社会教育士は5年で9,693人|地域の学びを支える側に回る入口

学びを支える仕事は、教室の中だけにあるわけではない

子どもの学びに関わる仕事と聞くと、まず教員免許が浮かぶ。けれども地域の側から学びを支える役割には、別の系統の制度が用意されている。社会教育法という昭和24年の法律が土台である。

この法律は、都道府県と市町村の教育委員会の事務局に社会教育主事を置くと定めている(第9条の2)。社会教育主事の職務は、社会教育を行う者に専門的技術的な助言と指導を与えることであり、条文はそのあとに「ただし、命令及び監督をしてはならない」と続ける。学校が地域住民その他の関係者の協力を得て教育活動を行う場合には、求めに応じて必要な助言を行うこともできる。指示する役ではなく、支える役として書かれている。

この構えがそのまま、地域の人が学びに関わるときの立ち位置を決めている。地域の大人が学校運営そのものに加わる仕組みは学校運営協議会として別に整えられており、その枠組みは

地域の大人が学校に入る仕組みで扱った。ここで見るのは、学校の外側から学びを支える人材の制度である。

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2020年4月に生まれた称号

社会教育主事になる資格を取るには、社会教育主事講習を修了する必要がある。講習は文部科学大臣の委嘱を受けた大学その他の教育機関が行う(社会教育法第9条の5)。問題は、この講習を受けても自治体の職として採用されない限り、学んだ内容が外から見えないままだったことだ。

そこで社会教育主事講習等規程が改正された。平成30年2月28日に公布され、令和2年4月1日に施行された改正省令で、講習の修了証書を授与された者は「社会教育士(講習)」、養成課程で所定の科目の単位を全て修得した者は「社会教育士(養成課程)」と称することができるようになった。行政の職に就かなくても、学習の成果が社会のなかで通用する名前を持つという設計である。

文部科学省が示している期待される役割は幅広い。NPOや企業等の多様な主体と連携・協働して、社会教育施設の活動にとどまらず、環境や福祉、まちづくりといった分野の学習活動の支援を通じて、人づくりや地域づくりに携わること。そして地域の実情をふまえ、社会教育士と社会教育主事が連携・協働することが期待されるとされている。行政の中核に社会教育主事がいて、その周りに社会教育士が広がる形が想定されている。

5年で9,693人という数

称号が始まってからの付与数は、文部科学省が年度別に公表している。令和2年度の706人から令和6年度の2,646人まで、毎年の付与数は増え続けており、5年間の合計は9,693人である。

年度 主事講習 養成課程 合計
令和2年度 492人 214人 706人
令和3年度 1,414人 336人 1,750人
令和4年度 1,532人 538人 2,070人
令和5年度 1,382人 1,139人 2,521人
令和6年度 1,540人 1,106人 2,646人
5年の計 6,360人 3,333人 9,693人

内訳を見ると動きがはっきりする。主事講習の経路は令和3年度以降おおむね1,400人から1,550人のあいだで安定しているのに対し、大学の養成課程の経路は令和4年度の538人から令和5年度の1,139人へ2倍以上に伸びた。学生のうちに単位を積んでこの称号を得る道が、ここ数年で急に太くなったということである。文部科学省の整理も、称号の創設を契機に社会教育主事講習の受講者数が増え、受講者の所属も多様化したと記している。

受け皿の側はどれだけ広がっているのか

称号を持つ人が増えても、活動する場がなければ意味がない。場の側の数字は、文部科学省が毎年行っている全国調査に出ている。令和7年5月1日現在の結果である。

学校運営協議会を置く公立学校は22,009校で、全体の64.9%。前年から1,856校、6.2ポイント増えた。導入している自治体は1,523で84.1%にあたる。地域学校協働本部が整備されている公立学校は22,693校(66.9%)、本部の数は14,044で611増えた。両方が整備されている学校は17,481校(51.6%)で、小・中・義務教育学校に限れば16,490校(60.6%)に届いている。

調整役の人数も伸びている。地域学校協働活動推進員等の配置人数は35,246人で、前年から633人増えた。そのうち15,174人は学校運営協議会の委員でもあり、こちらは1,591人増である。1年前の34,613人という数字については地域と学校をつなぐ34,613人で内訳を見ている。推進員等は、活動を実施するにあたって企画・提案や関係者との調整を担うコーディネート役として定義されている。

入り方は採用ではなく委嘱である

では、どうやってその役に就くのか。社会教育法第9条の7が答えを書いている。教育委員会は、地域学校協働活動の円滑かつ効果的な実施を図るため、社会的信望があり、活動の推進に熱意と識見を有する者のうちから、地域学校協働活動推進員を委嘱することができる、という条文である。

採用でも任用でもなく「委嘱」であることが、この役の性格を決めている。常勤の職員になるわけではないので、本業を持ったまま引き受けることが前提になりうる。推進員の仕事は、活動に関する事項について教育委員会の施策に協力し、地域住民等と学校との間の情報の共有を図るとともに、活動を行う地域住民等に対する助言その他の援助を行うことと定められている。謝金や報酬の水準は自治体ごとに決まるため、募集の条件は委嘱する教育委員会に当たるしかない。

制度そのものも動いている。令和7年11月17日の社会教育人材部会のワーキング・グループでは、現在の社会教育主事講習が行政の専門職の育成を前提としたカリキュラムになっているため、社会教育士を目指す新たな受講者層に合っていないという課題が示された。社会教育士として地域の学びを支えるための学習内容を土台に置き、その上に社会教育主事としての内容を重ねる2階建てのカリキュラムへ再構築する案が検討されている。受講資格の扱いも論点に挙がっており、入口の条件はこれから変わる可能性がある。学校の外で学びに関わる道筋は教育ボランティアの入り口にも整理があり、無償の関わりから制度上の役まで段差があることが分かる。

よくある質問

社会教育士は国家資格なのでしょうか。資格ではなく称号である。社会教育主事講習等規程にもとづき、講習の修了者または養成課程で所定の単位を修得した者が「社会教育士」と称することができるという形で定められている。名乗ることができる根拠が省令にあるという点が、民間の認定とは違う。

大学生のうちに取れますか。養成課程の経路は大学で所定の科目の単位を修得する形なので、在学中に要件を満たすことはありうる。実際に養成課程からの付与数は令和4年度の538人から令和6年度の1,106人へ増えている。開講している大学は限られるため、自分の大学に該当科目があるかを先に確かめる必要がある。

称号があれば地域学校協働活動推進員になれるのでしょうか。条文は社会的信望と、活動の推進に対する熱意と識見を要件にしており、称号の保有を条件にしていない。逆に言えば、称号がなくても委嘱される余地がある。称号は委嘱の必須条件ではなく、教育委員会に対して学習の裏付けを示す材料と考えるのが実際に近い。

本業を持ちながら関わることはできますか。推進員は委嘱という形の役なので、常勤の職に就く必要はない。ただし活動は学校の年間の流れに合わせて動くため、学期中の平日に時間を割けるかどうかが実務上の分かれ目になる。地域に軸足を置いた働き方の選び方はFLASPOでも扱っている。

出典:文部科学省「令和7年度 コミュニティ・スクール及び地域学校協働活動実施状況調査」https://manabi-mirai.mext.go.jp/upload/2025_chousa_point.pdf、同「『社会教育士』の称号付与(趣旨及び役割等)」(令和7年11月17日 総合教育政策局地域学習推進課)https://www.mext.go.jp/content/20251117-mxt_chisui02-000045861_2.pdf、社会教育法(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000207、同「社会教育主事講習」https://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/gakugei/syuji/mext_00004.html


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