黒字のまま閉じる会社が49.1%|事業承継のいまを数字で確かめる

年に6万件を超える会社が、手続を取らずに止まっている

会社がなくなる場面として思い浮かぶのは、裁判所を使う倒産の手続だろう。ところが数の上で多いのは、そうした手続を取らないまま事業を止める「休廃業・解散」である。2026年版中小企業白書が引く帝国データバンクの調査では、2025年の休廃業・解散は67,949件だった。2024年は69,019件で、この2年が直近10年で最も多い。2016年は60,168件、2022年は53,426件まで下がっていたので、3年で1万4千件ほど戻した計算になる。

件数以上に重いのは、その中身である。同じ調査で損益がわかる企業を見ると、2025年に休廃業・解散した企業のうち黒字だったものが49.1%を占めた。2016年は55.7%が黒字だったので、赤字の比率が上がってはいる。それでも、半数近くは稼げていたのに店や工場を閉じたことになる。経営が行き詰まった末の決断ではなく、続ける人がいないという理由で終わる事業が、毎年3万件規模で存在する。

同じ白書の第7節には、債務の支払不能などで法的な整理に入った倒産の数も載っている。東京商工リサーチの集計で負債1,000万円以上を数えたもので、業種の内訳は飲食や生活関連を含むサービス業他が33.8%、建設業が19.6%、製造業が11.5%、小売業が11.4%、卸売業が11.1%だった。倒産は業種ごとの景況を映すが、休廃業・解散は経営者の年齢を映す。似た言葉でも、数字が語っていることが違う。

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閉じた会社の代表者は、7割が70歳を超えている

休廃業・解散の件数を代表者の年齢で割ると、どこで事業が途切れているかが見える。2025年に休廃業・解散した企業の代表者は、70代が39.3%、80代以上が24.4%で、合わせて63.7%が70歳以上だった。60代の20.4%を加えると84.1%に達する。代表者の平均年齢は71.5歳で、2016年の67.4歳から4.1歳上がった。

同じ10年で、40代以下の比率は縮んでいる。2016年は30代以下1.9%・40代7.4%だったが、2025年は0.9%・3.7%である。若い代表者の会社が閉じにくくなったというより、そもそも若い代表者の数そのものが減っていると読むのが自然だろう。

代表者の年齢 2016年 2025年
30代以下 1.9% 0.9%
40代 7.4% 3.7%
50代 12.1% 11.3%
60代 33.5% 20.4%
70代 31.8% 39.3%
80代以上 13.2% 24.4%
平均年齢 67.4歳 71.5歳
休廃業・解散した企業の代表者年齢構成。2026年版中小企業白書(帝国データバンク調査)より作成

後継者がいない会社の割合は、10年で15ポイント下がった

暗い数字ばかりではない。白書の第8節が示す後継者不在率は、2016年の66.0%から2025年には50.8%まで下がっている。年代別では60代が52.0%から36.3%、70代が40.1%から26.5%、80代以上が31.8%から21.3%へと、どの層でも15ポイント前後の改善があった。

不在率が下がった理由は、親族に継がせる以外の道が実際に使われ始めたことにある。従業員への承継や、社外の第三者への譲渡が選択肢として認識され、支援の窓口も整えられてきた。とはいえ全体が5割の水準にとどまるのは、2社に1社では次の代が決まっていないという意味でもある。70歳を超えた経営者の会社が閉じる現状と重ねると、残った5割をどう動かすかが課題として残る。

改善の内訳を見ると、下がり方が大きいのは高齢の層である。80代以上の不在率が21.3%まで落ちたのは、相続や譲渡の判断がすでに済んだ会社が増えたためと考えられる。逆に、60代で36.3%が未定という数字は、これから10年のあいだに判断を迫られる会社の規模を示している。地域の取引先や雇用がそこに紐づいているため、1社の決断が商店街や下請の並びごと動かすことも珍しくない。

経営者の年齢分布は、60歳以上が過半を占める

会社を担っている人の年齢そのものも動いている。白書が載せる中小企業の経営者年齢の分布を見ると、2025年は60〜64歳が14.9%、65〜69歳が12.3%、70〜74歳が10.4%、75〜79歳が9.2%、80歳以上が5.7%だった。これらを足すと60歳以上が52.5%となり、過半を超える。2000年の同じ合計は38.0%だったので、四半世紀で14.5ポイント上がった(合計は公表値から筆者が算出)。

とくに目を引くのは75歳以上の層で、2000年の4.3%から2025年には14.9%へと3倍を超えた。一方で30代以下は1.0%、40代前半は5.1%にすぎない。地域の商店や工場で「社長がまだ現役」という話を聞くとき、その多くは引退時期を決めていないのではなく、渡す相手が見つかっていない状態を指している。

相談の入口は47都道府県に置かれている

渡す相手を探す公的な窓口として、事業承継・引継ぎ支援センターが全47都道府県に設置されている。白書が載せる実績では、2024年度の相談者数は16,045者、第三者への承継に関する成約件数は2,132件だった。前身の事業引継ぎ支援センターが7か所で始まった2011年度は相談250者・成約0件で、2017年度に48か所の体制となってから数が伸びた。なお2021年度以降の相談者数は第三者承継に絞った集計で、親族内承継の相談は別に扱われている点は読み替えが必要である。

センターの手前には、商工会・商工会議所や地域の金融機関でつくる事業承継ネットワークがある。2017年度に構築され、聞き取りによる事業承継診断で課題を掘り起こし、必要に応じてセンターへ橋渡しする仕組みだ。白書のコラムでは、職員をセンターへ出向させて実務を覚えさせた鹿沼相互信用金庫や、地元出身者を地域支援員に置いて日常の会話から兆しを拾う郡上市商工会の例が紹介されている。若い世代が外から入って継ぐ道もあり、後継ぎのいない店を若者が継ぐときや事業承継を副業で引き受けられるかで扱った枠組みが入口になる。

費用の面では、親族内承継に使える法人版と個人版の事業承継税制、M&Aの専門家費用を対象にした補助金が用意されている。中小企業庁の支援策のページに、税制・補助金・センターの3本が並べて掲載されており、どこから相談すべきかはこの一覧で見当がつく。学生や若手が関わる段階では費用の話は先の論点だが、受け入れる側がどの制度を見ているかを知っておくと会話が噛み合う。

よくある質問

「黒字なのに閉じるのはなぜか」。採算と承継は別の問題だからである。利益が出ていても、設備や取引先を引き受ける人がいなければ事業は続かない。中小企業庁の事業承継のページも、後継者不在を背景とした黒字廃業が多く残っていると述べている。

「不在率が下がったのは良い知らせか」。方向としては改善だが、水準は2社に1社である。しかも閉じた会社の84.1%は代表者が60歳以上で、時間の余裕は小さい。

「学生のうちに関われることはあるか」。産地や商店街の現場に通って関係をつくる段階から始められる。地域と学生をつなぐ取り組みを集めたFLASPOのような窓口を使うと、承継の話が出ている事業者と出会う機会が増える。職人の世界に限れば伝統工芸の後継者問題も同じ構造を抱えている。

「数字はどこで確かめられるか」。休廃業・解散と倒産は白書の第7節、後継者不在率と経営者年齢、センターの実績は第8節にまとまっている。いずれも図ごとに元データの表計算ファイルが添えられているので、年ごとの値を自分で並べ直せる。

「親族以外でも継げるのか」。従業員承継と第三者承継が制度として整っており、センターの成約2,132件はその第三者承継の実績である。血縁がないことは、いまの制度では障害にならない。


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