地方紙と地方局に入る枠|89社3万1,312人と放送536社の内訳

受けられる会社がそもそも何社あるのか

地元に戻って働きたい、できれば地域のことを書く仕事がしたい。そう考えて就職情報サイトを開くと、県内の新聞社は1社か2社しか出てこない。放送局を足しても数は増えず、合同説明会のブースもすぐに回り終わってしまう。採用の情報が少ないのは偶然ではなく、母体の数がそれだけだからである。

日本新聞協会の調べでは、協会に加盟する新聞社と通信社は2026年4月時点で89社、従業員の総数は31,312人である(日本新聞協会「新聞・通信社従業員総数」)。一方で放送の側は社数が多い。総務省の令和8年版情報通信白書によると、2025年度末の地上系民間基幹放送事業者は536社で、うち342社はコミュニティ放送を行う事業者である(総務省「令和8年版情報通信白書 事業者数」)。

同じ「地方メディア」と呼ばれる業界でも、89社と536社では就職活動の組み立てが変わる。新聞社は1社あたりの従業員が多い代わりに社数が限られ、放送は社数が多い代わりに1社あたりの規模が小さい。まず自分が受けようとしているのがどちらの形かを分けて数えたい。

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24年で社数と従業員はどう動いたか

新聞協会の統計は2002年ぶんまでさかのぼれる。各年4月の時点で、加盟する全新聞社と通信社を集計した数字である。

年(4月) 社数 従業員総数
2002年 106社 57,105人
2010年 100社 47,295人
2018年 98社 41,509人
2022年 92社 35,700人
2025年 90社 32,262人
2026年 89社 31,312人

24年で社数は17社減り、従業員は25,793人減った。割合にすると従業員は45パーセント減で、社数の減り方(16パーセント)よりはるかに速い。つまり会社が消えたというより、残った会社が人を減らしてきた。直近1年でも950人減っており、縮小が止まった年はまだ来ていない。業界全体の細り方は記者14,345人と0.42部で確かめた記事で部数の側からも見ている。

この数字は採用枠の見通しに直結する。従業員が毎年1,000人近く減る業界では、定年退職者の数だけ新卒を採るとは限らない。募集が隔年になる社や、記者職だけを数名採る社が出てくる。募集の有無を前年の実績で判断せず、各社の採用ページを年内に二度見るくらいの構えがいる。

社内のどこに人がいるのか

新聞社に入ると記者になる、と思われがちだが、同じ協会の部門別集計を見ると配置は分かれている。2026年4月の回答85社・31,124人の内訳は、編集部門が16,089人で51.7パーセント、営業部門が4,622人で14.9パーセント、統括・管理部門が2,937人で9.4パーセントである。制作・印刷・発送部門は2,120人(6.8パーセント)、電子メディア部門は1,675人(5.4パーセント)、出版・事業部門は1,143人(3.7パーセント)だった(日本新聞協会「部門別従業員数の推移」)。

編集が半分を占めるという構成は長く動いていない。2013年は94社・42,720人のうち編集が21,941人で51.4パーセント、2014年は92社・42,282人のうち21,596人で51.1パーセントだった。人数が1万人以上減っても比率はほぼ同じである。電子メディア部門は2018年の3.4パーセント(1,408人)から2026年の5.4パーセント(1,675人)へ上がったが、増えたのは267人にとどまる。部門が置き換わったというより、全体が縮むなかで小さな部門が少しだけ伸びた形である。

志望職種を選ぶときは、この比率を枠の大きさとして読むとよい。編集以外の希望なら、営業部門の4,622人という規模が現実的な上限になる。電子メディア部門を狙うなら、1,675人を全国89社で割れば1社あたり20人に届かないと見当がつく。この割り算は協会の集計には書かれていないが、公表されている二つの数字から自分で確かめられる。

放送の側は社数が多く、規模が小さい

放送産業全体の売上高は、2024年度が3兆6,042億円で前年度より0.6パーセント減った。内訳は地上系民間基幹放送事業者が2兆1,977億円、衛星系民間放送事業者が3,200億円、ケーブルテレビ事業者が4,740億円、NHKの経常事業収入が6,125億円である(総務省「令和8年版情報通信白書 放送市場の規模」)。

直近の収支はもう少し細かく分かれる。総務省が令和8年10月19日に公表した令和7年度の集計では、コミュニティ放送を除く地上基幹放送事業者は売上高が前年度比1.1パーセント増、営業損益が11.4パーセント増と、どちらも増えた。これに対しコミュニティ放送事業者は売上高が2.8パーセント増えたものの営業損益は減少している(総務省「令和7年度民間放送事業者の収支状況」)。

コミュニティ放送は市区町村を放送区域とする小さな局で、342社が全国に散っている。地元の情報を扱う現場に入りたいなら候補は多いが、増収でも利益が削れている状態では新卒を定期採用する体力は限られる。県域の放送局や新聞社の採用と同じ土俵で比べず、契約社員や業務委託を含めた関わり方まで視野に入れたほうが現実的である。地方での就職の入口そのものは地銀61行と競争率4.6倍で見た二つの入口と並べて考えると整理しやすい。

在学中に関われる枠は販売の側にある

学生のうちから業界に触れる入口として、新聞販売所という選択肢がある。協会販売委員会の調べでは、2025年10月時点の販売所従業員は195,551人で、そのうち大学生や専門学校生などの学生は4,562人、販売所の数は12,278店である(日本新聞協会「新聞販売所従業員数、販売所数の推移」)。2001年は従業員464,827人・21,864店だったので、こちらも20年余りで半分以下になった。

販売所の仕事は配達や集金が中心で、記者職の選考に直結するものではない。それでも地域で誰が何を読んでいるかを肌で知る機会にはなる。採用の本番で聞かれる「この地域で何が足りないか」に自分の観察で答えられるかどうかは、こうした現場を通ったかで変わる。学生のまま地域の事業者と組んで企画をつくる経路もあり、FLASPOのような窓口を使えば在学中から実務に触れられる。

合同説明会や面接会の場所は公的な窓口でも案内されている。公的窓口56か所と面接会の組み立てを先に押さえておくと、少ない社数のなかで接触の機会を取りこぼしにくい。

よくある質問

記者の採用枠は何人くらいですか

協会の統計は職種別の採用数を公表していないため、全国の枠を数字で示すことはできません。分かるのは編集部門に16,089人が在籍していることと、従業員全体が前年より950人減ったことです。各社の採用ページに載る募集人数を積み上げるほうが実態に近づきます。

新聞社と放送局はどちらが入りやすいですか

社数では放送が536社、新聞・通信が89社と差がありますが、放送の536社には342社のコミュニティ放送が含まれます。母体の数と1社あたりの規模が逆になっているため、受ける社数を増やしたいなら放送、1社あたりの採用規模を見たいなら新聞という読み方になります。

地方紙の経営は危ないのですか

協会の統計は従業員数と社数だけなので、個別の経営状態はこの資料からは判断できません。放送については総務省が毎年度の収支を公表しており、令和7年度はコミュニティ放送以外の地上基幹放送が増収増益でした。志望先の状態を見るなら、公表された決算や親会社の有価証券報告書を確かめるのが筋です。

電子メディア部門を志望するのは得ですか

2026年4月の人数は1,675人で、全体の5.4パーセントです。比率は2018年の3.4パーセントから上がっていますが、人数の増え方は8年で267人です。配属の希望が通るかは社ごとに違うので、採用時点で部門別の募集になっているかを確認してから出願先を決めてください。


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