健康保険の保険料はどう決まる?料率9.90%と標準報酬50等級の仕組み

健康保険の保険料はどう決まる?料率9.90%と標準報酬50等級の仕組み

同じ月給の同期と、引かれる額が違っていた

本社と支社で同じ給与なのに、健康保険料の控除額が月に千円以上ずれることがある。協会けんぽの保険料率が都道府県ごとに決まっているからである。令和8年度の率を見ると、最も高い佐賀県は10.55%、最も低い新潟県は9.21%で、差は1.34ポイントある。東京都は9.85%、大阪府は10.13%、愛知県は9.93%、北海道は10.28%となっている。

率の差は、その都道府県の加入者が使った医療費を反映する仕組みから生まれる。令和8年度は40都道府県で引き下げ、残る7県は据え置きで、引き上げになった県はない。据え置かれたのは青森、秋田、山形、栃木、神奈川、島根、沖縄の7県で、本来なら引き上げとなるところを特例措置でとどめている。適用は令和8年3月分、つまり4月納付分からである。

勤務地が変われば率も変わるため、転勤で手取りが動く。引っ越しを伴う異動のときは、家賃や通勤費と一緒に保険料率も比べておくと見通しが立つ。どの保険者に入るかで負担が変わる構図は健康保険の種類を5つに整理した記事にまとめてある。

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保険料は「標準報酬月額」という箱に入れて計算する

毎月の給与額をそのまま使って計算するわけではない。報酬を区切りのよい幅に当てはめた標準報酬月額に、保険料率を掛ける。厚生労働省の資料によれば、健康保険法と船員保険法の標準報酬月額は全部で50等級あり、下限は5.8万円、上限は139万円である。厚生年金保険が32等級で8.8万円から65万円までなので、健康保険のほうが上下に広い。

どの等級に入るかは、原則として4月から6月に支払われた報酬の平均で決まり、その年の9月分から1年間使われる。この定時決定のほかに、昇給や降給で報酬が大きく動いたときの随時改定がある。残業の多い時期が4月から6月に重なった人が、1年を通して高い等級のままになるのはこの仕組みのためである。

標準報酬月額 健康保険料の全額(東京都9.85%) 本人負担(労使折半)
20万円 19,700円 9,850円
30万円 29,550円 14,775円
50万円 49,250円 24,625円
139万円(上限) 136,915円 68,457円

賞与にも保険料がかかる。千円未満を切り捨てた標準賞与額に同じ率を掛ける形で、健康保険では年度の累計573万円が上限となる。年度は4月1日から翌年3月31日までで数え、同じ勤め先に在籍し続けている場合は上限に達した月でちょうど573万円になるよう調整され、その後の賞与は保険料の対象から外れる。厚生年金保険は1か月あたり150万円が上限で、数え方が違う点に注意したい。

明細に並ぶ率は、実は3つある

協会けんぽの場合、令和8年度の全国平均の健康保険料率は9.90%で、前年度の10.00%から0.1ポイント下がった。この率は労使で折半するため、本人が負担するのは半分である。40歳から64歳までの介護保険第2号被保険者には、全国一律の介護保険料率1.62%が加わる。40歳の誕生月から明細の様子が変わるのは、この上乗せが始まるからである。

令和8年度からは3つ目の項目が増えた。子ども・子育て支援金率が全国一律0.23%と定められ、令和8年4月分、つまり5月納付分から加わる。健康保険料率が下がった年でありながら差し引きで負担感が残るのは、介護保険料率が1.59%から1.62%へ上がり、支援金率が新たに乗ったためである。

年金の保険料とは決まり方が違うことも押さえておきたい。厚生年金保険料率は18.3%で固定され、都道府県による差はない。健康保険だけが地域と保険者で動くので、社会保険料全体を比べるときは分けて考える必要がある。国民年金の側の金額は年金の保険料をまとめた記事で確かめられる。

組合健保に入っていると、率はさらに別になる

勤め先が健康保険組合を持っている場合、率は協会けんぽの表とは無関係に決まる。健康保険組合連合会の令和8年度予算の早期集計では、1,364組合の平均保険料率は9.32%で、前年度から0.02ポイント下がった。内訳は単一組合が9.20%、総合組合が9.85%である。

平均だけを見て組合のほうが安いと決めつけるのは早い。協会けんぽの平均である9.90%以上の率になっている組合は376組合あり、全体の約3割にのぼる。令和8年度は202組合が率を下げた一方で、101組合は引き上げている。

負担の分け方も組合によって違う。法律は労使折半を原則としつつ、組合が規約で定めれば事業主の負担割合を半分より高くできる。率が平均より高くても会社が多めに負担していれば本人の控除は小さく、率が低くても折半のままなら差は縮まる。入社時に渡される組合の案内で、率と負担割合の両方を確かめておきたい。

会社を辞めた月から、計算の土台が変わる

退職すると事業主の負担がなくなるため、同じ保険に残っても金額は跳ね上がる。任意継続被保険者の標準報酬月額には上限があり、協会けんぽの令和8年度は32万円で前年度から据え置かれた。この上限は、前年9月30日時点の全被保険者の平均標準報酬月額で決まる仕組みで、2025年9月30日時点の平均は318,100円だった。

高い給与で辞めた人ほど、この上限は効く。標準報酬月額50万円だった人も任意継続では32万円で計算されるため、在職中の2倍にはならない。逆に標準報酬月額が32万円を下回っていた人は退職時の等級がそのまま使われ、負担はおおむね倍になる。市町村国保は前年の所得と世帯人数で決まるので、扶養家族が多い人は国保が高くなりやすい。

どちらが得かは退職前の給与と家族構成で逆転する。手続きの期限は短く、迷っている時間はあまりない。国保側の計算方法は国民健康保険の仕組みをまとめた記事で確かめられる。退職や独立の前に確かめる項目を扱うFLASPOでも、この試算は後回しにされやすい作業として挙がる。

よくある質問

4月から6月に残業すると1年間損をするのか。定時決定はこの3か月の報酬の平均で等級を決めるため、等級が上がれば9月分からの保険料も上がる。ただし上がった等級は将来の年金額や傷病手当金の計算にも使われるので、保険料だけを見た損得ではない。

産休や育休の間も払うのか。産前産後休業と育児休業の期間は、申し出により本人と会社の両方の保険料が免除される。免除されていても被保険者の資格は続き、給付も等級の扱いも維持される。手続きは会社が年金事務所や組合へ出す。

月の途中で入社や退職をしたらどうなるか。保険料は月単位で計算し、日割りはしない。資格を取得した月は1か月分が発生し、資格を失った月は発生しない。月末日に退職すると翌月1日に資格喪失となるため、その月の保険料がかかる点が見落とされやすい。

2か所で働いている場合はどう計算するか。どちらでも被保険者の要件を満たすときは、主となる保険者を選び、両方の報酬を合算した標準報酬月額で保険料を決める。決まった保険料は報酬の割合で各勤め先に按分される。賞与の上限も保険者ごとに累計するため、年度内に転職した人は申出書が必要になる場合がある。

出典:全国健康保険協会「令和8年度都道府県単位保険料率」、同「令和8年度保険料率のお知らせ」、同「令和8年度の保険料率の決定について」、厚生労働省「標準報酬月額の上限(社会保障審議会年金部会資料)」、日本年金機構「従業員に賞与を支給したときの手続き」、健康保険組合連合会「令和8年度 健康保険組合予算編成状況(早期集計結果)」


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