地域運営組織8,587団体はどこで続かなくなるか|助成金86.1%という土台

10年で2.8倍に増えた8,587団体

住民が自分たちで地域の暮らしを支える組織は、数のうえでは増え続けている。総務省が令和8年3月に公表した「令和7年度 地域運営組織の形成及び持続的な運営に関する調査研究事業 報告書」によれば、全国で確認された地域運営組織は8,587団体だった。前年度の8,193団体から394団体の増加で、伸び率は4.8%になる。平成28年度の3,071団体と比べると約2.8倍である。組織が置かれている市区町村は903で、前年度の893から10増えた。調査は市区町村1,741団体と地域運営組織8,587団体の回答に基づいている。

地域運営組織は英語の頭文字からRMOとも呼ばれる。総務省の定義では、地域で暮らす人々が中心となって形成され、地域内のさまざまな関係主体が参加する協議組織が定めた指針に基づいて、課題の解決に向けた取組を持続的に実践する組織をいう。活動範囲は小学校区とおおむね一致するものが42.6%で最も多く、旧小学校区とおおむね一致するものが17.5%続く。母体となった既存組織は自治会・町内会が33.4%、その連合組織が30.0%で、母体がないものは13.8%にとどまる。数が増えたこと自体は追い風だが、増えた中身を見ると続かなくなる場所が見えてくる。

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収入の86.1%が市区町村から来ている

まず金の出どころである。主な収入源を第1位から第5位まで複数回答で聞くと、市区町村からの助成金・交付金等を挙げた組織が86.1%で圧倒的に多い。次が構成員からの会費の41.4%、寄附金の21.8%と続く。一方で国・都道府県等からの助成金・交付金等は6.4%、民間団体からの助成金は10.5%しかない。公的施設の指定管理料は12.8%、生活支援サービス等の利用料は19.7%、収益事業の収益は16.9%である。

収入の本数そのものも細い。回答のあった収入の項目数は2種類が29.5%で最も多く、3種類が26.7%、1種類だけという組織が19.1%ある。5種類あるのは9.5%にすぎず、収入項目がないという回答も1.7%あった。会費や補助金、寄附金以外の自主事業による収入の確保に取り組んでいる組織は45.2%で、半数に届かない。つまり多くの組織は、自治体の予算が細れば同じ年に活動が細る構造の上に立っている。施設整備そのものが目的化する失敗の型はハコモノはなぜ失敗するのかで扱ったが、運営組織の場合はもっと静かに、補助の縮小という形で現れる。

9割が法人格を持たないまま事業を抱える

組織の形も脆い。法人格の種類は任意団体が90.3%を占め、NPO法人が3.4%、認可地縁団体が2.1%、一般社団法人が1.2%にとどまる。株式会社等は0.3%、社会福祉法人は0.3%、農事組合法人は0.1%である。法人格がないということは、組織の名義で契約や不動産の保有ができず、職員の雇用や借入にも代表者個人が前に出ることになる。

抱えている仕事の幅は広い。活動内容は祭り・運動会・音楽会などのイベントが71.8%、交流事業が69.7%、健康づくり・介護予防と防災活動がそれぞれ62.0%、美化・清掃・草刈りが59.3%と続く。ここまでは任意団体でも回る。ただし公的施設の維持管理が21.1%、コミュニティバスやデマンドタクシーの運行が11.1%、買い物支援が10.9%、送迎サービスが7.5%、保育サービス・一時預かりが2.1%といった、責任と資格と保険が絡む事業も現に担われている。会計や税務、労務のノウハウ不足を課題に挙げた組織が19.8%ある点は、この落差の裏返しだろう。活動拠点を持つ組織は97.3%に達するが、そのうち64.3%は公共施設を使っており、拠点の継続も自治体の施設方針に左右される。

必要な場所にないという失敗

見落とされやすいのは、組織がない地域の存在である。回答した1,741市区町村のうち、地域運営組織があるのは903団体の51.9%で、ないのが838団体の48.1%を占める。問題は分布の偏りだ。地域ブロック別では中国地方が79.4%、四国地方が72.6%、近畿地方が60.4%と高いのに、北海道地方は20.7%しかない。

人口規模で切ると逆転が起きる。10万人以上30万人未満の市区町村では71.0%に組織があり、5万人以上10万人未満で69.5%、3万人以上5万人未満で63.1%と続くが、5,000人以上1万人未満では34.0%、5,000人未満では27.3%まで落ちる。都市分類でも中核市の85.5%、一般市の69.6%に対して、町村は36.3%、特別区は30.4%と低い。生活支援機能の低下がいちばん深刻なのは小規模な町村のほうなのに、支える仕組みはそこで最も薄い。これは個々の組織が失敗したという話ではなく、制度が届いていないという別種の失敗である。同じ構図は集落支援員3,270人と派遣職員833人の違いにも現れる。

市区町村の規模 地域運営組織が「ある」割合
10万人以上30万人未満 71.0%
3万人以上5万人未満 63.1%
1万人以上3万人未満 51.8%
5,000人以上1万人未満 34.0%
5,000人未満 27.3%

課題の順位と、支援を期待する順位がずれている

継続していく上での課題として最も多く挙がったのは活動の担い手となる人材の不足で82.2%。次のリーダーとなる人材の不足が64.2%、リーダーとなる人材の不足が56.5%、事務局運営を担う人材の不足が52.4%と、上位は人に関するものが並ぶ。役員・スタッフの高齢化は66.1%、地域住民の当事者意識の不足は44.5%、活動資金の不足は46.2%だった。

興味深いのは、同じ項目で「課題解決に当たり支援を期待するもの」を聞いたときの数字である。担い手となる人材の不足は82.2%が課題としたのに、支援を期待するのは42.6%に下がる。次のリーダーは64.2%に対して29.8%、事務局運営を担う人材は52.4%に対して28.2%。資金だけは46.2%の課題に対して38.3%が支援を期待しており、落差が小さい。人の問題は外から支援されるものだと思われていない、と読める。お金は要望として出せるが、担い手は自分たちで探すしかないと受け取られている。リーダー不在が何を招くかは地方創生でリーダー不在が致命傷になる理由でも整理した。学生が関わる余地はここにあり、入口の探し方はFLASPOでも扱っている。

項目 課題として挙げた 支援を期待する
活動の担い手となる人材の不足 82.2% 42.6%
次のリーダーとなる人材の不足 64.2% 29.8%
リーダーとなる人材の不足 56.5% 26.3%
事務局運営を担う人材の不足 52.4% 28.2%
活動資金の不足 46.2% 38.3%

よくある質問

「地域運営組織と自治会は何が違うのですか」。自治会・町内会は区域の住民が入る地縁の組織で、地域運営組織は複数の団体が参加する協議の場と、実際に事業を行う部分を併せ持つ。実際には重なりが大きく、構成団体として自治会・町内会が参加している組織は78.8%に達する。福祉関係の団体や民生委員・児童委員が57.5%、消防団などの防犯・防災・交通安全の団体が47.7%続く。

「法人化すれば続きやすくなりますか」。契約や雇用の面では動きやすくなる。ただし会計や税務、労務の手間は確実に増えるため、担える人がいないまま法人化すると事務局の負担が先に限界に来る。任意団体が90.3%を占める現状は、選ばなかった結果というより、選べなかった結果と見るほうが近い。

「学生や外部の人間が入れる活動はありますか」。数の多い活動ほど入りやすい。イベントの運営や交流事業、広報誌やWeb媒体での情報発信は57.1%の組織が行っており、地域の調査・研究・学習は20.4%、子どもの学習支援や放課後児童クラブは18.2%ある。構成団体として専門学校や大学が入っている組織は1.4%にとどまるので、余地は広い。

「出典はどこで見られますか」。実態把握調査結果の概要に主な数値が集まっており、報告書の本体には愛媛県や秋田県などの実例調査が載る。制度としての位置づけと予算額は総務省地域力創造グループの資料で確認できる。


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