20代で引いた年表が外れるのは、平均の読み方のせい
就職が決まった頃に「27歳で結婚、30歳で子ども、35歳で家」と書いた紙が、数年後にはどこにあるか分からなくなっている。予定が崩れたというより、最初に置いた目安が自分とは別の分布から取ってきたものだったという話が多い。厚生労働省の令和6年人口動態統計月報年計(概数)では、平均初婚年齢は夫31.1歳、妻29.8歳。ところが同じ統計で、初婚の妻の年齢として最も多いのは26歳だ。
平均と最頻値が4歳近くずれているのは、結婚する年齢の分布が右側に長い裾を持つからだ。30代後半や40代の初婚が平均を引き上げるため、「平均は29.8歳」を自分の中心に据えると、実際に周囲で結婚が集中する時期より3年ほど遅い線を引くことになる。逆に26歳を基準にすれば、そこに乗らなかった自分を遅れていると感じてしまう。どちらも数字の性質を知らずに使った結果だ。
令和6年の人口動態統計(確定数)では、婚姻件数は48万5,092組、出生数は68万6,173人、合計特殊出生率は1.15だった。母数が動き続けている時期に、平均値ひとつを将来の予定として固定することに無理がある。
30年で3歳近く動いた数字を、固定値として使わない
平均初婚年齢そのものが、ひとつの世代の中で動いてきた。1995年は夫28.5歳・妻26.3歳、2005年は夫29.8歳・妻28.0歳、2015年に夫31.1歳・妻29.4歳となり、2024年は夫31.1歳・妻29.8歳。夫は2015年から10年間ほぼ横ばいで、妻だけが上がり続けている。
| 年 | 夫の平均初婚年齢 | 妻の平均初婚年齢 | 夫妻の差 |
|---|---|---|---|
| 1995年 | 28.5歳 | 26.3歳 | 2.2歳 |
| 2005年 | 29.8歳 | 28.0歳 | 1.8歳 |
| 2015年 | 31.1歳 | 29.4歳 | 1.7歳 |
| 2024年 | 31.1歳 | 29.8歳 | 1.3歳 |
夫妻の年齢差は2.2歳から1.3歳へ縮まった。年上の夫という組み合わせが減って、同年代での結婚が増えている。いま20代前半の人が参照している「相場」は、親世代が20代だった頃の相場とは別物だ。10年後に自分が結婚する頃の数字も、いまの値とは違っている可能性が高い。目安として使うのはいいが、計画の前提に埋め込むなら更新できる形にしておきたい。
住む場所によって2歳ぶん前後する
全国平均は、どこに住んでいるかを平らにならしてしまう。令和6年の都道府県別では、平均初婚年齢が最も高いのは夫妻ともに東京都で、夫32.2歳・妻30.7歳。最も低いのは夫が山口県と佐賀県の30.1歳、妻が福井県と香川県の28.9歳だった。夫で2.1歳、妻で1.8歳の幅がある。
2歳の差は小さく見えて、20代の計画には効く。進学で都市へ出て、就職も都市で、という経路をたどると、周囲の結婚や出産の時期は全国平均より後ろにずれる。逆に地元に戻る経路では前にずれる。どちらが正しいという話ではなく、自分が置かれる環境の目安を全国平均で取ると数年単位で外れるということだ。都市部での婚姻率と未婚割合のずれは結婚と都市部の記事で詳しく追っている。
住まいの側から見ても、若年層は移動の只中にいる。賃貸住宅への入居者の内訳を年齢で割ったとき、どの層がどれだけを占めているかは若者の住まいの現在地で扱った。進学と就職で2回動く前提なら、家にかける固定費を早い段階で固めないほうが身軽でいられる。
子どもを持つ時期の中心は、25〜29歳から30代前半へ移った
出生数を母の年齢で区切ると、重心の移動がはっきり見える。令和6年は20〜24歳が4万2,757人、25〜29歳が17万7,838人、30〜34歳が25万3,444人、35〜39歳が16万2,659人。最も多いのは30〜34歳だ。1985年は25〜29歳が68万2,885人で突出していて、30〜34歳は38万1,466人だった。40年で中心が5歳ぶん後ろへ動いたことになる。
第1子を産んだときの母の平均年齢も、令和6年は前年と同じ31.0歳。平均初婚年齢の妻29.8歳との差はおよそ1年で、結婚から第1子までの間隔が統計上はかなり短い。言い換えると、結婚の時期を後ろにずらせば、第1子の時期もほぼ同じだけ後ろに動く。この2つを独立の予定として別々に置くと、年表がうまく噛み合わなくなる。
妻の初婚率(女性人口千対)の推移も同じ方向を示す。20〜24歳は1995年の48.89から2024年の15.07まで下がり、25〜29歳も70.64から39.43へ落ちた。一方で30〜34歳は18.45から20.14、35〜39歳は3.84から7.91へ上がっている。20代前半の結婚が減ったのではなく、結婚そのものが30代へ移っている。
この重心の移動を、結婚や出産をしたくない人が増えた結果だと受け取ると読み違える。20代のうちに将来の家族を望むかどうかをどう答えているかは、学生段階の意向を扱った大学生の恋愛と若者の記事で整理した。望みの有無と、実際に踏み出せる時期の遅さは、別の問題として分けて見る必要がある。
仕事の側は、3年で3分の1が動く前提で組む
生活の年表と同じくらい、収入の年表も揺れる。厚生労働省の新規学卒就職者の離職状況では、令和4年3月に卒業して就職した人の3年以内の離職率は、大学卒33.8%、高校卒37.9%だった。最初の勤め先に3年とどまらない人が3人に1人以上いる。転職は例外ではなく、組み込んでおく変数だ。
賃金のほうは、20代の間に確かに伸びる。令和6年賃金構造基本統計調査の所定内給与額(男女計)は、20〜24歳が23万2,500円、25〜29歳が26万7,200円、30〜34歳が29万9,500円。20〜24歳を100とした指数で25〜29歳が114.9、30〜34歳が128.8になる。結婚や出産の時期が後ろへ動いた背景には、この伸び方の緩やかさも重なっている。
時間の長さそのものは短くない。令和6年簡易生命表の20歳の平均余命は男61.44年・女67.48年で、81歳台から87歳台までを見込む計算になる。20代で決めたことを60年持ち越す必要はないし、持ち越せる前提で設計すると身動きが取れなくなる。進路や地域の選び方をいま決めきらずに選択肢を残しておくなら、FLASPOのように地域と関わりながら試せる入口を使う手もある。
よくある質問
平均初婚年齢を目標にするのは間違いですか
目標ではなく参照値として扱えば役に立つ。平均が29.8歳でも最も多いのは26歳という開きがあり、都道府県では2歳前後の幅もある。自分の環境に近い条件で絞った値を見るほうが実用的だ。使い方としては、何歳までにという期限ではなく、その年齢帯でどんな支出が発生しうるかを見積もる材料にするのが向いている。
若いうちに長期の計画を作る意味はありますか
予定を当てる意味は薄いが、前提を書き出す意味はある。大卒の3年以内離職率が33.8%という環境では、勤め先や年収を固定した計画はすぐ合わなくなる。代わりに、家賃の上限、年金の加入歴に空白を作らないこと、いつでも動ける貯蓄の水準といった「どの進路でも効く条件」を決めておくと、前提が変わっても作り直しが要らない。
結婚や出産の時期が遅くなると何が変わりますか
教育費と住居費の支出が、収入のピークより後ろにずれ込む。第1子出生時の母の平均年齢が31.0歳なら、子が大学に入る頃に親は50歳前後になる。賃金の指数は30〜34歳で128.8まで来るが、その後の伸びは学歴や職種で分かれる。遅らせること自体が不利なのではなく、支出の山と収入の山が重なる時期が短くなる点を見ておく必要がある。
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