役所のデジタル化には、決める席が置かれている
自治体のデジタル化の話は、システムの名前や予算額で語られることが多い。ところが総務省が毎年数えているのは、まず人の配置である。誰がその自治体の情報化の責任を負うのか、その席が埋まっているかを調べている。
席にはいくつか種類がある。情報化統括責任者であるCIO、それを補佐するCIO補佐官等、情報セキュリティの責任者であるCISOの三つが基本の枠で、そのほかに外部のデジタル人材を任命する枠が別に数えられている。令和7年4月1日現在の調査では、CIOを任命しているのが都道府県42団体(89.4%)、市区町村1,253団体(72.0%)。CISOは都道府県46団体(97.9%)、市区町村1,657団体(95.2%)で、こちらはほぼ行き渡っている。
全庁的・横断的にDXを進める体制については、都道府県が47団体すべてで構築済み、市区町村は1,256団体で72.1%である。推進本部や連絡会議の設置など、各部局が連携して進める体制を指す定義になっている。看板と責任者はおおむね立っていると言ってよい。
補佐官の席は、半分以上が空いている
崩れているのは補佐の側である。CIO補佐官等を任命しているのは都道府県27団体で57.4%、市区町村762団体で43.8%。言い換えると、都道府県では20団体、市区町村では979団体が任命していない。全国1,741市区町村のうち過半の56.2%で、補佐の席が空いたままということになる。
| 役割 | 都道府県(47団体) | 市区町村(1,741団体) |
|---|---|---|
| CIO(情報化統括責任者) | 42団体(89.4%) | 1,253団体(72.0%) |
| CIO補佐官等 | 27団体(57.4%) | 762団体(43.8%) |
| CISO(情報セキュリティ責任者) | 46団体(97.9%) | 1,657団体(95.2%) |
| 上記3つ以外の外部デジタル人材 | 37団体(78.7%) | 370団体(21.3%) |
| 全庁的・横断的な推進体制 | 47団体(100%) | 1,256団体(72.1%) |
表を縦に見ると、都道府県と市区町村の差が一番開くのはCIO補佐官等以外の外部デジタル人材の欄である。都道府県は78.7%が任命しているのに、市区町村は21.3%にとどまる。CISOでは差が2.7ポイントしかないことと並べると、責任者を置く話は小さな自治体でも進むが、外から人を迎える話は規模の壁に当たっていることが見える。
1,086人のうち363人が外から来ている
では、席に座っているのは誰か。調査は人数も数えている。CIO補佐官等として任命されている人数は、都道府県が72人、市区町村が1,014人で、合計1,086人である。そのうち外部デジタル人材の活用人数は都道府県26人、市区町村337人の計363人。全体の3分の1ほどが外から来ている。
団体の数で見ると割合はまた違う。CIO補佐官等を任命している都道府県27団体のうち19団体(70.4%)が外部デジタル人材を活用しているのに対し、市区町村は762団体のうち266団体(34.9%)である。都道府県では補佐官の席を外部で埋めるのが標準に近く、市区町村では3団体に1団体という水準にとどまる。
ここに余地がある。市区町村で補佐官を任命している762団体のうち496団体は、外部の人を使わずに内部の職員だけで補佐の役を回している。さらに979団体は席そのものが空いている。地域の仕事を副業で請ける動きは全体では相当な規模になっていて、その輪郭は地域の副業は250万人、制度は299名で見たとおりだが、自治体のデジタル分野は制度側の席が先に用意されている分野だと言える。
「任用」でなくても活用に数えられる
この調査でいう外部デジタル人材の活用には、細かいが重要な注記が付いている。外部デジタル人材の知見を活用することを目的として任用等を行うことをいい、活用の形式は問わないという定義である。
問わない形式として挙げられているのは三つ。常勤か非常勤かの別、任用された者か業務委託による者かの別、そして任期の有無である。つまり週に数時間だけ関わる非常勤でも、会社として受ける業務委託でも、半年だけの任期でも、この363人のなかに入りうる。ただし地域情報化アドバイザーの活用のように都度アドバイスを受ける形は除くと明記されている。継続的に関わることが前提になっている。
なお同じ調査のCIOとCISOの項目では、外部デジタル人材の「任用」という言い方が使われ、こちらは常勤職員または非常勤職員として任用することを指し、外部への業務委託や委嘱は含まないと定義されている。補佐官等の欄だけが広い「活用」の定義を取っている。言葉の幅が項目ごとに違うので、数字を比べるときは定義を揃えてから見る必要がある。
制度の側が毎年動き続けている
席が増えている背景には、国の計画の更新がある。自治体デジタルトランスフォーメーション推進計画は令和2年12月の策定から改定を重ね、令和6年4月に3.0版、令和7年3月に4.0版、令和7年12月に5.0版となった。1年のうちに版が上がる速さで、現場が追う前提が年単位で変わっていく。
手引きの類も同じ速さで出る。令和7年5月に自治体フロントヤード改革推進手順書の1.0版が策定され、同年6月には自治体DX推進参考事例集が3.0版、地域社会のデジタル化に係る参考事例集が4.0版に改定された。情報セキュリティポリシーに関するガイドラインと情報セキュリティ監査に関するガイドラインも令和7年3月に一部改定されている。
更新のたびに読み直し、自分の自治体の計画に落とす作業が発生する。人口規模の小さい自治体でこれを内部の職員だけで抱えるのは現実的でなく、だからこそ補佐の席が制度として置かれている。外部人材の募集がどこに出るかという問いには、公的なマッチングの窓口を追った副業のマッチングはどこで起きているかが手がかりになる。関わり方の全体像はFLASPOでも扱っている。
よくある質問
CIO補佐官は常勤でなければ務まらないのでしょうか。調査の定義では、常勤か非常勤かを問わず、業務委託による関わりも外部デジタル人材の活用に数えられている。実際の勤務条件は任命する自治体が決めるため一律には言えないが、制度上は非常勤や委託の形が排除されていない。
どんな経歴が求められるのでしょうか。公表されている調査は人数と団体数を数えたもので、要件までは示していない。ただし除外されている形式が都度のアドバイスであることから、継続して庁内の検討に関わることが前提になっていると読める。情報システムの調達や標準化、セキュリティの実務に触れた経験が接点になりやすい。
席が空いている979団体に、こちらから提案してよいのでしょうか。任命は各自治体の判断なので、募集が出ていない自治体に直接働きかけても制度上の入口にはならない。公募や人材バンクを経由するのが通常の経路である。契約条件の確かめ方については
副業で地域の仕事を請ける人に付いた法律が参考になる。
この数字はいつ時点のものでしょうか。令和7年4月1日現在の状況を調べたもので、公表は令和8年10月5日である。調査から公表までに1年半近くあるため、足元の任命状況はこれより進んでいる可能性がある。経年の比較をするときは、各年度版の調査時点を揃えて読むのが安全である。
出典:総務省「自治体DX・情報化推進概要(令和7年度地方公共団体における行政情報化の推進状況調査の取りまとめ結果)」令和7年4月1日現在https://www.soumu.go.jp/main_content/001097739.pdf、掲載ページhttps://www.soumu.go.jp/denshijiti/060213_02.html
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