関係人口の支援制度は特別交付税でできている|措置率0.5と上限500万円

「関係人口の支援制度」を探すと行き止まりに当たる

地域と関わりたい学生が「関係人口 支援制度」と打ち込むと、画面に並ぶのは移住支援金のような個人向けの給付ばかりである。そして肝心の関係人口そのものには、個人が申請して受け取れる枠がほとんど見つからない。制度が無いわけではなく、お金の向かう先が違うからだ。

国が用意しているのは、自治体が使った経費を後から交付税で埋める形である。令和7年4月2日、総務省地域力創造グループの地域政策課長と地域自立応援課長が連名で「地方自治体が実施する二地域居住・関係人口施策の推進について」という通知を出した。文書番号は総行政第71号・総行応第133号で、本文はPDFで公開されている。ここに、二地域居住と関係人口の施策に要する経費へ特別交付税措置を講じることが書かれている。適用は令和7年度の特別交付税の算定からで、対象団体は都道府県と市町村である。

つまり関係人口の受け皿は自治体が作り、その費用の一部を国が交付税として見る。学生が参加する地域の相談会や体験ツアー、ファンクラブの運営費は、この裏側につながっている可能性が高い。ただしこの通知は地方自治法第245条の4第1項に基づく「技術的助言」という位置づけで、どこまで取り組むかは自治体の自主的な判断に委ねられている。同じ国の措置があっても、町によって見える形がまったく違うのはそのためである。

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対象になる事業は5つの区分に切られている

通知は、措置の対象となる地方単独事業を5つに分けて並べている。どれも「当該地域への二地域居住・関係人口を推進するために実施される」ことが条件で、具体的な中身は地域の実情に応じて自治体が決める。

区分 事業の名前 通知が挙げる例
① 希望者等に対する情報発信 相談会・セミナーの開催、関連イベントへの相談ブース出展、自治体ホームページや東京事務所での発信、プロモーション動画の制作、登録システムの構築・維持
② 相談窓口の設置 地域内と都市部など地域外の双方に窓口を置く
③ きっかけづくり 体験ツアー、地域留学のプログラムづくり、デュアルスクールや保育園留学、移住体験住宅・サテライトオフィス・コワーキングスペース・ワーケーション施設の整備、地域住民との交流機会、地域のファンクラブの設置
④ コーディネーターによる支援 二地域居住コーディネーターの配置、地域留学を支援するコーディネーターの配置
⑤ 受入環境の整備 就職や兼業・副業の支援、空き家バンクの運営、住宅改修への助成

学生に直接かかる線引きが③と④に隠れている。「地域留学」は地域外からの学生の受入れを主たる目的とするものに限られ、学校の魅力化を主たる目的とするものは外される。同じ名前の取り組みでも、誰を外から呼ぶために作られたかで扱いが分かれるということである。⑤には「交通費への支援等の現金給付を除く」という括弧書きが付いている。参加者の交通費を町が肩代わりする形は、この措置では見てもらえない。

お金の出方は措置率0.5と二段の上限で決まる

では、いくら戻るのか。通知は対象経費を二通りに分けて書いている。①②③⑤に要する経費は措置率0.5で、ただし自治体の財政力に応じた補正が講じられる。④のコーディネーターは別建てで、報償費等について専らその業務に従事する者は1人当たり500万円を上限、他の主たる業務と兼務する場合は1人当たり40万円を上限とする。

注意したいのは、措置率0.5が「半分が現金で振り込まれる」という意味ではないことだ。特別交付税の算定に乗る額を出すための係数であり、そこに財政力補正がかかる。財政力の強い団体と弱い団体で取り分が変わるので、同じ体験ツアーを同じ金額で実施しても、町の手元に残る負担は一致しない。隣町の事業費をそのまま自分の町に当てはめても計算が合わないのは、この補正が挟まるからである。

専任500万円と兼務40万円という差も大きい。12.5倍の開きがあり、コーディネーターを置く本気度がそのまま金額差になっている。関係人口の窓口に専任の担当者がいる町といない町の違いは、人柄や熱意より先に、この枠をどちらで取ったかという事務の選択に表れていることが多い。

移住・定住の特別交付税とほとんど同じ形をしている

この措置を初めて読むと、既視感がある。総務省地域自立応援課が公開している資料によると、移住・定住対策の特別交付税措置は情報発信・移住体験・住居と就職支援・定住と定着に向けた支援の4区分で、いずれも措置率0.5に財政力補正、移住コーディネーターは1人当たり500万円を上限、兼任の場合は40万円を上限としている。数字がきれいに揃っているのである。

では何が分かれ目になるのか。通知は「主たる目的」で振り分けると書いている。関係人口施策を主たる目的とする事業なら関係人口側の措置、移住・定住対策を主たる目的とする事業なら移住・定住施策に係る措置(同じ日付の総行応第134号)として算定する。観光や産業振興を主たる目的とする複合的な事業や一般的な地域活性化事業と併せて実施する場合は、関係人口の推進を目的とする経費に限って対象となる。

同じ資料には、東京駅八重洲口に置かれた「移住・交流情報ガーデン」の予算も載っている。平成27年3月28日の開設で、所在地は東京都中央区京橋1-1-6。令和8年度の当初予算額案は1.0億円、令和7年度も1.0億円である。関係人口を増やすための窓口が都市側にも置かれていることは、地方の役場だけを見ていると見落としやすい。関係人口に取り組む自治体が1,436団体にのぼる一方で人員の不足が最大の壁になっているという調査結果とあわせて読むと、国の側が窓口と交付税の両方で下支えしようとしている構図が見えてくる。

起債との境目を知らないと二重に数えてしまう

通知の後半は、ほかの財源との切り分けに紙幅を割いている。ここを読まずに事業費を積むと、同じ経費を二度カウントすることになる。

まず登録システムである。関係人口を登録するシステムを自治体が整備する場合、デジタル活用推進事業債を使える。その対象になる経費は特別交付税措置からは外れ、債の対象にならない部分だけが①の情報発信として見られる。次に施設である。自治体が実施主体となって移住体験住宅やサテライトオフィス、コワーキングスペース、ワーケーション施設を整備する場合は地域活性化事業債が使えるが、その対象経費は特別交付税措置の対象とならない。民間事業者が実施主体になる場合の補助は③に含まれるので、誰が建てるかで財源が入れ替わる。どちらの場合も新築は対象外で、見ているのは既にある建物の改修である。

人の兼務にも規定がある。地域おこし協力隊員や集落支援員が二地域居住コーディネーターを兼ねることは差し支えないが、その場合の支援措置はいずれかを選択的に適用する。協力隊の枠とコーディネーターの枠を重ねて取ることはできない。地域に外から人を入れる仕組みは、地域おこし企業人に出る国の金が補助金ではなく610万円の特別交付税という形をとっているように、名前が違っても財源の性質が似ていることが多い。似ているからこそ、重ねられるかどうかの確認が要る。

よくある質問

個人で申請して受け取れるのか。受け取れない。通知が定める対象団体は都道府県と市町村だけで、関係人口である本人が窓口に行って請求する仕組みではない。個人に届くのは、自治体が設計した事業の参加費が安いとか、窓口が無料で相談に乗ってくれるといった形になる。

学生団体やゼミが事業の受け手になれるのか。通知の別添は、対象経費の例として「各種コーディネートを実施するNPO法人等に対する委託費」を挙げている。法人格のある団体が委託先になる道は書かれている。任意団体のままで直接受けられるかは自治体の契約ルール次第なので、関心のある町の担当課に当たるのが早い。学生の側から地域に関わる入口を探すなら、FLASPOのように学生と地域をつなぐ場を経由して、受け入れ側の事情を先に知っておくと話が早く進む。

いつからの話なのか。通知は令和7年度の特別交付税の算定から適用すると明記している。令和7年4月2日付で都道府県の担当部局長に宛てられ、県内市町村への周知も求めている。

自分の関わっている町が使っているかを確かめる方法はあるか。交付税の算定内訳は外から見えないが、通知が挙げる事業の例は見える。地域外にも相談窓口があるか、体験ツアーや地域留学のプログラムが用意されているか、ファンクラブや登録制度があるか、専任のコーディネーターがいるか。この4点が揃っている町は、措置を意識して組み立てている可能性が高い。モデル事業に161件の応募があり28団体が選ばれた経緯を見ると、手を挙げる町と挙げない町の差は制度の有無ではなく、動かす人がいるかどうかに寄っている。


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