窓口の向こうにいる人の数は、30年で47万人減っている
市役所の窓口で待たされた経験から、職員は多すぎるのではないかと感じる人がいる。一方で、災害のあとに「人手が回らない」という話が必ず出る。どちらの感覚も、実際の人数を見ないまま語られている。
総務省の令和7年地方公共団体定員管理調査結果によれば、令和7年4月1日現在の地方公共団体の職員数は2,809,298人である。ピークは平成6年の3,282,492人で、差は473,194人、率にすると約14パーセント減っている。ただし前年との比較では2,451人の減少にとどまり、調査は「平成29年以降は微増から横ばいの傾向」と書いている。減り続けているのではなく、大きく減ったところで止まっているのが現在地である。
内訳も押さえておきたい。都道府県が1,428,860人で全体の50.9パーセントを占め、以下は指定都市363,485人、指定都市を除く市710,989人、町村137,719人、特別区65,511人、一部事務組合等102,734人と続く。部門別では教育部門が1,067,557人で38.0パーセント、一般管理と福祉関係を合わせた一般行政部門が950,628人で33.8パーセントになる。「自治体の職員」と一言でまとめても、その3分の1以上は学校にいる。
財政の硬直化とは、金がないことではなく使い道が先に決まっていること
自治体の財政が厳しいと聞くと、金庫が空だという想像をしてしまう。実際に起きているのは別のことで、入ってくる金の大半が、使い道の決まった支出で埋まっている。
その度合いを示すのが経常収支比率である。毎年決まって入る収入のうち、人件費や扶助費、公債費のように毎年決まって出ていく支出に充てた割合を指す。総務省の令和7年版地方財政白書は、令和5年度決算の経常収支比率を92.8パーセントとし、前年度から0.4ポイント上昇したと記している。白書の用語解説は、この比率が高いほど財政構造の硬直化が進んでいることを表すと説明している。
92.8パーセントという数字を裏返すと、毎年の収入のうち新しい使い方を選べるのは7パーセント程度しか残らない。学生が持ち込んだ企画が「予算がない」と断られるとき、担当者は財布の中身ではなく、この7パーセントの取り合いの話をしている。既存の事業をどれか削るか、国や都道府県の補助金に乗るか、金のかからない形に組み替えるか。断られた理由を正しく読めば、次に出す案の形が変わる。
技術系職員が1人もいない市区町村が、4分の1ある
道路の陥没や水道の破損が報じられるたび、点検は誰がやっているのかという疑問が残る。答えは自治体の技術職員だが、その人数は人口規模によって極端に違う。
国土交通省が令和8年3月にまとめた技術者が不足する自治体における持続可能なインフラマネジメントに向けては、市区町村の土木部門の職員数がピークの1996年と比べて約26パーセント減ったとしている。同じ期間の総職員の減少率は約15パーセントなので、土木部門は全体より11ポイント大きく減った。さらに、土木技師と建築技師として定義した技術系職員は、約半数の市区町村で5人以下、435団体つまり25パーセントでは0人である。
管理する対象は減っていない。同じ資料は、道路橋が約73万橋、トンネルが約1万2千本、水道管路が約74万キロメートル、下水道管渠が約49万キロメートルあると並べている。2025年1月に埼玉県八潮市で起きた下水道管路の破損による大規模な道路陥没は、この構図の中で起きた事故として扱われている。地域の課題を「人口が減っている」とだけ要約すると、点検する人が先に足りなくなっている現実が抜け落ちる。
四つの層に分けると、提案の宛先がはっきりする
自治体の課題を一枚で語ろうとすると、どこに誰が効くのかが見えなくなる。人、金、物、担い手の四つに分けて、それぞれの代表的な数字と、学生が触れられる余地を並べてみる。
| 層 | 足りないもの | 代表的な数字 | 学生が触れられる余地 |
|---|---|---|---|
| 人(職員) | 配置できる人数と専門性 | 職員2,809,298人。技術系が0人の市区町村が25パーセント | 小さい。採用と定数の話になる |
| 金(財政) | 自由に使える収入の幅 | 経常収支比率92.8パーセント(令和5年度決算) | 小さい。既存予算の組み替えが前提 |
| 物(インフラ・施設) | 点検と更新に回す手 | 道路橋約73万橋、水道管路約74万キロメートル | 中。記録と見える化なら関われる |
| 担い手(地域側) | 継続して動く人の数 | 土木部門職員はピーク比で約26パーセント減 | 大きい。人数そのものが課題 |
四つを分けておくと、自分の企画がどの層に届く話なのかを先に言える。地域経済の課題を四つに分ける記事では同じ発想を地域経済の側から整理しており、人口や財政の数字の読み方は地域経済の現状を数字で読む記事に詳しい。過疎地域の指定を受けているかどうかで使える制度が変わるため、過疎地域指定の基準の記事もあわせて確かめておきたい。
学生が持ち込めるのは人手ではなく、職員が行けない場所の記録である
学生が自治体に関わるとき、最初に出てくる発想は「手伝う」である。ただ、数日の作業で埋まる穴は職員数の計算にはほとんど影響しない。価値が出るのは別のところにある。
職員は平日の勤務時間に、担当区域を回る。だから夜間のバス停、休日の商店街、祭りの最中の人の流れ、空き家の裏手の様子は記録が薄い。学生が同じ場所を違う時間に歩いて写真と数を残すだけで、担当課が持っていない資料になる。数えるものを先に決め、同じ方法で二度測ることが条件になるが、設備も予算もいらない。
提案の場では、集めた記録がどの層の話なのかを添える。物の層の記録として出すなら点検の優先順位の材料になり、担い手の層として出すなら参加者の名簿に近い価値を持つ。学生団体として地域に入る前の設計はFLASPOのような大学生向けの場でも相談でき、同じ失敗を繰り返さずに済む。
よくある質問
「経常収支比率は何パーセントなら健全と言えるのか」。地方財政白書は健全と判断する水準を示していない。書かれているのは、この比率が高いほど財政構造の硬直化が進んでいることを表すという読み方と、令和5年度決算の全団体で92.8パーセントという実績値である。個別の団体を見るときは、この平均と並べたうえで過去数年の動きを追うのが現実的な使い方になる。
「自治体の職員数は今も減り続けているのか」。定員管理調査の説明では、平成6年をピークに減少したあと、平成29年以降は微増から横ばいの傾向が続いている。令和7年は前年比で2,451人の減少、率にして0.1パーセントの減だった。都道府県が3,234人減った一方で、市町村等は783人増えている。全体として横ばいでも、団体の区分によって向きは違う。
「技術系職員の不足は誰が埋めているのか」。都道府県が市町村を支援する形での中長期の職員派遣や、複数の自治体がインフラをまとめて管理する広域の連携が進められている。国土交通省の資料は、技術系職員が限られる中でも点検と修繕を確保するために、複数自治体の施設をまとめて扱う発想への転換を挙げている。個々の団体で人を増やす前提は置かれていない。
「課題を調べるとき、どの資料から入ればよいか」。人の話は定員管理調査、金の話は地方財政白書、施設の話は各団体が公表している公共施設等総合管理計画が出発点になる。いずれも国または自治体が出している一次資料で、無料で読める。報道の要約から入ると数字の年度がずれやすいので、引用したい数字を見つけたら元の資料で年度と定義を確かめたい。
「人口が少ない自治体ほど課題は重いのか」。重さの向きは層によって変わる。財政の硬直化は人口規模と単純には対応せず、技術系職員の不在のように人数が少ない団体で先に表れる課題もある。調べる相手を決めたら、人口ではなく四つの層それぞれの数字を当てはめるほうが見立てを外しにくい。
アイデアコンテストプラットフォーム「FLASPO」

アイデア1つで、地域や企業とつながれる。
FLASPOは、全国の自治体・企業が開催する若者向けアイデアコンテストのプラットフォームです。
地域や企業が抱える課題に対して、あなたのアイデアで解決策を提案できます。
賞金やユニークな地域体験が獲得できるコンテストも多数。誰でも参加無料・オンライン完結で挑戦できます。
