試験の情報を集めていると、公務員の年収は六〇〇万円台だという記述に何度もぶつかる。ところが人事院の調査にも総務省の調査にも、年収という欄は存在しない。公表されているのは四月分の月額で、しかもボーナスが入っていない。つまりあの六〇〇万円台は誰かが組み立てた推計であり、組み立て方を知らないまま引き写すと、志望先を選ぶ段階で判断を誤る。
公表値は四月分の月額で、ボーナスは別に足す
人事院の令和7年国家公務員給与等実態調査報告書は、令和七年四月一日現在の一般職の常勤職員二四万九一四九人について、平均年齢四一・八歳、平均給与月額四二万四九七九円と報告している。この平均給与月額は俸給と諸手当の合計で、内訳は俸給三四万五四五八円、地域手当等四万四三三六円、俸給の特別調整額一万一八一〇円、扶養手当八五七三円、住居手当七二二七円、その他七五七五円である。
ここに期末手当と勤勉手当は入っていない。月例給の調査だからである。年間の支給月数は令和7年人事院勧告・報告の概要で改定され、四・六〇月分から四・六五月分に引き上げられた。引上げ分は期末手当と勤勉手当に〇・〇二五月分ずつ均等に配分されている。
足し算の手順はここから一段ややこしくなる。期末手当及び勤勉手当の支給について(給実甲第220号)のとおり、支給月数を掛ける相手は月例給の全額ではない。期末手当の基礎になるのは俸給と扶養手当、それに地域手当などの加算分で、勤勉手当は扶養手当の加算を除いた額を基礎にする。超過勤務手当や通勤手当は基礎に含まれない。月額四二万円をそのまま四・六五倍すると、実際より大きな数字が出てしまう。
だから年収を知りたいなら、月例給の年間分と、俸給を中心とした基礎額に支給月数を掛けた分を別々に積むことになる。手間はかかるが、どの手当が賞与に乗り、どの手当が乗らないかを一度通すと、求人票の金額の意味も読めるようになる。国と地方で制度の建て方がどう違うかは国家公務員と地方公務員の違い|人数・根拠法・試験の主体で比べるに整理してある。
国と地方は同額で並び、差は職種に出る
地方側の数字を同じ年の四月で揃えてみる。総務省の令和7年地方公務員給与の実態によれば、全職種の平均給与月額は四二万八五八九円で、平均給料月額三三万九六一六円と平均諸手当月額八万八九七三円の合計である。諸手当が給与月額に占める割合は二〇・八パーセントだった。
一般行政職に絞ると四一万三九六八円で、平均年齢は四二・〇歳。国の行政職俸給表(一)が平均年齢四一・九歳で四一万四四八〇円だから、年齢がほぼ同じ行政職同士では五一二円しか違わない。国家か地方かという分け方は、給与の高低をほとんど説明しない。
説明するのは職種である。警察職は四九万四五一三円で全職種の平均を六万五九二四円上回るが、押し上げているのは給料ではなく諸手当で、月額一四万八六〇〇円が給与月額の三〇・〇パーセントを占める。そのうち超過労働的手当が七万八九三二円にのぼる。勤務の実態が手当として現れていると読むべきで、同じ役所でも職種を替えれば金額の構造ごと変わる。
| 職種 | 平均給与月額 | 平均給料月額 | 諸手当月額 | 諸手当の割合 |
|---|---|---|---|---|
| 全職種 | 四二万八五八九円 | 三三万九六一六円 | 八万八九七三円 | 二〇・八% |
| 警察職 | 四九万四五一三円 | 三四万五九一三円 | 一四万八六〇〇円 | 三〇・〇% |
| 高等学校教育職 | 四四万二六六八円 | 三七万八三〇五円 | 六万四三六三円 | 一四・五% |
| 消防職 | 四二万六二七四円 | 三二万〇四四九円 | 一〇万五八二五円 | 二四・八% |
| 一般行政職 | 四一万三九六八円 | 三二万六九一一円 | 八万七〇五七円 | 二一・〇% |
| 技能労務職 | 三七万五三八四円 | 三一万二一四三円 | 六万三二四一円 | 一六・八% |
給料と諸手当を分けて並べると、職種ごとの性格が見える。教育職は給料が三七万八三〇五円と高いのに諸手当は六万四三六三円で薄く、消防職は給料三二万〇四四九円に対して諸手当が一〇万五八二五円と厚い。賞与の基礎は給料側に寄っているため、給与月額が近い二つの職種でも、年間で受け取る総額は開くことがある。
同じ一般行政職で月七万四七一九円の開き
職種を一般行政職にそろえ、団体区分で切り直すと別の落差が出る。指定都市が四四万五六二九円で最も高く、特別区四三万四七三三円、都道府県四二万〇一三九円、市四〇万八四五三円、一部事務組合等四〇万六一七七円と続き、町村が三七万〇九一〇円で最も低い。上下の差は月七万四七一九円である。
この差の出どころを分解すると、給料ではない。平均給料月額は特別区の三〇万六四九九円から指定都市の三三万一五九三円までで、幅は二万五〇九四円にとどまる。対して諸手当月額は町村の五万四四六四円から特別区の一二万八二三四円まで、七万三七七〇円の幅がある。団体による差はほぼ全部が手当の差だと言える。
特別区が面白い位置にいる。給料は六区分のなかで最も低いのに、諸手当が給与月額の二九・五パーセントを占めるため、合計では二番目に高い。地域手当に相当する部分が厚いからで、同じ仕事に対する評価が違うというより、物価と賃金の水準に合わせた調整が働いている。
国を一〇〇とした一般行政職のラスパイレス指数は全地方公共団体の平均で九八・九だった。団体区分別では都道府県九九・七、指定都市九九・八、市九八・七、特別区九七・九、町村九六・七である。給与月額では七万円以上開いていたのに、職員構成の違いをそろえた指数では三ポイント程度しか離れない。七万円の多くは、どの地域で働くかという条件が作っている。手取りの話を生活費と突き合わせたいときは地方就職の年収|賃金の地域差1.23倍と物価差1.08倍のずれが参考になる。
初任給は上がったが、効くのは伸び方
入口の金額は大きく動いた。令和七年の勧告では官民較差一万五〇一四円、率にして三・六二パーセントを埋める改定が行われ、初任給は総合職の大卒が二四万二〇〇〇円、一般職の大卒が二三万二〇〇〇円、一般職の高卒が二〇万〇三〇〇円になった。引上げ額はそれぞれ一万二〇〇〇円、一万二〇〇〇円、一万二三〇〇円で、高卒は六・五パーセントの上げ幅である。
地方の入口も国を基準に動く。総務省の調査では、一般行政職の大学卒試験採用の初任給基準額の平均は都道府県が二二万五六九四円で最も高く、市二二万二七三八円、指定都市二二万一〇一五円、町村二二万〇七五一円、特別区二二万〇〇八七円と並ぶ。国の基準額より高い団体は都道府県で四二団体、全都道府県の八九・四パーセントに達し、市でも三七五団体、四八・六パーセントが国を上回る。
ただし入口の一、二万円より、その後三十年の伸び方のほうが生涯の金額を決める。行政職俸給表(一)の大学卒について年齢階層別の平均給与月額を追うと、二十代前半から五十代前半までで二倍を超える。
| 年齢階層 | 大学卒の平均給与月額 | 高校卒の平均給与月額 |
|---|---|---|
| 20歳以上24歳未満 | 二六万〇六五二円 | 二三万六五三九円 |
| 24歳以上28歳未満 | 二八万四三三九円 | 二七万五三六二円 |
| 32歳以上36歳未満 | 三五万四六一五円 | 三三万九九〇九円 |
| 40歳以上44歳未満 | 四四万八二〇六円 | 三九万七五五六円 |
| 48歳以上52歳未満 | 五〇万九四四一円 | 四五万八五一四円 |
| 52歳以上56歳未満 | 五二万九二三六円 | 四七万七八八五円 |
二十代前半では大学卒と高校卒の差は二万四一一三円しかないが、五十代前半では五万一三五一円に広がる。級が上がる速さの違いが積み上がった結果で、入った時点の差ではなく昇格の履歴が開きを作っている。二十歳未満の階層は二〇万七四一六円で、ここだけは勧告後の初任給より低い。調査の基準日が令和七年四月一日で、改定の反映前の在職者を数えているためである。民間の初任給と平均給与の関係は新卒就活の年収|初任給26.2万円と平均給与478万円の間を埋めるで確かめられる。
数字を比べる前にそろえる三点
求人票や記事の金額を並べるとき、先にそろえるべき点は三つある。一つ目は、その金額が給料だけなのか諸手当込みなのか。地方公務員の資料では給料月額と給与月額が別の欄に並んでいて、片方だけを引くと二割近く低く見える。
二つ目は、ボーナスの支給月数と算定の基礎。月数が同じでも、基礎に入る手当の構成が違えば金額は変わる。三つ目は地域手当の級地で、同じ国家公務員でも勤務地によって月数万円の差が出る。この三点をそろえない比較は、ほとんど意味を持たない。
もう一つ忘れやすいのは、公表されている金額がすべて全職員の平均だという前提である。平均年齢四一・八歳の集団の平均値は、二十代で採用された人の将来の金額ではない。年齢階層別の表を見て自分が置かれる位置を確かめるほうが、総平均を覚えるより役に立つ。地方自治体の給与体系を通しで眺めたいときは地方公務員の年収はどのくらい?給与体系と将来性を徹底的に解説が早い。
金額を詰めたあとに残るのは、その役所で何をしたいのかという問いである。面接で問われるのは給与制度の知識ではなく、地域の課題に手を入れた経験の中身になる。学生のうちに自治体や企業の課題に関わる場として、FLASPOのようなプログラムを挟んでおくと、志望理由が具体的になる。
よくある疑問
六〇〇万円台という数字はどこから来ているのか。月例給の年間分と期末手当・勤勉手当を合算した推計値で、公表された統計値ではない。平均年齢四一・八歳の全職員平均という前提が外れると大きくずれるため、二十代の年収として受け取ると実態から離れる。
国家公務員と地方公務員ではどちらが高いのか。行政職同士で比べるとほぼ同額である。国の行政職俸給表(一)が四一万四四八〇円、地方の一般行政職が四一万三九六八円で、平均年齢も四一・九歳と四二・〇歳でそろっている。違いが出るのは職種と団体区分であり、国か地方かという区分ではない。
四・六五月分はそのまま受け取れるのか。勤勉手当には成績に応じた支給率があり、在職期間が短ければ割合が下がる。採用初年度の六月期は在職期間が二、三か月しかないため、満額にはならない。年収の見込みを立てるなら、二年目以降の数字で考えたほうが安全である。
今後も給与は上がり続けるのか。令和七年の勧告では官民給与の比較方法そのものが見直され、比較対象の企業規模が五十人以上から百人以上に引き上げられた。行政職俸給表(一)の平均改定率は三・三パーセントで、定期昇給分を加えたモデル試算では月収で約五・一パーセントの改善とされている。ただし勧告は国の職員に対するもので、地方の改定は各団体の人事委員会の勧告と条例を経る。国の数字がそのまま適用されるわけではない。
アイデアコンテストプラットフォーム「FLASPO」

アイデア1つで、地域や企業とつながれる。
FLASPOは、全国の自治体・企業が開催する若者向けアイデアコンテストのプラットフォームです。
地域や企業が抱える課題に対して、あなたのアイデアで解決策を提案できます。
賞金やユニークな地域体験が獲得できるコンテストも多数。誰でも参加無料・オンライン完結で挑戦できます。
