大学の活動を国際協力へ出す道|草の根技術協力3型と上限1億円の線引き

大学の活動を国際協力へ出す道|草の根技術協力3型と上限1億円の線引き

海の向こうでも同じことをしたい、と思ったとき

ゼミで地域の商店街を手伝ってきた学生が、留学生の友人から出身地の村の話を聞く。水の管理が追いつかない、学校の先生に教え方の研修がない。聞けば聞くほど、国内で見てきた景色と重なる部分がある。そこで「向こうでも同じことをやってみたい」と考えたとき、個人として留学する道と、大学の活動そのものを海外に持ち出す道は別の制度に分かれている。

前者の規模は毎年数えられている。日本学生支援機構が2026年5月29日に公表した2024年度日本人学生留学状況調査によれば、2024年度に海外の大学等で留学を開始した日本人学生は91,054人で、前年度より1,875人、2.1%増えた。うち協定等に基づく留学が57,262人、協定等に基づかない留学が33,792人である。過去最多だった2018年度の115,146人には、まだ届いていない。

これらはいずれも個人の移動として数えられた人数だ。学内の活動を組織のまま相手国へ運ぶ経路は、国際協力機構(JICA)の草の根技術協力事業として別に用意されている。学校が提案団体になれると明記された制度であり、応募の条件も金額の上限も公開されている。

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実績の量で、入れる枠が三つに分かれる

2026年6月26日に公示された2026年度の募集要項は、この事業を次のように説明している。国際協力の意思のある日本のNGO・CSO、その他民間の団体、地方公共団体、独立行政法人または学校が、開発途上国の住民を対象に、その地域の経済及び社会の開発または復興に協力することを目的として自己の利益に関わりなく行う国際協力活動である。助成金ではなく、JICAが提案団体に業務委託を行う共同事業という形を取る。

満たすべき要素は三つ置かれている。日本の団体が主体的に行う技術協力であること、相手国側実施機関との協働であること、開発途上国の地域住民の生活改善・生計向上に裨益すること。認められる活動は、技術協力のための人員の派遣、機材の供与、カウンターパート等に対する技術研修の実施の3点で、機材の供与は支援型だけ対象外となる。

型 想定される提案団体 金額の上限 期間 2026年度の応募締切
草の根協力支援型 開発途上国への支援実績が少ないNGO等 1,000万円 3年以内 11月20日
草の根パートナー型 国際協力に豊富な実績を持つNGO等 1億円 3年以内 10月30日
同・上限3,000万円枠 パートナー型の実施経験はないが一定の実績がある団体 3,000万円 3年以内 10月30日
地域活性型 地方公共団体 6,000万円 3年以内 10月30日

上限3,000万円枠は通常のパートナー型と区分して審査される。2021年度からは提案団体の支出実績に基づく上限金額の設定が廃止され、代わりに提案額が大きくなるほど管理能力が問われるという注意書きが置かれた。経費の側では、間接経費率は直接経費と直接人件費の合計に44%を掛けた額が上限となる。

学部や研究所の単位でも手を挙げられる

大学が関わるときに効いてくる規定が、応募の単位である。草の根協力支援型では、大学の「教育研究上の基本組織」またはその付属施設の単位で応募することが認められている。提案団体名の欄には大学本体ではなく、その基本組織や付属施設の名前を書く。学部や研究所が主体として前に出られるという意味だ。

ただし契約の相手は変わる。法人格を有する上部組織または大学の契約権者との契約締結が要件となるため、提案時に組織図の写しを添えて基本組織であることを示す必要がある。資格審査書類の負担は設置形態によって違い、国立大学法人・独立行政法人・国公立の学校は4種類の書類が不要、公立大学法人は3種類が不要とされている。

時間の制約もある。採択結果の通知から2年以内にJICAとの契約締結に至らない場合、事業の実施が困難と判断される。学年が入れ替わる大学の活動では、誰が引き継ぐかを決めないまま採択だけ取ると苦しくなる。研究として積み上げる道筋は卒論で地域を扱うにはで扱っており、海外に出す前段として国内で形にしておく選択肢もある。

組む相手の条件が、思ったより細かい

提案の成否を分けるのは相手国側の体制だ。カウンターパートは提案団体と共同で事業を実施し、対象国において責任を担う機関と定義され、公的機関または非営利団体に限られる。営利企業等、事業の実施がその機関の経済的利益につながると考えられる団体は選べない。私立の医療機関や教育機関は認められるが、公共性・公益性の確保が求められる。

独立性の要件も置かれている。提案団体と本部・支部の関係にある団体や、指揮命令系統または財務面で強い関連性・依存関係がある団体はカウンターパートにできない。しかも連携・協議の状況が審査項目の一つであるため、提案時からの変更は原則として認められない。現地で知り合った個人の縁をそのまま提案に書くのではなく、機関としての合意を先に取る順番になる。

対象国にも線が引かれている。JICAの在外拠点が設置されODAの対象となっている国が前提で、2026年6月1日時点で外務省海外安全情報のレベル3またはレベル4に指定されている国は対象外とされた。加えて全ての型で事前の応募相談が必須であり、初回応募相談の締切はパートナー型と地域活性型が2026年9月30日、支援型が10月23日だった。応募締切の1か月以上前に相談を終えておく設計である。

ベトナムの20件に、どんな名前が並んでいるか

制度の説明だけでは、誰が使っているのかは見えない。JICAベトナム事務所がまとめた実施中の案件一覧は、2026年5月現在で合計20件を掲げている。型別の内訳は草の根パートナー型5件、草の根協力支援型8件、地域活性型7件。地域別では北部が8件、中部が7件、南部が2件、複数省にまたがるものが3件である。

大学の名前はこの一覧に実際に並ぶ。大阪大学接合科学研究所はハノイ工科大学と溶接管理技術者の育成能力向上に取り組み、神奈川工科大学はタイビン医科薬科大学で老年看護教育の導入を支援する。弘前大学はハイフォン市疾病管理センターと組み、学内で培った健診の仕組みを現地で自立的に運営する体制づくりを掲げた。山梨県立大学はクアンチ省の山岳少数民族集落で観光を通じた生計の多様化を、大阪教育大学はホーチミン市師範大学でSTEAM教育の能力強化を進める。

地域活性型の7件は自治体の案件で、香川県、宮城県、福岡県、京都市、福岡市、北海道釧路市、茨城県笠間市といった提案団体が名を連ねる。扱う課題は廃棄物処理、海ごみ削減、介護人材育成、環境保全型営農と、国内で手一杯になっている分野とほぼ同じだ。大学の窓口から地域に入る経路を整理した京都大学の地域創生プロジェクトと並べると、国内と海外で同じ組織が二つの看板を持つ構図が見えてくる。

よくある疑問

学生個人で応募できるのか。できない。提案できるのは団体であり、大学の場合は法人または基本組織が主体となる。学生が関わる形は、教員が代表を務める提案に業務従事者や活動の担い手として加わる経路が現実的だ。学内でどの組織が受け皿になり得るかは、学生が地域プロジェクトを始める順番と同じ考え方で探せる。

補助金のように使えるのか。性質が違う。JICAが提案団体に業務委託する共同事業であり、提案金額を上限に契約金額が定められる。経費は経理処理ガイドラインに沿って扱われ、間接経費は44%という比率の上限が決まっている。手元に自由に使える資金が入るわけではない。

どの型を選べばよいのか。開発途上国での支援実績が少なければ支援型、相応の実績があればパートナー型、提案団体が自治体なら地域活性型という切り分けになる。地域活性型では自治体が指定した団体が実施を担うことも可能で、指定できるのは1者のみ、複数で担う場合は共同事業体を組む必要がある。

国内の地域での経験は評価されるのか。要素の一つが提案団体の持つ技術・知見・経験である以上、材料として扱われる。商店街の空き店舗を回した経験や、集落の移動の不便を調べた記録は、相手国の課題と結び付けられれば提案の根拠になる。まずは国内で何かを一度やり切っておくのが近道で、地域の企画を探すならFLASPOに集まる募集から当たる手もある。

相手国の安全はどう確認するのか。外務省の海外安全情報が基準になり、レベル3とレベル4の指定国は対象から外れる。JICAが定める国別の安全対策措置も併せて確認が必要で、渡航の可否は提案の前提として調べることになる。


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