恋愛そのものの利点を測った統計は、意外に見つからない
付き合うと何が良いのかという問いは、答えが人によって違う。それでも手がかりになる調査はある。国立社会保障・人口問題研究所の第17回出生動向基本調査 結果の概要は、1987年の第9回から同じ形で「結婚することにはなにか利点がある」と思うか、「独身生活には結婚生活にはない利点がある」と思うかをたずね続けている。
ただし、恋愛の利点という項目はこの調査にない。測られているのは結婚の側と独身の側の2枚である。いちばん近いのは、結婚の利点の選択肢に並ぶ「現在愛情を感じている人と暮らせる」で、18〜34歳の未婚者のうち男性15.9パーセント、女性17.5パーセントが挙げた。総数は男性1,676人、女性1,783人である。
この15.9パーセントという値は、結婚の利点のなかで上から4番目にあたる。好きな人と一緒にいられることを結婚の理由に置く人は、多数派ではないということになる。では何が上に来ているのか。そして独身の側には何が並ぶのか。この2枚を同時に広げると、在学中に交際するかどうかを考える材料がそろう。交際の有無そのものの数え方は大学生の恋愛とはの記事で扱っている。
結婚に利点があると答えた人は、男性で56.3パーセントまで下がった
まず全体の構えを確かめておく。結婚することに利点があると答えた未婚者は、今回の調査で男性56.3パーセント、女性63.4パーセントだった。利点はないと答えた人は男性42.8パーセント、女性36.0パーセントである。長く男性は6割台、女性は7割前後を保っていたが、今回は男性が5割台、女性が6割台まで落ちた。
一方で独身生活に利点があると答えた人は男性85.4パーセント、女性87.9パーセントで、どちらも9割に近い水準を保っている。ここが大事な点で、下がったのは結婚の側だけである。独身の側が魅力を増したから結婚が選ばれにくくなった、という筋書きはこの2つの数字と合わない。
つまり、片方の評価だけが静かに削られている。在学中の人にとっては、交際を結婚の前段として考えるか、別のものとして考えるかという分かれ目にそのまま重なる。結婚の利点が薄く見えるからといって、いま付き合うことの意味が薄くなるわけではない。調査がこの2問を別に立てているのも、同じ理屈からである。
挙げられている利点は、家族と安らぎの2つに集まっている
具体的な項目に降りると、選ばれ方には偏りがある。男性では「自分の子どもや家族をもてる」と「精神的な安らぎの場が得られる」がどちらも27.0パーセントで並び、最も多く選ばれた利点になった。女性では「自分の子どもや家族をもてる」が31.6パーセントで単独の首位である。
| 選択された利点 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 結婚:自分の子どもや家族をもてる | 27.0% | 31.6% |
| 結婚:精神的な安らぎの場が得られる | 27.0% | 24.8% |
| 結婚:現在愛情を感じている人と暮らせる | 15.9% | 17.5% |
| 結婚:経済的に余裕がもてる | 7.0% | 17.1% |
| 独身:行動や生き方が自由 | 72.7% | 77.2% |
| 独身:家族を養う責任がなく、気楽 | 29.4% | 24.1% |
| 独身:金銭的に裕福 | 26.7% | 18.5% |
| 独身:友人などとの広い人間関係が保ちやすい | 14.7% | 18.0% |
女性のこの項目は、第9回の調査からほぼ一貫して増え続けてきた。ところが第15回で49.8パーセントまで伸びたあと折り返し、今回は31.6パーセントまで落ちている。ピーク時から18ポイントの差である。10年ほどの間に、家族をもつことを利点として挙げる人が3人に1人まで減ったという動きになる。
「経済的に余裕がもてる」は男性7.0パーセント、女性17.1パーセントだった。この項目も第9回から増え続けていたが、今回は男女ともに減少へ転じた。収入の見通しと結婚を結びつける人が減っているという読み方ができる。在学中の家計の話は一人暮らしのメリットの記事に別立てでまとめてある。
独身の利点は「自由」で、こちらの数字は減っていない
独身の側へ目を移すと、首位は動いていない。「行動や生き方が自由」を挙げた人は男性72.7パーセント、女性77.2パーセントで、第9回の調査以来ずっと最多である。今回は男性が微増、女性が微減という小さな動きにとどまった。
次に多いのは「家族を養う責任がなく、気楽」で男性29.4パーセント、女性24.1パーセント、「金銭的に裕福」が男性26.7パーセント、女性18.5パーセントと続く。この2つは今回の調査で増えた項目である。扶養や支出の負担を負わないことの価値が、以前より高く見積もられているということになる。
逆に減り続けているのが「友人などとの広い人間関係が保ちやすい」で、男性14.7パーセント、女性18.0パーセントまで下がった。独身でいれば交友が広がるという前提が、実感として弱まっている。ここは在学中の人が読み落としやすい箇所である。相手がいない期間が自動的に人間関係を広げてくれるわけではない、と答えている人が増えている。なお「異性との交際が自由」を独身の利点に挙げた人は男性5.2パーセント、女性3.6パーセントで、もともと小さい項目のままである。
利点を比べる前に、選択の枠そのものが動いている
この調査には、もうひとつ並べておきたい数字がある。一年以内に結婚するとしたら何か障害があると答えた未婚者は、前回の男性53.0パーセントから48.1パーセントへ、女性58.4パーセントから49.1パーセントへ減った。障害が消えたのなら良い知らせだが、そう読むには続きを見る必要がある。
障害がないと答えた人は大きく動いていない。入れ替わるように増えたのは「一生結婚するつもりはない」で、男性18.6パーセントから24.9パーセントへ、女性15.7パーセントから22.2パーセントへ上がった。障害を感じていた人の一部が、結婚そのものを選択肢から外した可能性があると報告書は書いている。
18歳から24歳が独身でいる理由の上位には「結婚するにはまだ若すぎる」、「今は、仕事(または学業)にうちこみたい」、「結婚する必要性をまだ感じない」が並ぶ。今回は「今は、趣味や娯楽を楽しみたい」が男女ともに微増した。在学中はそもそも結婚を遠くに置いて考える時期であり、その前提で利点の表を見たほうがよい。学業や活動に時間を振る選択は、地域の課題に提案を持ち込むFLASPOのような場に関わる動きとも重なる。学年ごとの優先順位の入れ替わりは大学生の恋愛の特徴の記事で整理した。
よくある質問
この調査に恋愛の利点をたずねた項目はありますか。
ない。継続して問われているのは結婚の利点と独身生活の利点である。最も近いのは結婚の利点の選択肢にある「現在愛情を感じている人と暮らせる」で、男性15.9パーセント、女性17.5パーセントだった。
結婚の利点が下がったのは、独身が良くなったからですか。
その説明はこの数字と合わない。独身生活に利点があると答えた割合は男性85.4パーセント、女性87.9パーセントで、9割近い水準から大きく動いていない。下がったのは結婚の側だけである。
複数回答なので合計が100パーセントになりませんが、どう読めばよいですか。
それぞれの項目を選んだ人の割合として読む。たとえば独身の利点で「行動や生き方が自由」が7割を超えるのは、ほかの項目と同時に選んだ人を含むためである。項目どうしの大小は比べられるが、足し算はできない。
対象は大学生に限られていますか。
限られていない。18歳から34歳の未婚者が対象で、学生も社会人も含まれる。ただし独身でいる理由は年齢別の集計があり、18歳から24歳では学業や年齢を理由に挙げる人が上位に来る。グラフの元データは研究所が公開しているグラフデータから確かめられる。
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