自治体の生成AIは市区町村45.6%|外から関わる人に残る仕事を考える

文章を書く手伝いは、庁内で先に片付くようになった

地域に関わりたいと伝えたときに返ってくる役割は、長らく決まっていた。広報の記事を書く、SNSの投稿を考える、イベントの案内文を整える。手が足りない役所でまず外に出される仕事が、文章を扱う作業だったからだ。その前提が、この2年で静かに動いている。

総務省が令和8年4月24日に公表した令和7年度の地方自治体におけるAI・RPAの実証実験・導入状況等調査は、1,788の都道府県・市区町村すべてから回答を得ている。生成AIの活用事例を件数で並べた一覧には、SNSへの投稿文案の作成が620件と載る。令和5年の101件、令和6年の374件から3年で6倍を超えた。

関係人口という言葉で語られる関わりの多くは、この種の作業を入口にしてきた。入口が機械の側に移るなら、外から関わる人に残る仕事は別の場所にあることになる。調査の数字を追うと、その場所がどこかまで書かれている。

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導入率は、団体の大きさできれいに割れる

同じ調査には三つの技術が並行して載っている。生成AIの導入状況とAI・RPAの利用状況をそれぞれの概要資料から拾うと、令和7年10月31日時点の姿は次のようになる。

区分 都道府県 指定都市 その他の市区町村 検討中等を含めた割合
生成AIの導入済 100% 100% 45.6% 約88%
AIの導入済 98% 100% 62% 約80%
RPAの導入済 98% 100% 44% 約62%

都道府県と指定都市は出そろっていて、差が付くのはその他の市区町村である。全体で見るとAI・RPA・生成AIのいずれかを導入済みの団体は1,322団体で74.0%にあたり、三つすべてを導入している団体は513団体の28.7%にとどまる。生成AIだけを導入した団体が107団体、AIだけが197団体、RPAだけが48団体という分布だ。

AIの機能別では音声認識が967件で最も多く、AI-OCRなどの文字認識が629件で続く。会議録の作成と申請書の読み取りという、紙と声を文字に変える作業が土台になっている。都道府県ではチャットボットによる応答が最多で、指定都市とその他の市区町村では音声認識が最多という違いもある。導入の広がりを事例から読んだ地方創生DXの成功事例の時点と比べると、生成AIの位置は実験から日常の道具へ移った。

件数の順番に、庁内の困りごとが出ている

生成AIの活用事例は、設問に答えた1,244団体の複数回答として集計されている。上位はあいさつ文案の作成が1,292件、議事録の要約が1,131件、議会の想定問答の文案作成が1,085件、メール文案の作成が1,052件、企画書案の作成が997件。続いて住民等からの質問に対する回答案の作成が848件、マクロやVBAなどのローコード作成が799件、計画案が731件、マニュアル案が730件、翻訳が669件と並ぶ。

削減の実例も人口規模付きで載っている。人口5.1万人の団体では、あいさつ文やメール文の作成を含む文章作成業務が1か月190時間から51時間に減り、73%の削減となった。人口5.8万人の団体は過去の答弁をRAGで参照させ、150問を超える質問のうち最大96%について答弁案の作成や補足資料の準備に生成AIを使っている。人口18.6万人の団体は広報誌の情報収集と企画書案で年間288時間程度の削減を見込み、9.4万人の団体ではマクロの自動生成で累計約4,250時間の削減が見込まれた。

この並びは、外の人に頼まれてきた仕事と重なる部分が大きい。広報の文章、翻訳、投稿文、マニュアルはいずれも上位に入っている。関わり方として用意された枠が、そのまま機械に置き換わるわけではないが、同じ作業を同じ速さでやるだけでは価値が薄くなる方向に動いているのは確かだ。

空いた時間の使い道が、はっきり書かれている

削った時間をどこに回すのかという設問もある。回答の最多は業務プロセス改善やIT導入などの内部事務の改善の検討・実施で637件。次が住民対応時間の確保など住民サービスの向上で622件、既存事業の改善・見直しが562件と続く。新規施策・事業の検討・実施は441件、年次有給休暇の取得や時間外勤務の削減といったワークライフバランスの向上は440件だった。

内部の効率化に半分近くが向かう一方で、住民サービスと新規事業に向けた回答が合計で1,000件を超えている点は見落としたくない。令和6年度の同じ設問では内部事務の改善が347件、住民サービスの向上が340件だったので、1年で件数がほぼ倍に増えた。時間が浮いたぶんを外向きの企画に充てると答えた団体が、数の上では増えている。

外から関わる人にとっては、ここが接点になる。住民との対話の場を設計する、関係人口の施策を一緒に組み立てる、他の地域の事例を持ち込むといった仕事は、職員の時間が空かないかぎり発注されない。関係人口の数え方そのものが調査によって変わる事情は関係人口の調査データは三つあるで整理したが、施策の相手として呼ばれる機会は庁内の余力と連動する。

残る仕事は、入力と確認という両端にある

生成AIで何が難しいのかも集計されている。課題として回答が多かった順は、AI生成物の正確性への懸念、取り組むための人材がいない又は不足している、要機密情報流出の懸念である。AI全般では人材不足が826件で最多、RPAでは1,026件で最多となり、令和6年度まで上位10分類に入っていなかった情報の収集・活用等に関する個人情報保護等の制約が、今回新たに上位に現れた。

対処の方向は総務省の自治体におけるAI活用・導入ガイドブックの改訂についてに示されている。令和4年6月の版には生成AIの記述がなかったため第4版で追加されたもので、利用目的に応じて求められる正確性の水準が異なることを意識し生成物を人が確認するルールを設けること、AI統括責任者を置いて責任者を明確にすること、入力した要機密情報を学習させない仕組みとしてオプトアウトを徹底すること、専門人材と一般職員の橋渡しを行うDX推進リーダーを育てることが挙げられている。

事例として載る西粟倉村の使い方は、外の人の役割を考える材料になる。ワークショップで回収した住民の意見を生成AIに入力し、村の分野別の傾向や強み・弱みをまとめた出力結果を議論のたたき台として使うという手順だ。入力する素材を集める場をつくる作業と、出てきた傾向を住民と読み直す作業は、どちらも人が担っている。自治体の発信が誰に届くのかを扱った地域のSNS発信は誰に届くかと合わせると、文章を速く作る力よりも、素材を取りに行く力と確かめる力に重心が移っていることが分かる。

よくある疑問

広報や発信の仕事は、もう外に出なくなるのか。全部がなくなるとは言えない。あいさつ文や定型のメールは庁内で処理されやすい一方、現地で人に会って話を聞く、写真を撮る、関係者の了解を取るといった工程は残る。生成AIの出力は確認の工程が前提に置かれているため、確かめる役割を担える人の需要は消えない。

小さい自治体では、まだ関係ない話ではないか。その他の市区町村の生成AI導入済みは45.6%で半分に届いていないが、実証中や導入予定、導入検討中を含めると約88%が導入に向けて動いている。削減の実例は人口5万人台の団体から挙がっており、規模が小さいほど一人あたりの効果が大きい構図もある。

AIを使える人材として関われるのか。課題の上位に人材不足が並ぶため、需要はある。ただガイドブックが育成の対象に挙げるのは、専門人材そのものではなく専門人材と一般職員の橋渡しを行う役で、即時利用可能なプロンプト集や職員のレベル別研修といった地道な取り組みが有効とされている。技術の知識より、職員の業務を聞き取って手順に落とす力が問われる。

機密情報を扱う場面はどうなるのか。要機密情報を学習させない仕組みの徹底が前提で、地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドラインの分類に応じて使えるクラウドサービスの範囲が示されている。外部の人が業務のデータに触れる場合は、この枠の中で何が許されるかを先に確認することになる。

関わりたい側は何から始めるとよいか。自分の住む地域と関心のある地域について、公表された導入状況を見て、どの業務が機械に移ったのかを把握するところからで十分だ。そのうえで現地に足を運ぶ企画を探すなら、FLASPOに集まる募集のように、人が出向く前提の場から当たるのが早い。


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