4年で通った土地が、5年目に消える
ゼミの調査や実習で同じ地域へ何度も通い、住民の名前を覚えたところで卒業が来る。就職先が別の県になれば、翌年から訪問は止まる。大学を経由した関わりはこの切れ方をしやすい。では、そうして関わっている人はどのくらいの規模でいるのか。
国土交通省は令和7年6月27日に地域との関わりについてのアンケートの結果を公表した。日常生活圏や通勤圏の外にある特定の地域と継続的に関わる人は、18歳以上の居住者約1億275万人のうち約2,263万人と推計されている。全体の2割強にあたる。
内訳は、実際にその地域へ足を運ぶ訪問系が約1,884万人で約18%、足を運ばない非訪問系が約379万人で約4%である。調査は令和5年9月から10月にインターネットで行われ、有効回答は118,963人だった。学生のゼミ活動は訪問系に数えられる側で、人数の多いほうに入っている。
関わりの種類は5つに分かれ、重さが違う
同じ訪問系でも中身は一様ではない。調査では訪問系を趣味・消費型、参加・交流型、直接寄与型、就労型のうち現地就労、就労型のうちテレワークに分けている。複数回答で最も多いのは趣味・消費型、次が参加・交流型、その次が直接寄与型という順である。地域の産業創出やまちおこしに参画する直接寄与型は、数としては上位ではない。
前回の調査と並べると、この層の薄さがはっきりする。令和3年3月17日に公表された前回の調査結果では、訪問系が約1,827万人で、三大都市圏の居住者では18.4%、その他地域の居住者では16.3%だった。このうち直接寄与型は三大都市圏で6.4%、その他地域で5.5%にとどまる。
大学のプロジェクトが置かれているのは、参加・交流型と直接寄与型のあいだである。授業として訪ねている段階は交流に近く、商品開発や調査の受託まで進むと寄与の側に入る。どちらにいるかで、卒業後に関係が残るかどうかが変わる。関わり方の型は大学生が地域活性化でできることでも整理している。
| 項目 | 令和3年3月公表 | 令和7年6月公表 |
|---|---|---|
| 調査時期 | 令和2年9月 | 令和5年9月〜10月 |
| 有効回答数 | 148,831人 | 118,963人 |
| 18歳以上の居住者 | 約1億615万人 | 約1億275万人 |
| 訪問系 | 約1,827万人(約2割弱) | 約1,884万人(約18%) |
| 非訪問系 | 公表なし | 約379万人(約4%) |
| 合計 | 公表なし | 約2,263万人(2割強) |
大学の側には、学部の形まで変える補助がある
学生が地域へ出る仕組みは、個々の教員の熱意だけで動いているわけではない。文部科学省の大学教育再生戦略推進費には地域活性化人材育成事業という枠があり、SPARCという略称で呼ばれている。地域社会のリソースを集め、個別大学の枠を超えた横断的な教育プログラムを作り、その成果をもとに学部等の再編まで目指す事業である。
規模は小さくない。令和4年度の選定結果によると、令和4年3月8日に各国公私立大学長宛てに公募が出され、5月23日から27日に9件の申請を受け付け、日本学術振興会に置かれた委員会の審査を経て6件が選ばれた。補助基準額は、学部等の再編を目指すタイプ①が年間200,000千円、高度な連携を目指すタイプ②が年間100,000千円である。
ここで押さえておきたいのは、選ばれた6件が単独の大学ではなく複数校と自治体の組み合わせで動く点である。岐阜大学が事業責任大学となった「ぎふ地域創発人材育成プログラム」のように、県内の他大学や自治体を巻き込んだ枠組みになる。学生から見れば、在籍する大学の科目表に現れる前に、こうした事業として採択されている場合がある。
受け入れ側にも、型の決まった事業があった
地域の側が学生や外部の人を受け入れる仕組みも、国の事業として走った時期がある。総務省の関係人口創出・拡大事業は、令和元年度に全国で44のモデル事業を展開した。成果報告会の案内によると、報告会は2020年2月17日と18日の2日間に分けて開かれ、関係深化型と関係創出型という型ごとに整理されていた。
型が分かれている理由は、受け入れ側の事情が違うからである。すでに縁のある人を深く関わらせる地域と、まったく縁のない人をこれから呼ぶ地域では、必要な仕掛けが別になる。大学のゼミが入りやすいのは後者のほうで、縁のない土地にいきなり外から人が入るため、最初の窓口を誰が持つかが決まっていないと続かない。
モデル事業そのものは年度で区切られているが、報告書は型別に公開されており、どんな受け皿を作ったかを後から読める。これから地域と組む側にとっては、同じ型の先行例を探す資料になる。世代ごとの入り口の違いはZ世代と関係人口はどこで接するかでも扱っている。
卒業後に残すために、在学中に決めておくこと
制度の話を学生の行動に落とすと、やることは三つに絞られる。ひとつめは、窓口を大学ではなく個人で持つこと。担当教員や事務局を経由した連絡しかない場合、卒業と同時に経路が消える。地域側の担当者と直接つながる形を在学中に作っておけば、所属が変わっても続けられる。
ふたつめは、記録を自分の側に残すこと。調査票や写真、集計したデータが研究室のサーバーにしかなければ、後から話を続ける材料がなくなる。みっつめは、訪問の頻度を落としたあとの形を先に決めることである。年に数回に減らすのか、オンラインでの関わりに切り替えるのかを言葉にしておくと、相手も予定を立てられる。
頻度の落としどころには目安がある。同じ調査では訪問系の年間訪問日数を調べており、1日以下が約20%、2日から7日が約49%、8日以上が約31%だった。最も多いのは年に2日から7日の層である。就労型の現地就労とテレワークでは8日以上が約半数を占め、ほかの類型より明らかに通う日数が多い。年に数回という形は、例外ではなく中心にある関わり方だと読める。
続かなくなる理由についても回答が出ている。関わりを持ちたいと思っている人が挙げた改善点は、仕事やプライベートでの時間的な余裕の確保が27.4%、移動や滞在に伴う金銭的な負担の軽減が26.7%、地域に行くための交通の利便性の改善が26.4%で、この三つが並ぶ。学生が就職して関わりを失うのは熱意の問題ではなく、時間と費用と足の三つが同時に変わるからである。
国交省の分類でいえば、これは直接寄与型にとどまり続けるための工夫ではなく、参加・交流型として関係を薄く長く保つ選択でもある。18%と4%という訪問系と非訪問系の差を見るかぎり、足を運ばない形で残っている人は少ない。だからこそ、切り替えの形を決めてある人のほうが珍しい。地域との関わりの作り方はFLASPOでも紹介している。
よくある質問
関係人口の人数は増えているのですか
訪問系だけを比べると約1,827万人から約1,884万人へ増えている。ただし調査時期も有効回答数も違い、18歳以上の居住者数そのものが約1億615万人から約1億275万人へ減っているため、単純な伸びとして読むのは適切でない。令和7年の公表では非訪問系を含めた合計が示されており、区分の立て方が変わった点にも注意したい。
SPARCに採択された大学の学生は何か変わりますか
この事業は個々の学生への支援ではなく、教育プログラムの再構築と学部等の再編を目指す枠である。横断的な科目や複数大学で履修できる仕組みとして現れるため、在籍する大学が参加しているかどうかは、科目の名前より事業の採択情報から確かめたほうが早い。
ゼミで関わった地域に卒業後も関わる方法はありますか
住所を移さずに関わる形は複数ある。国交省の分類では趣味・消費型、参加・交流型、直接寄与型、現地就労やテレワークによる就労型が挙げられている。在学中から直接の連絡経路と記録を自分の側に持っておけば、頻度を落としても参加・交流型として続けやすい。
これらの統計や事業の資料はどこで探せますか
関係人口の推計は国土交通省の報道発表に年ごとに載り、調査の対象や有効回答数も同じページに書かれている。SPARCは文部科学省の大学教育再生戦略推進費のページに公募要領と選定結果が並ぶ。総務省の関係人口創出・拡大事業は報道資料の一覧から年度別に辿れ、モデル事業の採択団体と成果報告書が型ごとに公開されている。
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