保険の必要性はどう決まるか|必要6,283万円と実際1,936万円の差

保険の必要性はどう決まるか|必要6,283万円と実際1,936万円の差

89.2%が入っている、しかし目的は二つに寄っている

生命保険文化センターが2024年4月から5月にかけて全国400地点の4,000世帯へ留置調査をかけた結果では、生命保険(個人年金保険を含む)の世帯加入率は89.2%だった。別に2,200人の単身世帯へインターネットで尋ねた数字は45.6%で、世帯の形によって倍近い開きがある。ほとんどの世帯が入っているという事実は、それだけでは「必要だから入った」ことの証明にならない。

同じ調査で直近に加入した契約の目的を聞くと、「医療費や入院費のため」が57.5%、「万一のときの家族の生活保障のため」が50.0%と並ぶ。多くの契約は、治療でかかる出費と、稼ぎ手を失ったあとの生活費という二つへ向けられている。ところが生命保険に関する知識を「詳しくない」と答えた人は54.6%を占める。目的は絞られているのに、中身の理解はそこまで追いついていない。

必要性を測る作業は、この二つの目的を金額に置き換えるところから始まる。治療でいくら出るのか、遺された家族にいくら要るのか。どちらも公的な制度が先に働くため、民間の保険で埋めるのはその外側に残った部分だけだ。境目の引き方は公的保険と民間保険を比べた記事で扱っている。

募集中の地域コンテスト

読んだら、地域に行ってみよう

地域が出したお題に、オンラインでアイデアを応募できます。受賞すると、現地に無料で招待されます。

募集中の地域をすべて見る

必要と考える6,283万円、用意されている1,936万円

世帯主に万一のことがあった場合、遺された家族のためにいくら要ると考えているか。同じ調査はこれを年額と年数の両方で聞いている。平均年間必要額は354万円、平均必要年数は17.3年間で、掛け合わせた総額は6,283万円だった。世帯年収に換算すると9.4年分にあたる。

では実際にいくら用意されているのか。世帯普通死亡保険金額の平均は1,936万円で、前回調査の2,027万円から下がっている。必要と考える額の3割強にしか届いていない計算になる。もっとも、この差がそのまま不足というわけではない。遺族年金や貯蓄、配偶者の収入、住宅ローンの団体信用生命保険などが同時に働くからだ。

項目 必要と考える額 実際の水準
世帯主死亡後の生活資金 総額6,283万円(年354万円×17.3年) 世帯普通死亡保険金額1,936万円
世帯主が2〜3カ月入院したとき 月額28.0万円 世帯主の疾病入院給付金日額9,900円
世帯主が働けなくなったとき 月額29.4万円 就業不能保障の世帯加入率17.2%

表の右と左を見比べると、死亡への備えは金額で足りておらず、働けなくなったときの備えはそもそも契約が少ない、という形が浮かぶ。必要性の議論は「入るか入らないか」ではなく、この三行のどこが自分に当てはまるかを選ぶ作業に近い。

入院は日数より、読めない一回の金額で考える

医療費の備えを考えるとき、入院が何日続くかを気にしがちだが、家計に響くのは一回あたりに出ていく現金のほうだ。生命保険文化センターの2025年度「生活保障に関する調査」では、過去5年間に入院して自己負担を払った人の費用は、総額の平均が18.7万円、1日あたりの平均が24,300円だった。高額療養費制度を使った場合は、その適用後の金額である。

注意したいのは、この金額に治療費や食事代、差額ベッド代だけでなく、見舞いに来る家族の交通費や衣類、日用品費まで含まれている点だ。公的医療保険の対象外の出費が最初から混ざっている。分布を見ると1日あたりで2万円未満が約6割、総額で20万円未満が約7割に収まる一方、残りはそこから外へ広がっていく。

そして世帯側の見積もりは、この実績よりかなり重い。世帯主が2〜3カ月入院した場合に健康保険診療の範囲外で必要と考える資金は、月額28.0万円(前回24.2万円)だった。実績の平均と見積もりの間にある差が、医療保険を検討する動機になっている。どこまでが公的給付で埋まるのかは健康保険の給付範囲をまとめた記事で確かめられる。

働けない期間の生活費は、死亡とは別に数える

死亡と入院の間に、抜けやすい穴がある。生きていて治療も続いているが、収入が止まっている期間だ。病気やケガで世帯主が就労不能となった場合、家族の生活費や住宅ローンの支払いへの備えとして必要と考える資金は、月額29.4万円(前回27.2万円)だった。2〜3カ月入院したときに必要と考える28.0万円とほぼ同じ水準である。

にもかかわらず、生活障害・就業不能保障保険や同種の特約の世帯加入率は17.2%にとどまり、前回の18.4%から下がっている。医療保険・医療特約が95.1%、ガン保険・ガン特約が68.2%という数字と並べると、この区分だけ極端に薄い。今後加入したい保障として世帯主の就業不能保障を挙げた割合は36.9%あるので、必要だとは感じられているが契約には至っていない状態だ。

会社員であれば傷病手当金が先に働くため、この穴は制度の切れ目から考えるのが筋になる。公的な給付が終わる時点と、貯蓄が尽きる時点のどちらが早いか。その順番が逆なら、民間の就業不能保障を検討する理由が立つ。順番が同じなら、保険料を払うより貯蓄に回すほうが合理的な場合もある。

公的保障だけで十分と答えた人は14.7%だった

生活保障の考え方を二択で尋ねた結果が、必要性の議論をよく映している。「公的保障だけで充分」が14.7%、「公的保障と自助努力による私的保障の両方で準備していく必要がある」が83.9%で、前回の81.4%から上がっている。公的制度を知った人が保険をやめるわけではなく、両方を組み合わせる前提で考える人が多数を占める。

一方、いま入っている保障内容への評価は割れている。「充足感あり」は53.2%、「充足感なし」は34.2%で、充足感なしの側が前回の31.5%から増えた。支払っている保険料は世帯あたり年35.3万円で、これは健康保険料の決まり方を追った記事で扱った公的保険料とは別に出ていく額だ。金額を払いながら足りないと感じている層が3分の1いる、という読み方になる。

だから必要性の判断は、三つの順番に落とせる。第一に公的制度でどこまで埋まるかを確かめ、第二に貯蓄と収入でどこまで持ちこたえられるかを数え、第三に残った差額だけを保険で引き受ける。順番を飛ばして商品から選ぶと、金額を払いながら充足感がない側へ回りやすい。地域や働き方による選び方の違いはFLASPOでも扱っている領域である。

よくある質問

単身なら保険は要らないのか。遺された家族の生活費という目的は薄くなるが、治療の自己負担と働けない期間の生活費は残る。単身世帯の加入率が45.6%という数字は、要らないと判断した人と、必要を感じながら未加入の人が混ざった結果と見るのが妥当だ。

貯蓄があれば保険の代わりになるのか。一回の入院の自己負担が総額18.7万円という水準なら、貯蓄で受け止められる家計は多い。差が出るのは、治療が長引いて収入が止まる場合と、死亡で収入が恒久的に消える場合だ。金額が読めて貯蓄の範囲に収まるリスクは自前で、金額が読めず桁が変わるリスクは保険で、という切り分けになる。

必要保障額はどう計算するのか。遺された家族に必要な年額を出し、必要な年数を掛けて総額を求め、そこから遺族年金と貯蓄、配偶者の見込み収入を引く。調査の平均値では年354万円の17.3年分だが、これは全国の平均であって、住まいや子どもの年齢で大きく動く。自分の数字で引き算をやり直すことが前提になる。

見直しの頻度はどれくらいが目安か。子どもの誕生や進学、住宅の購入、転職のように必要額が動く出来事のたびに数え直すのが基本だ。世帯普通死亡保険金額の平均が1,936万円へ下がり続けているのは、子どもが独立して必要額が減った世帯が含まれているためでもある。必要性は固定された値ではなく、年齢とともに下がっていく部分がある。

出典は公益財団法人生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査 速報版」および「入院費用(自己負担額)はどれくらい?」(2025年度 生活保障に関する調査)による。


アイデアコンテストプラットフォーム「FLASPO」

FLASPO

アイデア1つで、地域や企業とつながれる。

FLASPOは、全国の自治体・企業が開催する若者向けアイデアコンテストのプラットフォームです。
地域や企業が抱える課題に対して、あなたのアイデアで解決策を提案できます。

賞金やユニークな地域体験が獲得できるコンテストも多数。誰でも参加無料・オンライン完結で挑戦できます。

コンテストを探す▶︎

FLASPOで募集中のコンテスト

自治体や企業が出したお題に、学生・若者がオンラインでアイデアを応募できます。募集中のものも、これまでのお題と結果も、一覧で見られます。