1,788団体に聞いて、1,738団体が答えた
関係人口という言葉が自治体の現場でどこまで動いているかを知りたいとき、個別の成功事例よりも全数調査のほうが輪郭をつかみやすい。内閣府は令和7年8月15日から11月17日まで、全都道府県と全市区町村の1,788団体を対象に「関係人口の創出・拡大に向けた取組状況調査」を実施した。回答は1,738団体から集まり、有効回収率は97.2%である。総務省の一斉通知・調査システムを使った調査なので、ほぼ全数の輪郭が出ていると見ていい。
このうち令和6年度に関係人口の創出・拡大に関する取組を実施したと答えたのは1,436団体で、前年から29団体増えた。実施しなかったのは302団体、前年から16団体減っている。無回答が50団体あった。全国の自治体の8割強が何らかの形で手を付けている状態で、残りの2割弱は手を付けていないという分かれ方になる。
ここで押さえておきたいのは、この調査が「取組があったか」を聞いたものであって、成果の大きさを測ったものではないという点である。年に1回のイベントを開いた団体も、専任の窓口を置いて通年で動かした団体も、同じ1として数えられる。数字の意味を読み違えないために、調査の種類ごとの性格は関係人口の調査データは三つあるで整理されている。
総合戦略に書いてある自治体が1,328
取組の有無より前に、計画の文面にどう位置づけられているかという層がある。令和7年3月31日時点で、地方版総合戦略に「関係人口」に関する記載がある団体は1,328で、前年から37増えた。文言は使っていないが趣旨が同じ記載がある団体が187で24増、記載していない団体が213で39減、総合戦略そのものが策定されていない団体が10で9減という並びである。
計画に書くことと実際に動かすことは重なるが一致しない。令和6年度に取組を実施した1,436団体のうち、総合戦略に記載がある団体は1,175だった。記載があるのは1,328団体なので、書いてあるけれど実施していない団体が150ほど残る。逆に、記載がないまま取組を進めている団体も260ほど存在する計算になる。
記載の有無が効いてくるのは予算の場面である。総合戦略に書かれていれば予算要求の根拠になり、交付金の申請にも紐づけやすい。書かれていない取組は担当者の裁量で続いているということであり、人が替わると消えやすい。213団体が記載なしのまま残っているという数字は、関係人口施策の定着度の下限として読める。
入口はふるさと納税から作られている
実施した1,436団体が何をやったかは複数回答で集計されている。上位に並ぶのは、すでに人の名簿が手元にある仕組みを関係人口へつなぎ直す取組だった。
| 令和6年度に実施した具体的な取組 | 団体数 |
|---|---|
| 個人版ふるさと納税を行った人の関係人口化に向けた取組 | 650団体 |
| 地域から都市部住民等への関係人口化に向けた取組 | 614団体 |
| 都市部で開催するつながりづくりのイベントや相談会等 | 608団体 |
| 企業版ふるさと納税(人材派遣型を含む)を通じた創出・拡大 | 470団体 |
| 不特定の関係人口宛の情報発信や地域活動の募集・コーディネート | 400団体 |
| 関係人口の登録制度 | 389団体 |
| テレワーク・ワーケーションをきっかけとした取組 | 323団体 |
| 高校生の地域留学 | 105団体 |
| 都市部住民等の地域での副業・兼業の推進 | 103団体 |
最多の650団体が選んだのは、ふるさと納税の寄附者を関係人口に育てる取組である。企業版ふるさと納税を挙げた470団体を合わせると、寄附という接点を起点にしている自治体が多数派であることが分かる。寄附者の住所と連絡先は自治体が既に持っているので、新しく人を探すより声をかけやすい。
一方で、関わりを深める側の取組は数が少ない。関係人口が関わる地域の特徴や課題を明確にして受入体制を整えた団体が214、中間支援組織や関係案内人の育成・支援を行った団体が178、多地域・二地域居住者や継続的な来訪者の受け入れ環境を整備した団体が142である。登録制度の運用実態は関係人口のデジタル窓口は誰が回すのかが内側から扱っている。
対象にしているのは「関心層」で、担い手ではない
どの層の関わり方を対象にした取組かという問いにも、はっきりした偏りが出ている。実際に地域を訪問はしないが地域産品の購入やふるさと納税で経済的に貢献する「関心層」を対象としたのが1,123団体、年に数回程度継続的に訪問して観光や体験活動を楽しむ「交流・観光層」が1,100団体。ここまでが大きな塊である。
これに対して、副業やボランティア活動などで定期的に地域を訪問し担い手として活動する「高関与層」を対象にした団体は379にとどまる。地域に居所を持ち行政サービスや公共施設も一定程度利用する「二地域居住層」は218だった。関心層を対象とする団体の3分の1、5分の1という水準である。
担い手が足りないから外の人に関わってほしいという話の筋からすると、この配分は逆を向いている。手間がかからず数を伸ばしやすい層に施策が集まり、人手として機能する層には届いていない。KPIの設定内容を見ると理由が透けて見える。自由記述から分類された主なものは、ふるさと納税の件数や金額、観光入込客数、イベント参加人数、SNSのフォロワー数といった項目で、いずれも関心層と交流・観光層で動く数字である。測れるものを目標にすると、測れる層に施策が寄っていく。
止めているのは人と金だった
施策を進めるうえでの課題を1,726団体が答えている。最も多いのは自治体内の人員が不足しているという回答で1,176団体、次が予算不足の771団体。続いて創出・拡大を担う地域主体が少ないか存在しないが689団体、関係人口と地域をつなぐ中間支援組織が見つからないが512団体、何から始めればよいのか分からないが347団体だった。地域住民の理解が得られないは81団体にとどまり、特になしが142団体である。
住民の反対はほとんど壁になっていない。壁は役所の内側にある。人員不足を挙げた1,176という数は、回答した団体の7割近くに当たる。関係人口の施策は、相手が住民ではないため窓口の対応が定型化しにくく、イベントの企画から参加者との継続的なやり取りまで担当者の時間を食う。兼務の職員が1人で回していれば、関心層向けの一斉発信までが限界になる。
財源の側は1,724団体が答えており、地方公共団体の単独予算が1,272団体で最多だった。内閣府の地方創生に関する交付金が478団体、所属する都道府県等の予算が415団体、その他国の補助金やモデル事業が238団体、民間企業・団体等が111団体。そして予算措置はないと答えた団体が249ある。つまり取組を実施した団体のうち1割以上が、専用の金を持たずに通常業務のなかで動かしている。学生が地域のプロジェクトに関わるとき、受け入れ側がこの状態にあることは事前に知っておいて損がない。FLASPOのように大学と地域をつなぐ形が求められるのは、自治体側に人と金の余裕がないという前提から出てきている。高校生の地域留学を実施した105団体、都市部住民等の副業・兼業を推進した103団体という数字は、若い層を担い手として迎える入口がまだ薄いことも示している。
よくある質問
1,436団体という数は多いのでしょうか。回答した1,738団体の8割強に当たります。ただし取組の規模は問われていないため、年1回のイベントも通年の窓口運営も同じ1として数えられている点に注意が必要です。
自分の住む自治体が取り組んでいるかを調べられますか。調査結果には都道府県内の団体数に占める割合が示されていますが、団体名の一覧ではありません。個別に知りたい場合は地方版総合戦略の本文で「関係人口」を検索するのが早い方法です。出典は内閣府の関係人口の創出・拡大に掲載されています。
予算措置がない自治体に関わっても意味はありますか。意味がないわけではありませんが、交通費や宿泊費が自己負担になる前提で話が進むことがあります。募集の段階で費用の扱いを確かめておくと、後から条件が変わる事態を避けられます。
高関与層を増やしたい自治体はどこを探せばよいですか。受入体制の整備を行った214団体や、中間支援組織の育成に取り組んだ178団体が該当しやすい層です。中間支援組織が置かれているかどうかが、担い手として関われるかの分かれ目になります。
この調査は毎年行われていますか。令和5年度、令和6年度、令和7年度の結果が内閣府のページに並んでおり、前年比が併記されています。単年の数字だけでなく増減を見ることで、施策が定着に向かっているかを判断できます。
アイデアコンテストプラットフォーム「FLASPO」

アイデア1つで、地域や企業とつながれる。
FLASPOは、全国の自治体・企業が開催する若者向けアイデアコンテストのプラットフォームです。
地域や企業が抱える課題に対して、あなたのアイデアで解決策を提案できます。
賞金やユニークな地域体験が獲得できるコンテストも多数。誰でも参加無料・オンライン完結で挑戦できます。
