2025年の劇場は、過去にない数字を出した
しばらく映画館に行っていない人ほど驚く数字が出ている。日本映画製作者連盟の日本映画産業統計によると、2025年の入場人員は1億8,875万6千人で前年比130.7%、興行収入は2,744億5,200万円で前年比132.6%となった。内訳は邦画が2,075億6,900万円で構成比75.6%、洋画が668億8,300万円で24.4%である。
| 項目 | 2025年 | 2024年 |
|---|---|---|
| 入場人員 | 1億8,875万6千人 | 1億4,444万1千人 |
| 興行収入 | 2,744億5,200万円 | 2,069億8,300万円 |
| 公開本数 | 1,305本(邦画694・洋画611) | 1,190本(邦画685・洋画505) |
| 平均入場料金 | 1,454円 | 1,433円 |
| スクリーン数 | 3,697 | 3,675 |
平均入場料金は1,454円で前年比101.5%。公開本数は1,305本に増え、スクリーン数は3,697まで戻っている。数字の形としては、作品の数と席の数はほぼ横ばいのまま、客足だけが3割増えた年だった。
楽しみ方を考えるうえで押さえたいのは、この3割増が特定の数本によって起きている点だ。1,305本が同じように観られたわけではない。話題になった作品に人が集まり、同じ時期に公開された大多数の作品は短い上映期間で入れ替わっていく。選ぶ側に回ると、この偏りは機会にも落とし穴にもなる。
家の側の数字は、4年で13.9ポイント動いた
劇場と並んで観る場所になったのが配信である。総務省情報通信政策研究所の情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査は、13歳から79歳までの1,800人を対象に訪問留置の方法で行われており、令和6年度調査の実査期間は令和6年12月2日から8日までだった。
その結果によると、Netflixやアマゾンプライムビデオなどオンデマンド型の動画配信サービスの利用率は全年代で53.7%。経年では2020年度が39.8%、2021年度が44.8%、2022年度が45.7%、2023年度が52.0%と上がってきており、2020年度からの4年間で13.9ポイントの上昇になる。YouTubeなどオンデマンド型の動画共有サービスは85.2%、TVerのような放送番組配信サービスは40.1%だった。
| 年代 | オンデマンド型の動画配信サービス利用率(令和6年度) |
|---|---|
| 10代 | 78.6% |
| 20代 | 74.8% |
| 30代 | 70.0% |
| 40代 | 62.1% |
| 50代 | 51.5% |
| 60代 | 44.3% |
| 70代 | 15.8% |
サービス別の利用率はYouTubeが83.3%、アマゾンプライムビデオが39.2%、TVerが32.2%、Netflixが26.1%の順。10代から30代では7割がオンデマンド型の配信を使う一方、70代では15.8%にとどまる。同じ家の中でも、世代によって映画への入口がまったく違っているということになる。
劇場でしか起きないことと、家でしか起きないこと
どちらで観るかという問いには、生活時間の統計も材料をくれる。総務省の社会生活基本調査は5年ごとに趣味・娯楽の種類別行動者率を調べており、令和3年の結果では映画館以外での映画鑑賞が52.7%、映画館での映画鑑賞が29.8%だった。前者は2016年の52.1%からほぼ横ばい、後者は39.6%から9.8ポイント下がっている。
ただしこの調査は2021年10月に行われており、外出の抑制が続いていた時期にあたる。同じ調査で旅行・行楽の行動者率は24.0ポイント、遊園地や動植物園などの見物は14.8ポイント下がっているので、劇場の数字だけが落ちたわけではない。2025年の入場人員が前年比130.7%まで戻ったことを考えると、この9.8ポイントは常態ではない。
それでも二つの経路が並び立っている構図は変わらない。劇場では、上映時間が決まっていて途中で止められない。音と暗さが作り手の設計どおりに届き、他人の笑いや息づかいが同じ空間にある。家では、字幕と音量を自分で調整でき、途中で止めて調べられるし、同じ場面を繰り返せる。
楽しみ方の設計としては、作品の性質で振り分けると無駄が少ない。音の設計や画面の広さが骨格になっている作品は劇場に回し、台詞の密度が高い作品や字幕で追う必要がある作品は家に回す。画面に流れる時間の総量が気になるなら、まず計測から入る方法を時間管理アプリは何で選ぶかで紹介している。
年1,305本を前提にすると、選び方の作法が変わる
2025年の公開本数は1,305本で、1日あたり3.5本が封切られる計算になる。全部を追う前提は最初から成立しない。見逃すことが異常事態ではなく既定の状態だと置き直すと、選び方の設計が楽になる。
実際に効くのは三つの絞り方だ。一つ目は人を軸にする方法で、監督や脚本家や撮影監督の名前で追う。作品単位では当たり外れが読めないが、作り手単位なら好みの的中率が上がる。二つ目は出自を軸にする方法で、原作小説や舞台や前作を押さえておく。三つ目は年間の本数を決めてしまう方法で、劇場で年12本と決めれば月1本の枠に収まる。
費用の見立ても現実的に置ける。平均入場料金は1,454円なので、年12本なら1万7千円台。配信の月額と合わせても、趣味としての負担は見通せる範囲に収まる。本数を決めてから作品を選ぶ順序にすると、話題作に押し流されずに済む。
邦画と洋画の比率も頭に入れておくと視野が偏りにくい。2025年の公開本数は邦画694本に対して洋画611本でほぼ半々だが、興行収入では邦画が75.6%を占める。話題になる作品の多くが邦画である一方、劇場にかかっている作品の半分は洋画だということでもある。
観たあとに何を残すかで、次の一本が変わる
観る本数を増やすより、観たあとの処理を一つ足すほうが楽しみは伸びる。日付と題名と一行だけの記録を続けると、半年で自分の傾向が見えてくる。同じ監督を無意識に選んでいたり、特定の年代の作品ばかり観ていたりすることが可視化される。
二つ目は、観る前の情報を意図的に削る習慣だ。あらすじや評価を事前に読み込むほど、作品が運ぶ驚きの量は減る。配信のサムネイルと紹介文は選ばせるために作られているので、作り手の名前だけ確認して本編に入るやり方のほうが、観る側の体験は濃くなる。
三つ目は、作る側の視点を少しだけ借りることである。カットの長さ、音を止める位置、光の方向といった要素は、意識して見ると別の層が立ち上がる。編集の工程がどうなっているかは動画編集ソフト一覧でも触れていて、短い映像を自分で切ってみると見方が変わる。
もう一つの広げ方はロケ地である。地域の側から映像をどう使うかという話は動画編集と地域動画で扱っている。FLASPOが追っている地域の話題にも、作品の舞台として知られた土地が出てくる。画面で見た場所に立つと、同じ作品が二度目に別の顔を見せる。
よくある質問
劇場と配信のどちらを選ぶべきか。優劣の問題ではなく振り分けの問題である。音と画面の設計が骨格の作品は劇場、台詞や字幕を追う作品は家。利用率の統計でも、家で観る層が52.7%、劇場で観る層が29.8%で、両方を使っている人が相当数いる。
配信だけで足りるか。足りる範囲は広いが、公開から配信までには期間があり、劇場でしか観られない時期がある。2025年の公開本数1,305本のうち、話題の作品を公開時に追いたいなら劇場の枠が必要になる。
何から観ればよいか分からない。人を軸にするのが近道だ。好きだった1本の監督名か脚本家名を調べ、その人の別の作品を次に置く。年間の本数を先に決めておくと、選ぶ負荷がさらに下がる。
家族で好みが合わない。年代別の利用率を見ると、オンデマンド型の配信は10代で78.6%、70代で15.8%と差が大きい。入口が違う前提で、劇場で一緒に観る本数を年に数本だけ決めるほうがうまくいく。
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