きやすいのは一つめと二つめである。催事は人を集めやすく達成感も大きいが、準備に数か月かかり、終わると通りは元に戻る。関わり方の型の全体像は大学生が地域活性化でできることで整理されている。初回は調査から入り、関係ができてから催事に進むほうが受け入れられやすい。
持ち込まないほうがよいものもある。調査もせずに作った活性化の提案書は、たいてい過去に誰かが出したものと重なる。通りを歩いた回数が少ないまま出す案は、店主から見ると的が外れていることがすぐ分かる。手を動かす部分を含まない提案だけの持ち込みは、受け取る側の仕事を増やすだけで終わりやすい。
話を通す相手を間違えない
商店街は一つの組織に見えて、実際は三層に分かれている。法人格を持つ商店街振興組合や事業協同組合、法人格のない任意の商店会、そして個々の店である。通りを使う催事の許可や、共用部の電源や掲示板の話は組合や商店会の事務局が持っている。個店を先に説得しても、事務局を通っていなければ当日に止まる。
逆に、事務局だけで決めて個店に伝わっていないと、当日に「聞いていない」と言われる。順番としては、事務局に相談して全体の了解を取り、そのうえで関わる店を一軒ずつ回るのが安全である。商工会議所や商工会、市町村の商業担当課は、どの通りが今どういう状態かを横から見ているので、最初の相談先としても使える。
持っていく紙は一枚でよい。やりたいこと、日付、人数、必要な場所、終わったあとの片づけ、連絡先。この六つが書いてあれば判断できる。企画の意義を長く書くより、当日の動きが具体的なほうが通る。間に入る事業者を使う選択もあり、FLASPOのように学生と地域をつなぐ枠組みを経由すると、最初の接点作りを一から背負わずに進められる。
時期の見当も大事になる。多くの組合や商店会は年度の初めに総会を開いて予算と行事を決めるため、秋に相談を持っていっても、その年度の枠には入らないことがある。翌年度に何かやりたいなら、前年の冬までに話を出しておく。年末や年度末の繁忙期に当たる相談は、内容がよくても後回しになる。
一度の催事で終わらせない組み方
学生の企画でよくある終わり方は、賑わった一日の写真が残り、翌年には誰も覚えていない、というものである。商店街の側からすると、そういう一日は過去に何度もあった。差がつくのは、数えた記録と引き継ぎの形が残っているかどうかである。
数えるものは三つで足りる。当日の来街者の数、参加した店の数、そして売上に触れたかどうか。来街者は通りの一点で時間帯ごとに数えれば概数が出る。売上は店主が教えてくれないこともあるが、ふだんと比べて多かったか少なかったかだけでも聞いておく。賑わいの印象ではなく数字で残ると、次の年に別のメンバーが同じ場所で話を始められる。
引き継ぎは窓口を個人名ではなく団体名で持つところから始まる。四年生が抜けると関係が切れるのは、連絡先が個人の携帯になっているせいが大きい。担い手が減っている場に学生が入るときの考え方は祭りの担い手不足に学生が入る余地でも触れられている。後継者がいない通りで、毎年来る学生の一団そのものが地域の資源になることもある。
よくある質問
空き店舗は学生でも借りられるのか。短期であれば、所有者か事務局の了解で一日単位の使用が認められる例がある。継続して借りる場合は契約の主体が必要になるため、任意のサークルでは難しく、大学の組織か地域の法人を通す形になる。
予算はどのくらい見ておけばよいか。聞き取りと発信だけなら交通費と印刷費で済むが、催事を開くなら会場の電気代、保険、備品の借り上げで数万円から十数万円になる。市町村の商店街支援の補助金や、商工会議所の助成が使える場合があるので、申請の締切を先に確かめておく。
店主に話を聞きに行くのは迷惑ではないか。昼の混む時間を避け、事務局の紹介を通し、聞く時間を二十分と決めて行けば受けてもらえることが多い。断られた店を無理に回らないことと、聞いた内容を公開する前に見てもらうことは守りたい。
人数はどのくらい必要か。聞き取りなら2人から3人で組み、一軒ずつ回る。催事を開くなら当日の運営に10人前後、準備の中心に3人か4人という形が多い。人が多いほど動くわけではなく、連絡の経路が増えて当日に伝達が抜けるため、役割を決められる範囲に収めたほうがよい。
成果が出なかった場合はどうするか。空き店舗が埋まるかどうかは学生の企画で決まるものではなく、そこを目標にすると達成しないまま終わる。回った店の数、残した記録、来街者の数のように自分たちで動かせるものを目標に置くと、振り返りができて次につながる。
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