人間関係の悩みとは|職場・異性・孤独感を四つの統計で分ける

人間関係の悩みとは|職場・異性・孤独感を四つの統計で分ける

同じ言葉で呼ばれている四つの困りごと

相談の場で「人間関係で悩んでいます」と言われたとき、何が起きているのかはまだ分からない。上司との距離の話か、辞めるかどうかの話か、恋人ができないことか、誰とも話していないことか。言葉はひとつでも、公的な統計はそれぞれ別の調査で、別の設問として測っている。だから悩みを扱うときは、まずどの調査が自分の状態を拾っているのかを見極めるほうが早い。

国の統計に「人間関係の悩み」という項目が一本あるわけではない、というのがこの分かりにくさの原因である。労働に関する調査ならストレスの内容として、人口に関する調査なら独身でいる理由として、福祉に関する調査なら孤独感として、それぞれの目的に沿った形で切り出されている。切り口が違えば母数も年齢も変わるので、どれかひとつを「人間関係の悩みの割合」として引用するのは筋が悪い。

下の表は、人間関係の悩みが数字として現れている代表的な四か所を並べたものだ。測っている主体も対象年齢も違うので、割合を足したり比べたりはできない。それでも、自分の困りごとがどの枠に入るのかを決める役には立つ。

場面 調査 問われ方 割合
職場 労働安全衛生調査(令和6年) 強いストレスの内容が対人関係 26.1%
離職 雇用動向調査(令和6年) 前職を辞めた理由が職場の人間関係 男9.0%/女11.7%
異性 出生動向基本調査(第16回) 独身の理由が異性とうまくつき合えない 男20.0%/女18.2%
孤独感 孤独・孤立の全国調査(令和7年) 孤独感がしばしばある・常にある 4.5%
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職場では、量と責任の次に置かれている

働いている人の悩みを最も細かく追っているのは厚生労働省の「令和6年 労働安全衛生調査(実態調査)」である。個人調査では、いまの仕事に強い不安、悩み、ストレスとなっている事柄がある労働者が68.3%を占めた。その内容を三つ以内で選ばせると、「仕事の量」43.2%、「仕事の失敗、責任の発生等」36.2%、「仕事の質」26.4%が上に並び、「対人関係(セクハラ・パワハラを含む。)」は26.1%で四番目に入る。

注目したいのは偏りの出方だ。就業形態で割ると、対人関係を挙げた割合は派遣労働者で36.9%、正社員で26.7%、パートタイム労働者で23.4%、契約社員で19.6%となる。年齢階級では60歳以上の36.2%が最も高く、20〜29歳が30.8%で続く。指示系統が組織をまたぐ立場と、組織に入ったばかりの時期、そして役割が変わる時期に数字が寄っている。自分の性格の問題として抱えていたものが、立場の問題として説明できることもある。

性別でも差が出る。対人関係を挙げた割合は男性23.4%に対して女性29.2%で、5.8ポイント高い。一方で「仕事の量」は男性43.9%、女性42.4%とほとんど変わらない。量の負担は似た重さでかかり、人づきあいの負担だけが女性に寄っている形だ。

同じ調査は相談の状況も尋ねていて、ストレスを相談できる人がいる労働者は94.6%だが、そのうち実際に相談したことがある人は74.7%にとどまる。相手の不在よりも、口に出さないままの状態のほうが多い。

辞めるという決断に、どれだけ混ざっているか

悩みが限界を超えると、人は職場を離れる。厚生労働省の「令和6年 雇用動向調査」では、転職して入職した人に前職を辞めた理由を尋ねており、「職場の人間関係が好ましくなかった」を挙げたのは男性9.0%、女性11.7%だった。女性では「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」12.8%に次ぐ位置で、内容の分からない「その他の個人的理由」を除けば上位に来る。

年齢で割ると形が変わる。女性の19歳以下では34.0%がこの理由を挙げており、三人に一人を超える。男性では40〜44歳の16.0%が最も高い。社会に出たばかりで立場の弱い時期と、上と下の両方に挟まれる中堅の時期に山ができている。同じ「人間関係」という言葉が、年齢によって別の構造を指していると分かる。

二十代後半も低くはない。男性25〜29歳では11.5%、女性25〜29歳では14.0%がこの理由を挙げている。一方で男性の55〜59歳は5.9%まで下がり、代わりに「定年・契約期間の満了」や会社都合の比重が上がる。辞める理由は年齢とともに入れ替わっていく。

職場の外では、異性との関係として現れる

仕事を離れた場面にも、同じ悩みは顔を出す。国立社会保障・人口問題研究所の「第16回出生動向基本調査」は18〜34歳の未婚者に独身でいる理由を複数回答で尋ね、25〜34歳では「異性とうまくつき合えないから」を男性20.0%、女性18.2%が選んだ。1992年の同じ設問では男性10.5%、女性7.9%だったので、30年で倍前後に増えたことになる。

この層で最も多い理由は「適当な相手にまだめぐり会わないから」の男性43.3%、女性48.1%で、こちらは機会の不足を指す説明だ。機会がないのか、機会があっても続かないのかで必要な手当ては逆になる。自分がどちらを選ぶ側なのかを決めるだけでも、打つ手が絞れる。

総量としては、孤独感の形で集計されている

場面を問わず全体をとらえているのが、内閣府の「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査」である。令和7年の調査では11,873人が回答し、孤独感が「しばしばある・常にある」と答えた人は4.5%だった。「時々ある」13.7%と「たまにある」19.5%を合わせると、四割弱が何らかの孤独感を持っていることになる。男女別では男性5.3%、女性3.7%である。

年齢階級で見ると、高いのは若年層ではなく30歳代から50歳代だ。働き、家庭を持ち、関わる人がむしろ多いはずの年代で数字が上がる。人数の多さと孤独感は別の軸だということでもある。

年齢階級 孤独感がしばしばある・常にある
16〜19歳 3.3%
20〜29歳 5.5%
30〜39歳 6.1%
40〜49歳 5.7%
50〜59歳 5.7%
60〜69歳 4.0%
70〜79歳 2.5%
80歳以上 3.0%

この調査が面白いのは、関わりの形を生活の習慣で割っているところだ。誰かと食事をともにする頻度で見ると、孤独感が「しばしばある・常にある」と答えた人の割合は「ほとんど毎日」の層で2.7%、「ほとんどない」の層で17.3%だった。回答者数はそれぞれ7,600人と971人である。悩みを言葉にする相手がいるかという以前に、同じ場に居る時間があるかどうかで差がついている。

頼り先の広げ方という角度からは友人関係の悩み、年代ごとの変化は社会人の友人関係で扱っている。

よくある質問

人間関係で悩むのは特別なことですか。労働安全衛生調査では強いストレスの内容として対人関係を挙げた人が26.1%、雇用動向調査では前職を辞めた理由として女性の11.7%が挙げている。国の統計に項目として立っているほど一般的な困りごとである。

悩みの原因は自分の性格にありますか。同じ調査で対人関係の割合は派遣労働者36.9%と契約社員19.6%のあいだで17.3ポイント開いていた。立場によって当たり方が変わるのだから、性格だけで説明するのは無理がある。

どの悩みから手をつければよいですか。四つの場面のうち、収入や生活に直結するのは職場と離職の二つである。異性との関係や孤独感よりも先に、職場での立場と相談先を確かめるほうが影響が大きい。

相談相手を増やすには何をすればよいですか。労働安全衛生調査では相談できる相手として「家族・友人」が68.6%、「上司」が65.7%を占めていた。職場と家族の二本だけだと、どちらかが詰まったときに逃げ場がない。FLASPOのように関心でつながる場を一つ挟んでおくと、三本目の線になる。

職場の人間関係は我慢するしかないのでしょうか。相談できる人がいると答えた労働者は94.6%に達するのに、実際に相談した人はそのうちの74.7%だった。口に出していない段階で止まっている人が二割ほどいる計算になる。我慢の前に、使っていない相手がいないかを確かめたい。

孤独感が強いのは若い人ですか。令和7年の全国調査では、孤独感が「しばしばある・常にある」と答えた割合は30歳代6.1%、40歳代と50歳代がともに5.7%で、16〜19歳の3.3%より高い。年齢が上がれば薄れるという話ではない。


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