愛媛の柑橘は何が強いのか|みかん12万1,800トンと新規参入820人

全国のみかんの5分の1が、愛媛で穫れている

スーパーの箱に書かれた産地名は、統計の順位をそのまま映している。農林水産省の作物統計調査によれば、令和7年産のみかんの収穫量は全国で65万6,300トンだった。このうち愛媛県が12万1,800トンで19%を占め、和歌山県の14万5,200トン・22%に次ぐ2位である。静岡県8万9,500トン、熊本県7万6,800トン、長崎県3万8,200トンと続き、上位5県で全国の約7割になる。

全国の収穫量は前年産より9万6,700トン、17%増えた。10アール当たりの収量が1,940キログラムで前年を320キログラム上回ったためで、秋の降雨で果実の肥大が進んだ一方、前年産は高温で作柄が悪かったという事情が重なっている。栽培面積は3万5,600ヘクタールで前年より800ヘクタール減っており、面積が縮むなかで年ごとの天候が収穫量を大きく振らせる構図が続く。

県 収穫量 全国に占める割合
和歌山 14万5,200トン 22%
愛媛 12万1,800トン 19%
静岡 8万9,500トン 14%
熊本 7万6,800トン 12%
長崎 3万8,200トン 6%
全国 65万6,300トン 100%
令和7年産みかんの都道府県別収穫量。農林水産省「作物統計調査」より作成。割合は四捨五入のため内訳の合計と一致しない
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強いのはみかんよりも、みかん以外のかんきつ

愛媛の特徴は、温州みかん一本ではないところにある。農林水産省の果樹をめぐる情勢に載る品目別・都道府県別の産出額を見ると、みかんでは愛媛県が222億円・5,090ヘクタールで3位だが、みかん以外のかんきつをまとめた「その他かんきつ」では81億円・7,090ヘクタールで熊本県に次ぐ2位につける。面積はみかんより広く、全国の産地のなかでも突出している。キウイフルーツでは21億円・389ヘクタールで1位、びわでも5位に顔を出す。

県が果樹農業振興計画で振興品目に挙げる顔ぶれも長い。うんしゅうみかん、いよかん、不知火、ポンカン、清見、河内晩柑、せとか、はれひめ、愛媛果試第28号(紅まどんな)、甘平、愛媛果試第48号(紅プリンセス)、カラといった名前が並び、かんきつ以外でもかき、くり、キウイフルーツ、ぶどう、なし、もも、びわ、うめが記載されている。品種の数が多いことは、出荷の時期を分散できるという意味であり、同時に手のかかる作業が年間に散らばるという意味でもある。

果実全体でみた県の規模も確かめておきたい。同じ資料にある令和6年の都道府県別果実産出額では、愛媛県は374億円である。上に立つのは青森県1,229億円、長野県1,036億円、山梨県912億円、和歌山県893億円、山形県738億円、熊本県415億円の6県で、愛媛県は7番目にあたる。りんごやぶどうを抱える県が上位を占めるなかで、かんきつ中心の県としては和歌山県に続く位置である。同表に並ぶ愛媛の主な品目は、みかんといよかんを先頭に20を超える名前が記載されている。

収穫の時期が分かれていることの意味

かんきつは一斉に穫れるわけではない。全国の数字で見ると、令和7年産のみかんのうち早生温州が39万7,100トンで61%、普通温州が25万9,200トンで39%を占める。早生のうち極早生みかんは10万1,800トンで16%、ハウスみかんは1万4,000トンで2%だった。9月ごろの極早生から始まり、年末の普通温州、そして年明けからのいよかんや不知火へと続く流れがあり、産地の仕事は秋から春までつながっている。

みかん以外のかんきつは、作物統計では栽培面積だけが調べられており、全国の栽培面積は2万2,800ヘクタールで前年より500ヘクタール減った。収穫量の公表がないため、品目ごとの量を比べるには県や協会の資料にあたる必要がある。数字の粒度が品目によって違う点は、産地を調べるときにつまずきやすいところだ。

出荷の量も押さえておくと、流通に乗る分量が見える。令和7年産の全国の出荷量は59万8,900トンで、前年産より8万8,000トン、17%増えた。収穫量との差は、自家消費や加工に回る分、規格から外れる分にあたる。結果樹面積は3万3,800ヘクタールで前年より700ヘクタール減っており、面積が減っても1本あたりの収量が増えれば総量は戻る、という年ごとの振れがここにも出ている。

園地を継ぐ人が足りていない

産地の課題は、売り先よりも人のほうにある。果樹をめぐる情勢によれば、果樹の栽培農家数は減り続け、令和2年には経営者が60歳以上の割合が8割を超えた。果樹作を主業とする経営体の平均農業所得は475万円で、規模の拡大や作業時間の短縮が各県の目標に書き込まれている。

新規に入る人の数は年間数百人の規模にとどまる。果樹の新規参入経営者数は令和5年に820人で、国はこれを令和12年に1,640人へと倍にする目標を置いた。果樹は植えてから収穫できるまでの未収益期間があり、せん定のように覚えるまで時間のかかる技術も要る。米や野菜と比べて入りにくいと言われるのは、この二つが重なるためである。

国の推進方向では、生産面積を令和5年の19万4千ヘクタールから令和12年に19万2千ヘクタールへとほぼ維持する水準に置き、面積を広げるのではなく担い手と収量で支える絵が描かれている。省力的な樹形への改植や新植、集出荷施設の再編、作業の相互融通といった対策が並ぶのは、少ない人数で同じ面積を回すための手立てだからだ。新たな大規模経営体や産地を令和12年までに50創出する目標も掲げられている。

研修と園地の引き継ぎを組にした仕組みがある

入りにくさへの答えとして国が広げているのが、果樹型トレーニングファームである。産地が研修用の園地を用意し、技術研修と、就農時に園地を斡旋する引き継ぎを組にして行う取り組みで、令和5年の45産地を令和12年に250産地へ増やす目標が示されている。作業を請け負うサービス事業体を活用する産地も、令和12年までに50産地を目標に挙げられた。これらの数字は果樹農業振興基本方針(令和7年4月30日策定)に基づく推進方向として整理されている。

学生の立場から近づくなら、まず収穫期の繁忙に合わせて現地へ入る形が現実的だろう。農業体験から就農までの距離は農業体験は就農につながるのかで、滞在して関わる受け入れ先の分布は農泊はどの県に多いのかで扱っている。愛媛は地域おこし協力隊の受け入れも多く、その内訳は愛媛で最も多い協力隊30人にまとめた。県外の学生と地域をつなぐ窓口としてはFLASPOのような仕組みも使える。

よくある質問

「愛媛はみかんで1位ではないのか」。令和7年産の収穫量では和歌山県が1位で、愛媛県は2位である。ただし令和7年産は全国の収穫量が前年産より17%増えた年で、天候の影響で県ごとの収量は大きく振れる。順位は年によって入れ替わるため、1年の数字だけで産地の力を測るのは早い。

「紅まどんなや甘平はどこに分類されるのか」。作物統計でいう「みかん」は温州みかんを指し、これらは「その他かんきつ類」に入る。そのため全国統計では栽培面積しか分からず、品目ごとの収穫量は別の調査や県の資料を見ることになる。

「未経験でも産地に入れるのか」。果樹型トレーニングファームは、技術研修と園地の引き継ぎを前提にした受け入れの枠組みである。産地側が受入計画や育成の目標を立てて動く形なので、縁故がなくても相談の入口はある。

「数字はどこで確かめられるか」。みかんの収穫量は作物統計調査の公表資料、品目別の産出額や担い手の状況は果樹をめぐる情勢に載っている。前者は令和8年5月26日、後者は令和8年8月の時点の整理で、どちらも更新されるため公表日を添えて引用するのが安全だ。


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