提出した企画が差し戻される理由は、たいてい内容の面白さとは関係がない。火器の種類が書かれていない、退路の幅が足りない、終了時刻が撤収に間に合わない。どれも案を思いついた段階では見えない条件である。先に条件のほうを並べてから案を出すと、通る企画の割合がはっきり変わる。
案を出す前に、使える枠を書き出しておく
白紙から「何をやりたいか」を話し合うと、会場に入らない案や前日搬入が必要な案が混ざる。最初に紙へ書くのは、与えられている枠のほうである。使える場所とその面積、使える時間帯、動かせる人数、上限の金額、電源の有無、屋内か屋外か。この六つを数字で書いておくだけで、案出しの精度が上がる。
枠が決まると、不足を補う発想が出てくる。電源が取れないなら調理を伴わない企画に寄せる、人数が少ないなら交代制が要らない展示型にする、といった具合である。制約から始めるやり方は窮屈に見えるが、差し戻しの往復が消えるため、実際には自由に使える時間が増える。
案を広げる段階では数を競い、絞る段階では基準で切る。この二つを同じ会議で混ぜると、声の大きい案が残って基準が後付けになる。先に基準を文章で決めておけば、落とした案の説明もその場でできる。
絞り込みは、好みではなく基準で切る
五十の案から十を選ぶ場面を考えてみたい。投票で決めると、知名度の高い企画が残り、安全や手続きの難しさは反映されない。使えるのは、落とす理由を先に決めておく方法である。実行不能な条件を一つでも含む案を外し、残った案を来場者層との合致で並べる。
実行不能の判定は、四つを見れば足りる。許可や届出が期限内に間に合うか、当日の人員が確保できるか、事故が起きたときに止められるか、片付けが終了時刻までに終わるか。この四つは好みの問題ではないため、判断がぶれない。逆に「面白いかどうか」は最後の並べ替えにだけ使う。
落とした案には理由を返す。どの条件に引っかかったのかを伝えれば、火器を電気式に替える、提供する食品を加熱済みのものに限る、といった作り直しが起きる。断りが企画の改善につながる構造をつくっておくと、二年目以降の案の質が上がる。考え方の型としては論理立てて企画書を組む方法を扱った記事が近い。
企画の種類ごとに、見るべき条件が入れ替わる
同じ「出店」でも、焼き物を出すのか既製品を配るのかで手続きが変わる。種類別に当たるべき先を押さえておくと、企画受付の時点で仕分けできる。下の表は東京都の例で整理したもので、条例や運用は自治体ごとに違うため、最終的には開催地の窓口で確かめる必要がある。
| 企画の種類 | 確認すべき条件 | 当たる先・根拠 |
|---|---|---|
| 調理を伴う模擬店 | 提供する食品の範囲と届出 | 保健所(模擬店実施届など自治体の様式) |
| 火器を使う出店 | 対象火気器具等の使用と消火器の準備 | 消防署(火災予防条例第18条から第21条、第60条) |
| 音楽・演劇・映像のステージ | 営利目的か、料金を取るか、報酬を払うか | 著作権法第38条第1項 |
| 校外の道路に出る企画 | 露店の設置、祭礼行事としての道路使用 | 警察署(道路交通法第77条第1項第3号・第4号) |
| 展示・研究発表 | 退路の幅、掲示物の固定、電源の容量 | 学校・大学の施設管理の規程 |
表の最後の行にある展示型の企画は、手続きが軽いぶん見落とされやすい。通路に机を張り出せば退路が狭まり、掲示物を天井から下げれば避難誘導の表示を隠すことがある。届出の対象ではないため窓口の確認が入らず、当日の朝に指摘されて作り直す例が出る。施設を管理する側の規程を先に読んでおきたい。
食品を扱う企画は、営業として行うのかどうかで入口が分かれる。東京都南多摩保健所の案内は、学園祭のような特定多数が参加する行事での模擬店と区別して「不特定多数を対象として営業等を行う場合は、営業許可又は届出が必要」と示している。期限も自治体差があり、尼崎市は「模擬店等における実施届」を開催の2週間前までに求めている。
音楽と映像の企画には、条文が直接効いてくる
バンドの演奏や映画の上映を企画に入れるなら、著作権法第38条第1項を読んでおきたい。条文は「公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金を受けない場合には、公に上演し、演奏し、上映し、又は口述することができる」と定め、ただし書きで「当該上演、演奏、上映又は口述について実演家又は口述を行う者に対し報酬が支払われる場合は、この限りでない」と続く。
読み方としては、三つの条件が同時に満たされている必要がある。営利を目的としないこと、観客から料金を受けないこと、演じる人に報酬を払わないことである。どれか一つが欠けると、この規定は使えなくなる。企画の段階で押さえるべきは、入場を有料にするかどうか、外部の出演者に謝礼を出すかどうかという二点になる。
「報酬」をどう見るかは判断が要る。交通費の実費を渡すだけなのか、出演の対価として金額を決めて払うのかで性格が違う。外部の演者を呼ぶ企画では、何をいくら払うのかを企画書の段階で書き出しておくと、後から条件を外す事態を避けられる。
ここは運営全体の方針と絡む。入場料を取る方針が先に決まっていると、ステージ企画の選び方が変わる。逆に無料で通すなら、条文の条件を満たしたうえで企画を広く取れる。条文はe-Gov法令検索の著作権法で読める。なお第38条第1項が及ぶのは上演や上映といった行為で、録音物の配布や配信は別の規定の話になるため、記録映像を後から公開する予定があるなら切り分けて検討する。
企画書は、審査する側が判断できる形で書く
提出された企画書を並べたとき、審査側が最初に探すのは「止められるか」と「間に合うか」である。読み取れない企画書は、内容が良くても保留になる。書く側が意識すべきは、熱意の分量ではなく判断に必要な情報が揃っているかどうかである。
最低限入れたい項目は七つに整理できる。企画の目的、当日の流れと所要時間、必要な場所と面積、必要な人数と交代の組み方、使う設備と電源、想定する来場者と安全上の懸念、そして中止や縮小に切り替える条件である。最後の項目は抜けやすいが、雨天や混雑の際に現場で迷わないための要になる。
数字は丸めずに書く。「たくさん必要」ではなく「同時に4人、交代を含めて1日10人」と書けば、人員の配分表にそのまま載る。項目の立て方はイベント企画書の必須項目を整理した記事が参考になり、行事そのものの性格を押さえるなら学園祭の歴史をたどった記事も材料になる。学生の企画を地域につなぐ場としてはFLASPOのような取り組みもある。
よくある疑問
企画はいつまでに決めればよいのか。届出に書く内容が確定していなければ提出できないため、期限から逆算する。食品の届出が開催2週間前の自治体もあることを踏まえると、企画の確定は1か月前が現実的な線になる。
有名な曲を演奏してもよいのか。著作権法第38条第1項の三条件、つまり営利目的でないこと、観客から料金を受けないこと、演じる人に報酬を払わないことがすべて満たされていれば、公表された著作物を演奏できる。一つでも欠けると別の検討が必要になる。
映画の上映はできるのか。上映も第38条第1項が挙げる行為に含まれるため、同じ三条件で判断する。ただし作品によっては配給側が上映の条件を別に定めている場合があるため、入手経路とあわせて確認する。
調理を伴う企画はどこまで許されるのか。提供できる食品の範囲や衛生上の条件は自治体の運用で決まり、全国共通の線はない。企画の採否を決める前に、所管の保健所に取り扱う食品を示して相談するのが早い。
去年と同じ企画なら手続きを省けるか。省けない。届出は毎回の催しに対して必要で、火器の種類や出店の数が変われば内容も変わる。前年の控えは相談を早める材料として使えるが、提出の代わりにはならない。
企画が集まらないときはどうするか。枠を示していないことが原因になっている場合が多い。使える場所と時間、電源の有無、上限金額を先に公開すると、応募側が案を組み立てやすくなる。前年に落とした案の理由を公開しておくのも効く。
展示だけの企画に届出は要るか。火気も食品も道路も使わないなら、消防署や保健所への届出の対象には当たらない。ただし退路の幅や掲示物の固定は施設側の規程で見られるため、会場の管理担当に図面を見せておく。
企画の採否は誰が決めるのか。条件に当てはめる判断は実行委員会に残し、企画の中身の工夫は提案した側に委ねる形が噛み合う。基準を公開しておけば、決めた人が誰かという話に議論がそれにくい。
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