一世帯あたり0.42部という地点から始まる
地域で活動していると、取材に来てもらえる場所が意外に限られていることに気づく。県庁所在地の支局は人が足りず、町の催しは紙面に載っても数行である。この手応えの背景には、はっきりした数量の変化がある。日本新聞協会の新聞の発行部数と世帯数の推移によると、2025年10月時点の総発行部数は2,486万8,122部だった。世帯数が5,895万5,700であるため、一世帯あたりの部数は0.42部になる。
内訳も押さえておきたい。一般紙が2,337万3,706部、スポーツ紙が149万4,416部である。朝刊と夕刊をセットで購読している分が337万5,969部、朝刊だけが2,114万5,804部、夕刊だけが34万6,349部となっている。協会の集計はセットを1部として数えるので、朝刊と夕刊をそれぞれ別に数えると2,824万4,091部になる。この数え方の違いは、資料を引き比べたときの食い違いの原因になりやすい。
0.42部という水準は、二世帯のうち一世帯には紙が届いていないことを意味する。地域の催しを紙面で知らせても、届く範囲が以前の想定とは別になっている。ただし、この一つの数字だけで地域メディアの力を測ると見立てを外す。
読む時間と、信じられている度合いは別の数字
読まれ方は総務省の調査で追える。2026年6月26日に公表された令和7年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書は、13歳から79歳の1,800人を対象に、2025年12月1日から7日までの一週間を日記式で記録している。ここで新聞の行為者率は、平日が21.3%、休日が18.8%だった。2020年の同じ調査では平日31.2%、休日28.2%である。5年で10ポイント近く落ちた。
時間の見え方には二通りある。全員を分母にした平日の新聞閲読時間は8.8分にすぎない。ところが読んだ人だけを分母にした行為者平均時間は41.1分で、こちらは2020年の41.9分からほとんど動いていない。読む人の数は減ったが、読む人の読み方は変わっていない、という形である。地域メディアの読者を「薄く広く」から「狭く深く」へ読み替える必要があるのは、この二つの数字の落差によく出ている。
信頼度はさらに別の顔を見せる。同じ調査で、全部または大部分信頼できると答えた割合は、新聞が58.8%で最も高く、テレビの57.9%が続き、インターネットは26.3%にとどまった。接触は減っても、書かれている内容の確かさに対する評価は落ちきっていない。
取材する側の人数が7千人近く減った
紙が届く範囲の縮小と並行して、取材する人の数も変わっている。新聞協会の新聞・通信社従業員数と記者数の推移では、2026年4月時点の記者数は1万4,345人である。ピークは2003年の2万1,311人だった。差は6,966人で、ほぼ7千人分の取材の手が消えたことになる。従業員総数も3万1,124人で、2002年の5万4,015人から4割以上減った。
この減り方は、地域の側の行動に直接はね返る。記者が一人で複数の市町村を受け持つ体制では、連絡を受けてから現場に行く余裕は限られる。資料が整っていて、日程と場所と写真の見通しがはっきりしている案件が先に通る。逆にいえば、準備の仕方で載る確率が動くということである。
減っているのは紙の側だけではない点にも触れておきたい。地域の情報を運ぶ経路には、地方紙に加えてケーブルテレビやコミュニティ放送、自治体の広報紙、商店会や学校の発信がある。どれも担い手の数で成り立っているので、紙の部数だけを見て地域の情報の総量を語ると、残っている経路を取りこぼす。町の催しを知らせたい相手が高齢者なら広報紙とケーブルテレビが効き、学生なら別の経路になる。どこに置くかを先に決めてから原稿を書くほうが手戻りが少ない。
若者は新聞を使っていないが、捨ててもいない
では10代と20代は地域メディアをどう見ているのか。調査は情報源としての重要度と、メディアとしての信頼度を別に聞いている。この二つを並べると、同じ世代の中で評価が割れていることがわかる。
| 区分 | 新聞の重要度 | 新聞の信頼度 | ネットの重要度 | ネットの信頼度 |
|---|---|---|---|---|
| 10代 | 23.6% | 47.1% | 87.1% | 33.6% |
| 20代 | 21.6% | 47.7% | 88.5% | 28.9% |
| 全年代 | 48.8% | 58.8% | 73.0% | 26.3% |
| 70代 | 77.4% | 72.4% | 39.4% | 19.2% |
10代が新聞を情報源として重要と答えた割合は23.6%、20代は21.6%で、どちらも2割台である。ところが信頼度は10代が47.1%、20代が47.7%あり、同じ世代のインターネットの33.6%と28.9%を上回っている。日常の情報はネットで取るが、確かさの評価では紙のほうが上に置かれている。使っていないことと、信用していないことは、この世代では一致していない。
この構図は、地域の話を若い世代に渡すときの経路設計に効く。入口はSNSや動画でよいが、根拠の提示先として地方紙や自治体の公表資料を置くと、受け取る側の納得の仕方が変わる。ネットの重要度が87.1%と高いのは接触の多さであって、信じられている度合いではない。
地域メディアに関わるときの入口と手順
学生が地域メディアに関わる形は、取材を受ける側と、書く側の二つに分かれる。前者であれば、記者が7千人近く減った前提で資料を用意する。日付と場所、関係者の名前と肩書き、使える写真、数字の出どころを一枚にまとめておくと、短い取材でも事実の誤りが減る。後者、つまり寄稿や紙面づくりに加わる場合は、署名の扱いと著作権の帰属を先に決めておきたい。学生が書いた記事を後からサイトや冊子に転載するとき、ここが曖昧だと動けなくなる。
数字を扱うときの作法も変わらない。部数や人数を引くなら、協会や官公庁が公表している一覧をそのまま引いて、調査時点を本文に書く。新聞協会の部数は毎年10月時点、従業員数は毎年4月時点の調査である。総務省の調査は年度ごとに対象の年齢層や標本数が変わるため、過去の報告書の数値と単純に並べると段差が出る。一次情報の在り処をたどる手順は総務省の関係人口ポータルの読み方に整理がある。
関わる先の探し方は、地域プロジェクト一般の入口と重なる。受け皿の種類と順番は学生が地域プロジェクトを始める順番にまとめてあり、書く力の側から入るならWebメディアで書く仕事の整理が参考になる。地域側の窓口を通して入る場合は、FLASPOのような受け付けの形を使うと、取材協力と寄稿のどちらを頼まれているのかが最初に文書で残る。
よくある質問
行為者率という言葉は何を指しているか。報告書の定義では、調査日1日当たりの、調査対象者のうちその情報行動を行った人の比率である。平日については調査日2日間の平均をとる。平均利用時間が全調査対象者を分母にするのに対し、行為者平均時間は行為者だけを分母にするため、同じ行動でも数字の大きさが変わる。どちらを引いているかを書かずに比べると、同じ調査から逆の結論が導ける。なお、アンケートで聞いている利用率は、自分が利用していると答えた割合であり、行為者率とは別の指標だと注記されている。
地方紙の部数は、都道府県ごとに知ることができるか。新聞協会は日刊紙の都道府県別発行部数と普及度を別に公表している。全国計の0.42部という水準は地域差を平均したものなので、特定の県の読まれ方を語るときはその一覧を見るほうが正確である。
若者向けなら紙を気にせずSNSだけでよいのではないか。接触だけを考えればそうなる。ただし調査では、10代と20代がインターネットに与えた信頼度は33.6%と28.9%で、新聞に与えた47.1%と47.7%より低い。知らせる段と、納得してもらう段で経路を分けるほうが筋が通る。
記者の数は今後も減り続けるのか。公表されているのは実績の推移だけで、将来の見通しは書かれていない。ピークの2003年から2026年までの傾向は一方向だが、数字から言えるのはここまでである。地域の側でできるのは、取材の手が限られている状況を前提に、資料と窓口を整えておくことに尽きる。紙面に載る形を待つだけでなく、自分たちの側に記録を残しておけば、後から誰かが調べに来たときの一次資料になる。
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