国の統計に通過率という欄はない
検索すると「ESの通過率は三割」などの数字が並ぶ。出どころをたどると、就職情報会社の調査や個々の企業の採用担当者の発言に行き当たることが多い。国が作る統計の側には、応募者数に対する書類選考の通過者数を集計した表が存在しない。企業には応募と選考の内訳を公表する義務がないため、分母も分子も外からは見えないままになっている。
ただし、学生側の行動を聞いた公的な調査はある。内閣府の委託調査は2025年7月10日から8月11日にかけて62の大学を通じて実施され、大学4年生3,157件と大学院2年生1,258件、計4,415件の有効回答を得ている。この報告書には、何社にESを出したかと、何社の採用面接を受けたかが別々の設問として載っている。二つの分布を並べれば、書類の段でどれだけ絞られるのかを帯の形で推し量ることはできる。
以下で扱うのは、企業一社ごとの通過率ではなく、学生全体の分布がどう変わるかという数字である。この区別を先に置いておかないと、出てきた数値の意味を取り違えることになる。
提出の分布と面接の分布は一段ずれる
まず提出の側を見る。ESを提出した社数は、1社から4社が22.6%、5社から9社が23.7%、10社から19社が24.4%で、三つの帯がほぼ同じ厚みで並ぶ。20社から29社が13.6%、30社から39社が8.0%、40社以上が7.8%で、30社以上に出した人は15.7%を占める。
面接の側は形が変わる。受けた企業数は1社から4社が30.3%、5社から9社が31.6%、10社から19社が25.1%、20社から29社が8.4%、30社以上が4.6%である。10社以上の面接を受けた人は38.1%にとどまり、提出で10社以上だった53.8%より15.7ポイント低い。
| 社数の帯 | ESを提出した社数 | 採用面接を受けた社数 | 差 |
|---|---|---|---|
| 1社から4社 | 22.6% | 30.3% | +7.7 |
| 5社から9社 | 23.7% | 31.6% | +7.9 |
| 10社から19社 | 24.4% | 25.1% | +0.7 |
| 20社から29社 | 13.6% | 8.4% | -5.2 |
| 30社以上 | 15.7% | 4.6% | -11.1 |
分布は少ない帯のほうへ寄っている。多く出した人ほど落ちる数も多くなるため、上の帯が削られて下の帯が厚くなる。ごく粗く言えば、提出が10社から19社の層は面接では5社から9社の帯に移り、提出30社以上の層は20社台に移る。帯が一つ下がるという動きは、一社あたりの通過が半分前後という水準と整合する。
この数字を一社あたりに直すときの注意が三つある
一つめは母数が違うという点である。提出社数の集計は、ESについて「まだ提出していない・提出する予定もない」と答えた人を除いた3,176件が対象になっている。面接社数の集計は、調査時点で選考が行われていないと想定される公務員・教職員志望者を除いた2,680件が対象である。同じ人の提出と面接を突き合わせた表ではないため、割り算をしても一人ごとの比率にはならない。
二つめは、ESを出した先のすべてが本選考ではないことである。この調査ではインターンシップと呼称されるものへの参加経験がある人が74.6%を占める。夏や秋に出す書類は参加の応募であり、面接に進む前提の提出ではない。提出社数の側には、落ちたのではなく最初から面接のない提出が混ざっている。
三つめは面接の段階を区別していないことである。設問は受けた企業数を聞いているだけなので、一次で終わった企業も最終まで進んだ企業も同じ一社として数えられる。したがってここから出てくるのは「書類で落ちる割合」の上限に近い目安であり、企業ごとの書類選考の厳しさを表す数字ではない。出どころ不明の三割という数字を使うより、この範囲で読んだほうが判断を誤らない。
一通ごとの結果と最終的な着地は別の線である
書類で落ちる経験が続くと、全体の見通しまで暗く見える。実際の着地は違う方向を示している。同じ調査では、8月1日時点で内々定を受けていた人が92.4%、そのうち複数社から受けた人が59.8%、1社からが32.6%だった。内々定を受けていない人は7.6%である。
卒業時点の数字も出ている。厚生労働省と文部科学省が共同で行う調査では、令和8年4月1日現在の大学(学部)の就職率は98.0%で、前年同期から増減がなかったと公表されている。短期大学は97.4%、大学等全体で98.0%である。一通ごとの通過率が五割前後であっても、最終的にはほぼ全員が就職先を決めている。
この二つを並べると、通過率は「結果を決める数字」ではなく「必要な提出本数を決める数字」だと分かる。十社の面接に進みたいなら二十社前後の提出が必要になる、という形で本数に翻訳して使う。落ちた枚数を自分の評価として積み上げる扱い方は、数字の性質から外れている。
本数を増やすか一通を厚くするかは帯で決める
分布のどこに自分を置くかは、志望先の数と使える時間で決まる。提出が1社から4社にとどまる層は22.6%あり、推薦や研究室の紹介で進む人を含む。一方で30社以上に出す層も15.7%いる。前者は一通が薄いと代わりがなく、後者は一通に時間をかけられない。どちらの戦い方でも、同じ文章をそのまま回すほど通過は落ちる。
本数を増やす側に立つなら、設問ごとに書き下ろす方式は保たない。経験を四行に圧縮した素材を五つ用意し、設問に合わせて並べ替える方式に切り替える。素材の作り方はガクチカの書き方の手順が転用できる。提出前の点検は通過率を上げるチェックリストのように項目を決めて機械的に回すほうが速い。
一通を厚くする側に立つなら、設問の背後にある採用基準を読む作業に時間を移す。たとえば総合商社のESで問われることのように、業界ごとに聞かれ方の癖がある。地域の企業であれば、なぜその土地で働くのかという問いが必ず来る。答えの材料は書類を書く段階では作れないため、FLASPOのような場で関わった企画と、その場で引き受けた役割を記録に残しておくことが先に立つ。
よくある質問
通過率三割という数字は間違いなのか。企業ごとに公表されていないため、正誤を外から確かめられない。業界や応募者数によって幅があり、ひとつの数字で代表させることに無理がある。公的な調査から言えるのは、提出の分布と面接の分布が帯ひとつ分ずれるという点までである。
何社出せば十社の面接に進めるか。分布の形から粗く見積もると、二十社前後が目安になる。帯が一つ下がるという読み方を当てると、面接で10社から19社に届くのは提出が20社台だった層にあたる。志望度の高い企業に絞るなら、本数ではなく一通の精度で補う組み方になる。
同じESを複数の企業に使い回してよいか。設問が同じ趣旨なら素材は共通で足りる。ただし企業名だけを差し替えた文章は、志望理由の欄で先に見抜かれる。使い回すのは経験の記述部分までにとどめ、その企業でなければ成り立たない部分は書き直す。
落ちた理由は教えてもらえるか。選考結果の理由を開示する義務は企業にない。したがって原因は自分で推定するしかない。設問の要求に答えていない、字数が不足している、同じ話を複数欄で繰り返しているといった形式面は自分で点検できるため、先に潰しておく。
書類で落ち続けると就職できないのか。8月1日時点で内々定を得ていた人は92.4%で、卒業時点の就職率は98.0%である。書類の段で落ちる枚数と、最後に決まるかどうかは別の問題として扱ってよい。
提出社数を増やすと通過率は下がるか。一人ごとの比率を追跡した公的データがないため、因果としては言えない。分布のうえでは、30社以上に提出した15.7%に対し、30社以上の面接を受けたのは4.6%にとどまる。多く出す戦い方では一通の精度が落ちやすい点は意識しておきたい。
アイデアコンテストプラットフォーム「FLASPO」

アイデア1つで、地域や企業とつながれる。
FLASPOは、全国の自治体・企業が開催する若者向けアイデアコンテストのプラットフォームです。
地域や企業が抱える課題に対して、あなたのアイデアで解決策を提案できます。
賞金やユニークな地域体験が獲得できるコンテストも多数。誰でも参加無料・オンライン完結で挑戦できます。


