公務員試験の概要|申込8.6万人から合格2.4万人までの全体像

公務員試験の概要|申込8.6万人から合格2.4万人までの全体像

書店の公務員試験コーナーに並ぶ本の厚みを見て、どこから手をつけるか迷う人は多い。迷いの正体は科目の量ではなく、受ける試験がまだ決まっていないことにある。人事院が実施する国家公務員の試験は二〇種類以上あり、地方は団体ごとに別の試験が立っている。二〇二五年度の国家公務員採用試験では申込者が八万六九八八人、最終合格者が二万四二七六人だった。この数字の内側で、試験の種類ごとに倍率も科目も大きく違う。

実施する主体が二系統あり、試験は二〇種類を超える

公務員試験という一つの試験は存在しない。国家公務員の採用試験は人事院が実施し、総合職、一般職、専門職、経験者採用の四つの系統に分かれる。総合職には院卒者試験と大卒程度試験があり、大卒程度試験には教養区分が別に立つ。一般職は大卒程度試験、高卒者試験、社会人試験の三本。専門職は大学卒業程度で皇宮護衛官、刑務官、法務省専門職員、財務専門官、国税専門官、食品衛生監視員、労働基準監督官、航空管制官、海上保安官が並び、高校卒業程度でも税務職員や海上保安学校学生など八種類以上が用意されている。

地方の側は団体ごとに試験がある。地方公務員法第十七条の二は、人事委員会を置く地方公共団体では職員の採用を競争試験によるとし、置かない団体では競争試験または選考によると定めている。人事委員会は都道府県と指定都市に置かれるため、県庁や市役所の採用は委員会が実施する。小規模な市町村では任命権者が自ら試験を行う。

試験の目的は法律に書かれている。国家公務員法第四十五条は、採用試験の目的を、受験者が当該官職の属する職制上の段階の標準的な官職に係る標準職務遂行能力と当該官職についての適性を有するかどうかを判定することに置いている。学力そのものを測るのではなく、職に就く適性を筆記と面接で確かめる枠組みになっている。

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同じ国家公務員でも倍率は二倍から一四倍まで開く

人事院の二〇二五年度国家公務員採用試験実施状況は、試験の種類ごとに申込から最終合格までの人数を公表している。合計では申込者数八万六九八八人に対して最終合格者数は二万四二七六人で、申込者を分母にすると三・六倍、受験者六万一七三九人を分母にすると二・五倍になる。

種類別に開くと、同じ国家公務員の括りの中に七倍以上の落差がある。最も高いのは総合職大卒程度試験の教養区分で一三・九倍、次が教養区分を除く総合職大卒程度試験の九・三倍。一方で総合職の院卒者試験は二・〇倍、一般職の大卒程度試験は二・九倍にとどまる。採用予定数が大きい試験ほど倍率は下がり、少数を選ぶ区分ほど跳ね上がるという、ごく素直な形になっている。

専門職も幅が広い。国税専門官は申込一万五一二人に対し最終合格三三九四人で三・一倍だが、労働基準監督官は五・七倍、皇宮護衛官の大卒程度試験は一二・八倍である。志望先が決まっていない段階で平均値だけを見ると、自分が受ける試験の難易度を取り違える。

試験の種類 申込者数 最終合格者数 倍率(申込基準)
総合職(院卒者試験) 一二八八人 六四〇人 二・〇倍
総合職(大卒程度・教養区分を除く) 一万七四〇人 一一五三人 九・三倍
総合職(大卒程度)教養区分 五九一四人 四二六人 一三・九倍
一般職(大卒程度試験) 二万五四三七人 八八一五人 二・九倍
一般職(高卒者試験) 八二七五人 三三三八人 二・五倍
国税専門官 一万五一二人 三三九四人 三・一倍
財務専門官 一八六三人 五六九人 三・三倍
労働基準監督官 二三〇五人 四〇二人 五・七倍
経験者採用試験(七種類) 二三六〇人 五七四人 四・一倍
全試験の合計 八万六九八八人 二万四二七六人 三・六倍

配点比率を見れば、何に時間を割くべきかが決まる

科目名を並べるより先に見るべきなのは配点である。人事院の国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)受験案内は、「行政」区分の試験種目ごとに配点比率を九分の何かという形で示している。専門試験の多肢選択式が九分の四で最も重く、基礎能力試験と人物試験がそれぞれ九分の二、一般論文試験が九分の一である。

内訳も細かく決まっている。基礎能力試験は三〇題を一時間五〇分で解き、知能分野が二四題、知識分野が六題。知能分野は文章理解が一〇題、判断推理が七題、数的推理が四題、資料解釈が三題という構成で、文章理解と判断推理の二つで一七題を占める。知識分野は自然・人文・社会に関する時事と情報から六題が出る。専門試験は四〇題を三時間、一般論文試験は一題を一時間で書く。

合否の決め方にも順番がある。第一次試験の合格者は基礎能力試験と専門試験の多肢選択式の成績を総合して決まり、一般論文試験は第一次試験合格者を対象に評定した上で最終合格者の決定時に他の種目と総合される。第二次試験の人物試験は個別面接で、参考とするために性格検査が行われる。筆記で九分の七、面接で九分の二という重みづけが、この試験の性格を端的に表している。出題範囲の広さに戸惑うなら公務員試験の教養試験とは?出題範囲と対策法を丁寧かつ徹底解説から当たりを付けるとよい。

試験種目 解答題数・時間 配点比率
基礎能力試験(多肢選択式) 三〇題・一時間五〇分 九分の二
専門試験(多肢選択式) 四〇題・三時間 九分の四
一般論文試験 一題・一時間 九分の一
人物試験(個別面接) 第二次試験 九分の二

二〇二七年から日程が一か月前倒しになる

準備の締切は年々前に動いている。人事院は二〇二七年の国家公務員採用試験(春)の日程で、一般職と専門職の大卒程度試験について日程を一か月程度前倒しすると公表した。総合職試験(春)の第一次試験日は二〇二七年二月二八日の日曜で、最終合格者発表は五月下旬。専門職試験の大卒程度は第一次試験が四月二五日、一般職の大卒程度は五月二日で、どちらも最終合格者発表は七月上旬である。

前倒しの理由も示されている。志望者がより早い時期に受験できるようにするためで、結果として内々定のタイミングも一か月程度早まり、就職活動の選択肢の一つとしてより受験しやすい試験になるという説明である。民間企業の選考が年々前に出ている状況に、試験の側が合わせに来た形になる。

受験資格は生年で区切られる。一般職の大卒程度試験の教養以外の区分では、一九九六年四月二日から二〇〇五年四月一日までに生まれた人、または二〇〇五年四月二日以降に生まれて大学等を卒業したか卒業見込みの人が対象になる。教養区分は上限が一年遅く、二〇〇六年四月一日までの生まれが入る。学部の三年生が教養区分を受けられる設計になっており、早い学年から併願を組む余地がある。

受験者は減り続け、競争率は低い水準にある

地方の数字を見ると、市場の方向がはっきりする。総務省の令和五年度地方公共団体の勤務条件等に関する調査では、競争試験の受験者数が三九万九一九九人で前年度から三万九四五二人減り、合格者数は八万六七五三人で前年度から一九四九人増えた。競争率は四・六倍で、前年度から〇・六ポイント下がっている。この調査の競争率は受験者数を合格者数で割って算出したものである。

一〇年の推移で見ると下げ幅は大きい。受験者数は平成二十六年度の五五万三〇〇〇人から令和五年度の三九万九一九九人へ、競争率は同じ期間に七・〇倍から四・六倍へ落ちた。合格者数は八万人前後でなだらかに増えている。受験者が減る一方で採用枠が開いているため、競争率は低い水準で推移している。

国家の側でも申込者数は横ばいからやや減少である。人事院が公表中の二〇二六年度実施状況では、申込者数の合計が八万六五一人で前年度の八万六九八八人を下回った。一般職の大卒程度試験は申込二万六四二九人、最終合格八四二五人で三・一倍となっている。倍率が下がる局面は確かに有利だが、採用側は人材確保の競争に置かれており、面接での見極めは緩んでいない。評価の観点を先に知っておくなら公務員試験の面接対策とは?評価ポイントと準備法を丁寧かつ徹底解説が足がかりになる。

よくある疑問

どの試験から準備を始めるべきか。志望先を一つ決めて、その受験案内の配点比率を写すところから始まる。一般職の大卒程度試験の「行政」区分なら専門試験が九分の四を占めるため、専門科目の選択が最初の決断になる。範囲を広げる前に、受ける試験の重みづけを紙に書き出すほうが時間の配分を誤らない。教材の絞り方は公務員試験参考書の選び方とは何か?活用法を丁寧に徹底解説するが参考になる。

教養試験だけで受けられる試験はあるのか。ある。総合職大卒程度試験の教養区分は専門試験を課さない代わりに倍率が一三・九倍と高い。地方でも教養試験と論文、面接で選考する団体が増えており、民間企業向けの適性検査を使う例もある。専門科目を回避する選択は可能だが、その分だけ受験者が集まるため競争は厳しくなる。

国家と地方の併願は現実的か。日程が重ならなければ可能である。二〇二七年の春は総合職が二月二八日、専門職が四月二五日、一般職が五月二日と散っているため、地方の試験日と突き合わせる余地はある。ただし専門科目の範囲が団体ごとに違うので、併願先を増やすほど一本あたりの精度は落ちる。三つまでに絞って過去問の傾向を合わせるほうが合格の確度は上がる。

社会人からでも受けられるのか。経験者採用試験が用意されており、二〇二五年度は七種類で申込二三六〇人、最終合格五七四人だった。人事院は令和七年の勧告で、経験者採用試験にオンライン試験を令和八年度に試行し令和九年度に導入する方針も示している。学生のうちに公務の現場を覗いておきたい場合は、課題解決型のプログラムで地域や企業と接点を持つFLASPOのような場を使って仕事の中身に触れてから、受ける試験を決める順番でも遅くない。


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