働いている学生は、やはり多数派に戻った
アルバイトを入れるか入れないかという話から始めると、たいてい結論が出ない。先に押さえたいのは、働いている状態が例外ではないという事実である。日本学生支援機構の令和4年度学生生活調査によると、調査時前の1年間にアルバイトに従事した大学学部(昼間部)の学生は83.8%だった。平成30年度は86.1%、令和2年度は80.7%で、感染症の影響で落ちた分が戻ってきた形になっている。
内訳を見ると、従事者のうち「家庭からの給付のみで修学可能」と答えた層が52.4%、「家庭からの給付のみでは修学不自由・困難及び給付無し」と答えた層が31.5%である。前者は働かなくても学業は続けられる立場で、後者は働く前提で家計が組まれている立場だ。同じ週15時間のシフトでも、減らせる余地があるかどうかがここで分かれる。
両立という言葉は、だから二通りの意味を持つ。削れる人にとっては配分の問題であり、削れない人にとっては配置の問題になる。自分がどちら側にいるかを決めないまま時間割を組むと、学期の途中でどちらかが破綻する。
週あたりの山は11〜15時間のところにある
では実際に何時間働いているのか。同じ調査の週間平均生活時間では、「アルバイト・定職」に充てた時間として11〜15時間が19.2%、6〜10時間が18.9%、16〜20時間が14.7%、1〜5時間が12.5%と答えており、0時間は23.3%だった。21時間以上を合わせると11.0%になる。週11〜15時間は、1日5時間のシフトを週3回入れるとちょうど収まる量である。
同じ週の中で、授業は1〜5時間が21.0%、16〜20時間が20.4%と幅広く分布し、予習・復習や課題は1〜5時間が52.3%に集まっている。授業外の勉強が週5時間以内の層が半数を超える一方で、仕事には週11時間以上を入れている層が44.9%いる。この二つを並べると、どちらが圧迫されているかは見やすい。
| 週あたりの時間 | アルバイト・定職 | 大学の授業 | 予習・復習、課題など |
|---|---|---|---|
| 0時間 | 23.3% | 4.8% | 9.1% |
| 1〜5時間 | 12.5% | 21.0% | 52.3% |
| 6〜10時間 | 18.9% | 14.0% | 22.9% |
| 11〜15時間 | 19.2% | 14.3% | 7.7% |
| 16〜20時間 | 14.7% | 20.4% | 3.8% |
| 21時間以上 | 11.0% | 25.3% | 4.0% |
必要な金額から、入れるべき時間数は計算できる
シフトの量を感覚で決めると、多すぎるか少なすぎるかのどちらかになる。金額から入ると量が決まる。同調査では、大学学部(昼間部)の年間収入は1,967,400円で、内訳は家庭からの給付が1,096,900円(55.8%)、奨学金が407,600円(20.7%)、アルバイト収入が375,900円(19.1%)、定職・その他が87,000円(4.4%)だった。令和2年度のアルバイト収入は366,500円で、2年間で9,400円増えている。
この375,900円を時間に換算してみる。厚生労働省が公表した令和8年度の地域別最低賃金は全国加重平均で1,177円、前年度の1,121円から56円の引上げである。最高は東京都の1,280円、最低は宮崎県の1,085円で、発効日は令和8年10月1日から12月2日にかけて県ごとに分かれている。平均額で割ると年間319時間ほどになり、授業期間を35週とすれば週9時間前後という試算になる。
支出側も並べておきたい。同じ調査の学生生活費は1,824,700円で、学費が1,147,300円、生活費が677,400円という構成である。アルバイト収入はこの総額の2割前後を埋めているにすぎず、残りは家庭からの給付と奨学金が支えている。日本学生支援機構の支援実績ベースでは、大学学部の奨学金受給率は32.3%である。シフトを増やす前に、受けられる支援の確認が先に来る理由がここにある。
ここで出した週9時間という数字は、平均額で割った目安にすぎない。東京都の1,280円なら年間294時間、週では8.4時間で足り、宮崎県の1,085円なら年間347時間、週では9.9時間が必要になる。同じ金額を稼ぐのにかかる時間が、勤務地によって週1時間半ほど変わるということである。交通費の有無や深夜割増を入れれば、この差はさらに動く。
重なりは、履修登録の時点でしか動かせない
崩れ方には型がある。試験期間と繁忙期が同じ週に来る、提出締切の前日に遅番が入る、集中講義と連勤が重なる。どれも当日の工夫では処理できない。動かせるのは、授業の曜日を決める段階だけである。124単位と上限設定から組む時間割のように、先に空ける曜日を作っておけば、その曜日に固定シフトを寄せられる。
登録できる量にも制度上の歯止めがある。大学設置基準第27条の2は、1年間または1学期に履修科目として登録できる単位数の上限を定めるよう努めることを大学に求めている。上限があるので、働く時間を確保するために履修を後ろへ回すと、後の学年に積み残しが寄る。四年次に必修が残ると、就職活動と重なって逃げ場がなくなる。
逆に言えば、低学年のうちに単位を前へ寄せておくほど、後半のシフトは自由になる。単位の上限が置かれた五つの制度を確かめたうえで、一年目と二年目にどれだけ詰められるかを計算しておくと判断が早い。
職種と働き方で、同じ時間の重さが変わる
同じ週12時間でも、残る疲れと使える時間は職種によって違う。深夜帯の仕事は時給が上がるが、翌日の午前の授業と相性が悪い。土日にまとめる働き方は平日の帯を守れるが、学外の活動や帰省とぶつかる。シフトの提出が月単位の職場なら試験期間を先に外せるが、週単位の職場では直前の調整に追われる。時給やシフトの違いと選び方を比べるときは、時給より提出のサイクルを先に見たほうがよい。
探す段階で確かめる項目も決まっている。勤務地までの移動時間は、通学と同じく週あたりで積み上がる。片道30分の職場に週3回通えば、それだけで3時間が加算される。求人票の読み方は職種の偏りと求人票で確かめる12項目に整理されている。働く場所を地域で選ぶという考え方もあり、FLASPOが扱う地域との関わりは、収入と経験を同じ枠で取る選択肢として見ることができる。
最後に残るのは、やめる条件を先に決めておくことである。成績が落ちたら減らす、特定の月は入れない、といった線を事前に引いておけば、交渉の材料になる。働き始めてから線を引こうとすると、職場の都合が先に立つ。
よくある質問
両立できているかどうかは何で判断するのか。シフトの本数ではなく、授業外の勉強に充てた時間で見るのが確実である。週1〜5時間に収まる層が52.3%という分布の中で、自分がどこにいるかを月ごとに記録しておくと、減らす判断の根拠になる。
週に何時間までなら両立できるのか。一律の答えはないが、分布の山は11〜15時間にある。授業外の勉強に週6時間を確保する前提なら、授業と移動を足した残りから逆算して決めるのが現実的である。
収入はどのくらいが平均なのか。大学学部(昼間部)のアルバイト収入は年間375,900円で、収入全体の19.1%にあたる。月あたりでは3万円台で、生活費のすべてを賄う水準ではない。
最低賃金はいつ変わるのか。令和8年度の改定額は全国加重平均で1,177円となり、発効日は令和8年10月1日から12月2日にかけて都道府県ごとに異なる。自分の勤務地の発効日を確かめると、時給が上がる月がわかる。
奨学金を借りればアルバイトは不要になるのか。収入の内訳では奨学金が407,600円、アルバイトが375,900円で、どちらか一方で足りる構成にはなっていない。支援実績ベースの受給率は大学学部で32.3%であり、まず対象になるかどうかの確認から始まる。
試験期間だけ休むことはできるのか。職場との取り決めによるが、シフトの提出時期が早い職場ほど通りやすい。学事日程は年度の初めに出るため、提出のサイクルと突き合わせておけば、繁忙期との衝突は事前に見える。
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