音楽の楽しみ方|ストリーミング1,132億円とライブ6,443億円

音楽の楽しみ方|ストリーミング1,132億円とライブ6,443億円

半分以上の人が聴いていて、現場に行く人は二十分の一

通学の電車で耳をふさいでいる人の数を思い出すと、音楽は誰でも楽しんでいるものに見える。実際の割合もそれを裏づける。総務省統計局の令和3年社会生活基本調査では、CDやスマートフォンなどによる音楽鑑賞の行動者率は53.5%で、5年前の49.0%から4.5ポイント上がった。趣味や娯楽の種類のなかで最も高い。

ところが同じ調査で、コンサートなどでポピュラー音楽や歌謡曲を聴いた人は5.9%にとどまる。楽器の演奏は10.2%、カラオケは13.5%だった。聴く人の数と、その場に行く人や自分で鳴らす人の数には十倍近い開きがある。

調査が2021年10月の状況を聞いており、催しの多くが中止や縮小を経ていた時期にあたることは差し引いて読む必要がある。それでも、音楽との付き合い方には段差があると見てよい。段差のどこに自分がいるかを知ると、次に手を伸ばす先が決まる。

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配信の中身は、もうほとんどが聴き放題になっている

聴く側の環境は十年で入れ替わった。日本レコード協会の日本のレコード産業2025年版によると、2024年の音楽配信売上は1,233億円で前年比106%、11年続けて増え、過去最高となった。そのうちストリーミングが1,132億円を占め、配信全体の91.8%にあたる。一方、CDなど音楽ソフトの生産金額は2,052億円で前年比93%だった。

区分 2024年の金額 前年比
音楽ソフト(CD・レコードなどの生産) 2,052億円 93%
音楽配信 1,233億円 106%
うちストリーミング 1,132億円 107%
音楽ソフトと音楽配信の合計 3,285億円 97%

定額で聴き放題という形が主流になった結果、一曲ごとに買う判断が消えた。失ったものもある。選ぶ手間がなくなったぶん、自動で並ぶ曲をそのまま流す時間が増えた。聴き方を広げたいなら、ここで一手間を戻すのが効く。

聴き放題の画面にも、使い込むほど効く機能がある。歌詞を表示させながら一度通すと、聞き取れていなかった語が埋まる。電波の弱い場所で止まるのが嫌なら、あらかじめ端末に落としておく設定がある。音質の段階を上げれば、同じ曲でも細かい音が増える。自分で並びを作って名前を付けておけば、一年後に当時の好みがそのまま残る。

具体的には三つある。曲単位ではなくアルバムを頭から通して聴く日を作ること。自動で推薦されたものではなく、誰かが選んだ並びを辿ること。そしてCDやレコードを一枚手に入れて、歌詞や制作者の記載を読むこと。配信の画面には出てこない情報が、紙のほうには残っている。

ライブは市場も動員も過去最高で、単価は1万円を超えた

現場の側はいま膨らんでいる。コンサートプロモーターズ協会の基礎調査では、2025年の総動員数は5,999万人で前年比101.0%、総売上額は6,443億3,804万円で前年比105.3%となり、いずれも過去最高を更新した。総公演数は33,769で前年を482下回っている。

売上を動員で割った平均単価は10,740円で、前年より4.2%上がった。公演の数は減ったのに売上と動員が伸びたということは、一公演あたりの規模が大きくなったことを意味する。会場の種類別に見ると、その構図がはっきりする。

会場の種類 2025年の公演数 2025年の動員数
スタジアム 313 1,146万人
アリーナ 2,729 2,178万人
ホール 13,498 1,512万人
ライブハウス 15,964 764万人

同じ調査は、ホールの公演数が前年より484減り、動員も109万人減ったことを挙げ、全国でホール会場の老朽化による閉館や休館が続いた影響だとしている。ライブハウスの動員は前年比113.0%と伸びた。大きな会場の興行と、小さな会場の数が増える動きが同時に起きている。

席を取る順番にも段がある。演者の会員向けの先行抽選がまず動き、次にプレイガイドの先行、最後に一般発売が来る。どれも外れたときは、公式が用意する定価での再販売の仕組みを待つ。転売を禁じると明示されたチケットを定価より高い値段で売買することは法律で禁じられているので、公式の経路以外には手を出さないほうがよい。

初めて行くなら、単価の高いアリーナ公演より、数千円で入れるライブハウスの対バン形式から始めるほうが負担が小さい。知らない演者が三組出てくるので、好みの発見としても効率がよい。

自分で鳴らす側に回ると、聴こえ方が変わる

楽器の演奏の行動者率が10.2%という数字は、十人に一人が何かを弾いているということでもある。鍵盤やギターを一つ触れるようになると、それまで背景として流れていた音が分解して聞こえ始める。和音が変わる位置、ベースの動き、ドラムが抜ける一瞬。聴く行為そのものの解像度が上がる。

機材を揃える必要は薄くなった。手元の端末だけで多重録音まで完結する環境があり、譜面が読めなくても耳で追って組み立てられる。カラオケの行動者率が13.5%と楽器より高いのは、声が誰でも持っている楽器だからだ。歌うだけでも音域や息の使い方は身体で分かる。

聴く装置を変えるのも、鳴らす側に近づく方法のひとつだ。付属のイヤホンから一段上げるだけで、低い音の輪郭と、左右に配置された楽器の位置が分かるようになる。部屋にスピーカーを置ければ、頭の外で音が鳴る感覚に変わる。高価なものを揃える話ではなく、同じ曲を別の装置で聴き比べる経験そのものに意味がある。

人と合わせる段になると、別の楽しみが加わる。学校や地域のサークル、社会人のバンド、合唱団。誰かと音を合わせた経験は、聴き手としての耳にも残る。学生の団体がこうした活動を発信する例は多く、学生団体のInstagram運用では、投稿に音源を使うときの権利の扱いまで整理している。

聴く・行く・鳴らすを一年の計画に落とす

三つの入口を並べたら、あとは順番と頻度を決めるだけだ。毎日は配信で聴き、季節ごとに一度は現場へ行き、週に一度は自分で音を出す。これを守れる範囲に縮めたものが、続く形になる。

現場の予定は先に押さえる必要がある。人気の公演は申し込みが数か月前に締まり、フェスの出演者発表から当日までは半年近くある。夏の大型フェスを一つ目標に置き、そこまでの間に小さな会場へ二、三回通うという組み方なら、出費も平らにできる。フェスの情報の集め方は音楽フェス情報サイトとの連携の取り組みが参考になり、学生が企画側として関わった事例はフェスメディアのSNS企画コンテストに残っている。

記録を残すと、好みの輪郭が見えてくる。聴いたアルバム、行った公演、弾いた曲を一行ずつ書き留めるだけでよい。一年たつと、自分がどの段差を越えたかが分かる。若者の活動を紹介するFLASPOでも、音楽を軸にした企画は毎年出てくる分野だ。

よくある質問

聴き放題のサービスは複数契約したほうがよいですか。

ひとつで足ります。配信されていない作品が出てきたときに、その都度CDや単曲購入で埋めるほうが安く済みます。

ライブの平均単価が10,740円というのは高くないですか。

これはスタジアムやアリーナの大型公演を含めた平均です。ライブハウスの公演は数千円の設定が多く、入口としてはそちらのほうが現実的です。

一人でライブに行っても大丈夫でしょうか。

問題ありません。会場では前後の客と話す機会もあり、同じ演者を追っている人とは話が合います。終演後にすぐ帰れるのは一人で行く利点です。

楽器は何歳から始めても間に合いますか。

聴く解像度を上げる目的なら、年齢は関係しません。弾けるようになるまでの速さより、和音やリズムの仕組みが身体で分かることに意味があります。

CDを買う意味はまだありますか。

歌詞や録音に関わった人の記載、曲順の意図といった情報は、配信の画面には出てこないことが多いです。深く知りたい作品だけ手元に置く使い方が合っています。


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