「種類」を数える前に、何で分けるかを決める
ビジネスモデルの一覧を並べた資料を三つ見比べると、数が合わないことに気づく。ある本は8つ、別の資料は30以上を挙げる。食い違うのは誰かが間違っているからではなく、分けるための物差しがそれぞれ違うからだ。商品の形がモノかサービスかで切る人もいれば、相手が個人か法人かで切る人もいる。
設計の道具として使いたいなら、物差しは「誰から、どの時点で、何回お金をもらうか」に置くのが早い。この三つが決まると、手元に用意しておく運転資金、顧客ひとりの獲得にかけてよい上限、在庫を抱えるかどうかまでが連動して決まる。逆にここを曖昧にしたまま商品名と値段だけ先に決めると、注文は入っているのに現金が足りないという状態に入りやすい。
日本政策金融公庫総合研究所の2025年度新規開業実態調査によると、いまの事業に決めた理由は「これまでの仕事の経験や技能を生かせるから」が43.8パーセントで最も多く、「身につけた資格や知識を生かせるから」が20.6パーセントで続く。経験から入るのは筋が通っているが、経験が蓄積されているのはたいてい「作る側」や「提供する側」で、お金の取り方の側ではない。種類を知る値打ちは、そこの選択肢を数えられるようにすることにある。
ここでは収益の取り方を軸に9つへ整理する。整理したものを1枚の図に落とし込みたいときは、ビジネスモデルキャンバスで9ブロックに分ける記事やリーンキャンバスで1枚に整理する記事が続きになる。
| 型 | 収益の取り方 | 現金が入る時点 | 向きやすい商材 |
|---|---|---|---|
| 売り切り | 一度の販売で全額 | 引き渡し時 | 物販、工事、受託制作 |
| 継続課金 | 定額を月や年ごとに | 契約が続く間 | ソフト、会員制、定期便 |
| 従量課金 | 使った量に応じて | 利用のあと | クラウド、通信、保管 |
| 消耗品 | 本体を薄く、替えで回収 | 買い替えのたび | 替刃、カートリッジ、資材 |
| 広告 | 読者や視聴者を広告主に | 掲載や表示のあと | 媒体、アプリ、動画 |
| フリーミアム | 無料層の一部が有料へ | 有料に移った時 | ソフト、学習サービス |
| 仲介手数料 | 成約額の一定割合 | 取引が成立した時 | 通販の出店、求人、宿泊 |
| マッチング | 両側から会費や手数料 | 登録時と成約時 | 紹介、人材、技能の売買 |
| ライセンス | 権利の使用料 | 契約時と使用量に応じて | 商標、技術、キャラクター |
売り切りと継続課金は、現金が入る速さが違う
同じ30万円の売上でも、納品した月に30万円が入るのと、1万円が30か月かけて入るのとでは、必要な体力がまったく違う。前者は現金が早く戻るので在庫や材料に再投資しやすく、後者は最初の数か月を自分の資金で支えなければならない。種類の違いは、突き詰めれば現金が入る速さの違いである。
売り切り型は物販や受託制作のように、引き渡しと入金の間隔が短い。読みやすい反面、来月も同じだけ売れるとは限らないので、毎月あらたに顧客を探し続ける負荷がかかる。受注が途切れた月の落ち込みがそのまま収入に出るのも、この型の宿命だ。
継続課金型は一度契約が決まれば翌月も計上できるため、売上の見通しが立ちやすい。ただし立ち上がりは遅く、解約率が数パーセント動くだけで数年後の姿が変わる。従量課金型はその中間で、相手の使用量が増えるほど自動的に単価が上がる代わり、相手の事業が縮むと自社も一緒に縮む。消耗品型は本体の利益を薄くして替えの部材で回収する組み立てで、替えを他社に奪われた瞬間に崩れる弱点を抱えている。
どの型を選ぶかは、手元の資金とも結びつく。公庫の同じ調査では開業費用の平均値が975万円、中央値は600万円で、「250万円未満」が20.1パーセント、「250万円から500万円未満」が21.7パーセントと、4割以上が500万円を下回る水準で始めている。少ない元手で始めるなら、入金までの距離が短い型を最初に置き、継続課金はそのあとに重ねる順番のほうが無理が出にくい。
無料で広く配り、別の場所で回収する組み立て
利用者からお金をもらわない型も、収益の取り方としては立派な一つである。広告型は、集めた読者や視聴者の注意そのものを広告主に売る。フリーミアム型は、機能を限って無料で配り、足りなくなった一部の人が有料に移るのを待つ。どちらも「払う人」と「使う人」が分かれているのが特徴だ。
この組み立てが成り立つかどうかは、配る費用がどこまで薄くなるかで決まる。令和6年度電子商取引に関する市場調査をみると、音楽や電子書籍などを含むデジタル系分野の市場規模は2兆6,776億円で前年比1.02パーセント増にとどまる一方、物販のなかでも「書籍、映像・音楽ソフト」のEC化率は56.45パーセントに達している。複製の費用がほぼかからない商材ほど、無料で配ってから回収する形に寄っていくことが、この二つの数字の対比から読み取れる。
注意したいのは、無料の層を抱える費用が先に出ていくことだ。広告型なら一定の閲覧量に届くまで収入はほぼ立たず、フリーミアム型なら無料利用者のサーバー代や問い合わせ対応が収入より先にかかる。どちらも「どれだけの無料層を、何か月間、自分の資金で支えられるか」を先に見積もっておかないと、途中で配るのをやめる判断に追い込まれる。
一方で、この型は値段の交渉が起きにくいという利点もある。無料で試した相手が自分で納得して有料に移るため、商談で値引きを求められる場面が少ない。立ち上がりの遅さを許容できる体力があるかどうかが、採用の分かれ目になる。
他人の取引を、場として成り立たせる
自分で商品を持たずに、売り手と買い手を引き合わせて手数料を受け取る型がある。通販の出店プラットフォーム、求人、宿泊の予約などが当てはまる。在庫を持たないので身軽だが、両側がそろわないと一方だけでは価値が出ないという難しさがある。売り手を先に集めるのか買い手を先に集めるのかで、初期の打ち手が変わる。
場の商売がどれだけの規模になり得るかは、取引が電子化している度合いに左右される。経済産業省の電子商取引実態調査によれば、2024年の国内のBtoC-EC市場規模は26.1兆円で前年比5.1パーセント増、EC化率は9.8パーセントだった。これに対して企業間のBtoB-ECは514.4兆円、EC化率は43.1パーセントで前年比3.1ポイント増と、桁がひとつ違う。個人向けの場はまだ全取引の1割前後しか通っていない計算になる。
マッチング型は仲介手数料型に近いが、片側から会費を取る形も混ぜられる。成約しなくても収入が立つ代わりに、成約率が低いと会費が続かない。ライセンス型はさらに身軽で、商標や技術、キャラクターの使用を認めて使用料を受け取る。自分で製造も販売もしないので費用は小さいが、相手の販売力に収入が丸ごと依存する。
場や権利の商売は、地域の産品を扱う事業と組み合わせやすい。地元の作り手を束ねて売り先につなぐ形がその一例で、具体的な手順は特産品のEC販売を扱った記事で扱っている。
どの型が実際に伸びているかを、数字で確かめる
型の選択は好みの問題ではなく、その型が置かれる市場が広がっているかどうかで損得が変わる。公表されている調査にあたれば、少なくとも方向は確かめられる。
経済産業省の調査が示す2024年の分野別の内訳をみると、物販系分野は15兆2,194億円でEC化率9.78パーセント、サービス系分野は8兆2,256億円で前年比9.43パーセント増、デジタル系分野は2兆6,776億円で同1.02パーセント増だった。伸び率が最も高いのはサービス系で、旅行サービスが3兆5,249億円まで戻ったことが大きい。売り切り型で物を売る場所は広いが、伸びの勢いはサービスの予約や手配の側にある。
開業後の収支についても手がかりがある。公庫の調査では、現在の採算が「黒字基調」の割合は67.0パーセント、「赤字基調」は33.0パーセントだった。予想していた月商に対する達成率は、「125パーセント以上」が34.2パーセントある一方、「50パーセント未満」も10.5パーセントある。見込みが半分も立たない事業が1割あるという事実は、どの型を選ぶにしても最初の売上見込みを厚く持たないほうがよいことを示している。
型を一つに絞り込む必要はない。売り切りで現金を回しながら、同じ顧客に継続課金を足していく組み合わせは現実的で、後発でも取りやすい。地域での活動を事業に育てていく事例についてはFLASPOの取り組みも参考になる。
よくある質問
種類はいくつ覚えればよいのでしょうか。
数を覚えることに意味はほとんどない。大切なのは、自分の事業について「誰が払うか」「いつ払うか」「何回払うか」を即答できる状態にすることだ。この表の9つは、その三つの答えの組み合わせを並べたものにすぎない。
複数の型を混ぜてもよいのでしょうか。
混ぜて構わない。むしろ単独の型だけで成り立っている事業はまれで、物販に保守契約を付ける、受託に使用料を乗せるといった重ね方が普通に行われている。ただし同時に三つ以上を立ち上げると、どこで利益が出ているのか分からなくなる。主となる型を一つ決め、残りは後から足す順番にしたい。
先に始めた会社と同じ型を選ぶのは不利でしょうか。
型そのものは真似されても構わない部分で、差がつくのは誰に向けているかと、どこまで狭く絞れているかにある。公庫の調査で事業の決定理由の上位が経験や資格だったのは、同じ型のなかで自分だけが持っている条件を使えという意味でもある。
検証はどの順番で進めればよいのでしょうか。
収益の取り方は最後に決めるのではなく、最初に仮で置いて検証する。価格と支払いの時点を仮に決めて数人に提示し、断られた理由を集めるほうが、商品を作り込んでから値段を考えるより早い。断られた理由が値段なのか時点なのかが分かれば、型を変える判断もできる。
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