地方創生の前史──「地方創生」以前にもあった地域政策
地方創生は2014年に始まったと説明されることが多いのですが、地域に手を入れる政策自体はずっと前から続いています。歴史を知っておくと、いまの施策がどこを反省して生まれたのかが見えてきます。
戦後から高度経済成長期にかけては、国土の均衡ある発展という考え方のもとで、工業地帯や高速道路、新幹線といった基盤の整備が進められました。地方に産業を持ってくることで人の流出を止める、という発想です。
1970年代には過疎対策の法律が作られ、人口が急減した地域への支援が始まりました。1980年代末には各市町村に一律で資金を配る施策も行われ、地域ごとの特産品づくりが全国で進みました。ただし、似た施設や似た商品が各地に並ぶ結果も生み、使い方の難しさを残しました。
この時期までの政策に共通するのは、国が方針を決めて地方に配る形だったことです。地方創生がのちに「自治体が自分で計画を立てる」形をとったのは、この反省を踏まえたものだと理解できます。
2000年代に入ると、市町村の合併が全国で進みました。数の上では自治体が大きく減り、行政の効率は上がりましたが、役場が遠くなった地域では住民との距離が開いたという指摘もあります。合併では解けなかった人口の問題が、そのまま次の10年に持ち越されました。
2014年──地方創生が政策の中心に来た年
転機は2014年でした。5月に日本創成会議の分科会が、2040年までに若年女性が半減する自治体が896にのぼるという試算を発表します。「消滅可能性都市」という強い言葉とともに公表されたこの報告は、大きな議論を呼びました。
政府はこの年の秋に専門の本部を立ち上げ、11月21日にはまち・ひと・しごと創生法が成立します。この法律によって、国と地方の双方が長期ビジョンと総合戦略を作ることが定められました。ここから、地方創生は一時的な掛け声ではなく制度になりました。
この年に決まった枠組みの特徴は2つあります。ひとつは、自治体が自ら計画を書くこと。もうひとつは、数値目標を立てて成果を検証することです。配って終わりにせず、効果を測る仕組みが組み込まれた点が、それまでとの大きな違いでした。
第1期と第2期──5年ごとに区切られた取り組み
地方創生の総合戦略は5年を1期として運用されてきました。区切りごとに重点が移り変わっています。
| 時期 | おおよその期間 | 重点が置かれたこと |
|---|---|---|
| 第1期 | 2015〜2019年度 | 仕事づくり、移住の促進、結婚・出産・子育ての支援、まちづくり |
| 第2期 | 2020〜2024年度 | 関係人口の創出、デジタルの活用、多様な人材の確保 |
| 地方創生2.0 | 2024年度〜 | 地域の稼ぐ力、生活環境の整備、若者・女性に選ばれる地域づくり |
第1期でわかったのは、移住を最終目標に置くと成果が出にくいということでした。移住は人生の大きな決断で、数年の施策で動く数には限りがあります。そこで第2期では、関係人口という中間的な関わり方が正面から位置づけられました。
第2期の途中で新型コロナウイルスの流行があり、テレワークが一気に広がったことも流れを変えました。住む場所と働く場所を切り離せる人が増え、二地域居住やワーケーションが現実的な選択肢になったためです。
この5年で自治体側の姿勢も変わりました。第1期には移住者の数を主な指標に置く計画が目立ちましたが、第2期では地域の行事に参加した人数や、継続的に関わっている人の数を指標に据える例が増えています。測るものが変われば、打つ手も変わります。
地方創生2.0へ──いまの枠組み
2024年度以降は、地方創生2.0と呼ばれる新しい段階に入っています。交付金の名称も「新しい地方経済・生活環境創生交付金」に変わりました(出典:内閣官房 新しい地方経済・生活環境創生本部事務局)。
方向性として強調されているのが、地域が自ら稼ぐ力を持つことです。補助に頼り続ける構造では続かないという認識が背景にあります。もうひとつが、若者と女性に選ばれる地域づくりです。10年前の試算が示した構造的な問題に、正面から名前をつけた形といえます。
2026年度には関係人口を可視化する新しい制度も始まります。地域に継続的に関わる人をアプリで登録できるようにする仕組みで、これまで数字で捉えられなかった「関わり」を測ろうとする試みです。
10年の流れを一言でまとめるなら、対象が「移り住む人」から「関わる人」へ、目標が「人口の増減」から「関わりの深さ」へ広がってきた、ということになります。
歴史から見えてくる、うまくいった取り組みの共通点
10年分の事例を振り返ると、続いている取り組みにはいくつか共通点があります。
第一に、その地域にしかない資源から出発していることです。他所で成功した事例をそのまま持ち込んだものは、たいてい続きませんでした。第二に、外部の人と地域の人が一緒に動いていることです。外から来た人だけでも、地元だけでも、片方では回りません。
第三に、小さく始めていることです。最初から大きな施設を建てた取り組みより、まず数人の関わりから始めて少しずつ広げたもののほうが、結果として残っています。
逆に、うまくいかなかった取り組みにも型があります。補助金が出ている期間だけ動いて、終わると同時に止まるもの。運営を特定の一人に依存していて、その人が抜けると続かないもの。この2つは全国どこでも見られます。
この3つは、学生が地域に関わるときにもそのまま当てはまります。大きな提案をする必要はなく、その地域固有のものに目を向けて、地元の人と一緒に、小さく試すこと。FLASPOに載っている募集の多くも、この形をとっています。
よくある質問(FAQ)
Q. 地方創生はいつから始まったのですか?
A. 政策の枠組みとしては2014年です。同年5月に消滅可能性都市の試算が公表され、11月21日にまち・ひと・しごと創生法が成立しました。ただし地域政策そのものは戦後から続いており、2014年は「地方創生」という名前で制度化された年だと捉えるのが正確です。
Q. 第1期の地方創生は失敗だったのですか?
A. 評価は分かれます。東京一極集中の是正という最大の目標は達成されていませんが、自治体が自ら計画を立てて検証する仕組みが定着したこと、関係人口という新しい概念が生まれたことは成果と見られています。
Q. 地方創生2.0は何が新しいのですか?
A. 補助に頼らず地域が稼ぐ力を持つこと、そして若者と女性に選ばれる地域をつくることが前面に出ています。人口の数を追うだけでなく、誰に選ばれるかという視点が明確になった点が変化です。
Q. 市町村合併と地方創生はどう関係していますか?
A. 合併は2000年代に行政の効率化を目的として進められたもので、人口減少そのものを解く政策ではありませんでした。合併後も人口流出は続いたため、別の枠組みとして地方創生が必要になったという流れです。合併で役場が遠くなった地域ほど、地域の担い手不足が深刻になった面もあります。
Q. 歴史を知っておくと何の役に立ちますか?
A. 地域に提案をするときに、過去に試されたことを繰り返さずに済みます。特産品づくりや施設整備は多くの地域が一度は通った道なので、そこを踏まえた提案は説得力が違います。
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