地域にキャンパスを置く前に見る数字|誘致302団体と空振り27.5%

誘致に動いた市町村は4分の1だった

大学のキャンパスを地域に置くという話は、どの自治体でも一度は出る。ただし実際に動いた団体は多くない。内閣官房の委託により平成30年にまとめられた「東京圏の大学の地方サテライトキャンパス等に関する調査研究報告書」は、東京圏を除く43道府県と1,529市町村、合わせて1,572件にアンケートを送っている。回収は1,211件で、回収率は77.0%だった。この回答のうち、大学のキャンパスや研究所を呼び込もうと動いた経験があると答えた市町村は302団体で、全体のおよそ4分の1にあたる。

経験の有無は人口規模できれいに分かれる。人口10万人から20万人の層では約6割に誘致の経験があり、人口規模が小さくなるにつれて経験のある団体の比率も下がっていく。道府県の側では実数で12団体、割合では3割が誘致に動いていた。つまり「キャンパスを置く」という選択は、ある程度の人口と財政の厚みがある自治体から順に試されてきた手段である。なお、この調査でいう大学のキャンパス等には、学部・学科や大学院のほかに、短期大学、専門学校、附置研究所、研究室、セミナーハウスまでが含まれる。校舎が建つことだけを指す言葉ではない。

募集中の地域コンテスト

読んだら、地域に行ってみよう

地域が出したお題に、オンラインでアイデアを応募できます。受賞すると、現地に無料で招待されます。

募集中の地域をすべて見る

動いた団体の27.5%には何も残らなかった

誘致の結果を聞いた設問の答えが、この調査でいちばん重い。何らかの高等教育機関が設置された団体は72.5%で、何も設置されなかった団体が27.5%ある。動いた4団体のうち1団体は空振りだったことになる。理由として多かったのは「大学と進出条件等の折り合いが付かなかった」という回答だった。

時期で切ると、空振りは昔より増えている。平成元年度から平成14年度までに誘致の結果何も設置されなかった団体は22だったが、平成15年度以降では43に増えた。誘致できた中身も変わっている。立地したものとして最も多かったのは大学の学部・学科で168団体にのぼるが、これは平成の前半までに集中している。一方で研究所や研究室、関連施設は近年も増加傾向にあると報告書は整理している。学部をまるごと持ってくる時代は終わり、研究機能や拠点が置かれる時代に移ったという読み方になる。

時期 誘致しても何も設置されなかった団体
平成元(1989)年度〜平成14(2002)年度 22団体
平成15(2003)年度以降 43団体

道府県の側は打率が違う。誘致に動いた12団体のうち、何らかの高等教育機関が設置されたのは10団体で83.3%にあたり、何も設置されなかったのは2団体だった。市町村の72.5%より高い。用地の規模や交通基盤の整備、県立の高等教育機関という選択肢まで持てる分、条件の折り合いをつけやすいのだろう。今後の誘致を予定・検討している道府県は10団体で、呼びたい相手は大学の学部・学科が6団体、研究所が5団体、大学院・研究室がそれぞれ4団体だった。市町村の調査結果では、公共交通やアクセス道路の整備は市町村単体では難しいため道府県の協力を期待する声も挙がっている。

置いたあとに自治体が払い続けるもの

誘致は一度の支出では終わらない。報告書のヒアリング調査によれば、平成の前半までに大学等のキャンパスを誘致した自治体は、設置と運営の経費として合計で10数億円から100億円単位を負担しており、現在も研究費や運営費の補助、校舎の改修といった名目で財政的な支援を続けている。学生と教職員の生活インフラ、交通アクセスの整備も、多くは地元の自治体が引き受けてきた。

負担に見合う効果が出ない型も記録されている。キャンパスの周辺にアルバイト先が少ないと、学生は次第に近くの大都市へ住まいを移す。教職員も生活や子どもの教育環境を理由に地元に住まないことがある。さらに18歳人口の減少や志願者数の落ち込みを背景に、大学がキャンパスを大都市部へ戻す動きもある。土地や建物を提供し多額の助成をした自治体は、その引き留めに苦心していると報告書は書いている。経済圏が閉じた地域では、撤退の影響が周辺にまで及ぶ点も指摘されている。工場の誘致で同じ構図が起きることは、産業誘致はなぜ空回りするのかでも触れた論点と重なる。

いま誘致を考えている自治体が見ているもの

それでも関心が消えたわけではない。総合計画に意向を掲げている、公表していないが予定がある、検討中という団体を合わせると155団体あり、回答した市町村の1割以上を占める。きっかけとして最も多かったのは廃校などの跡地が発生したことで39団体、人口減少を挙げた団体が36だった。目的としては人口減少への対応が98団体で最多となり、産業振興の68団体が続く。検討の段階としては、進出意向のある大学を調査している段階という回答が47団体で最も多かった。

呼びたい相手の内訳も、かつてとは違う。新たに誘致したい施設・機能として挙がったのは、大学の学部・学科が58団体で首位だが、研究所が46団体、専修学校の専門課程が45団体、専門職大学等が43団体と続き、差は小さい。一方で課題は率直だ。回答した市町村の半数以上が「大学と条件で折り合いがつかない」と「どのようにして大学の誘致をおこなったらよいのかわからない」を選んでいる。国に求める支援については497団体が回答し、費用の助成を挙げた団体が半数を超えたほか、自治体の用地と進出意向のある大学を結びつける機能を200団体が望んでいた。

今後新たに誘致したい施設・機能(複数回答) 市町村
大学の学部・学科 58団体
研究所 46団体
専修学校の専門課程 45団体
専門職大学等 43団体

建物を置かずに大学機能を地域に入れる

報告書が示した変化のうち、学生にとって身近なのはこちらだろう。ヒアリングでは、キャンパスそのものではなく教育と研究のフィールドを地域に求める大学が増えていると整理されている。連携活動や交流を先に進めながら、サテライトなどの拠点整備につなげている自治体がある、という順序である。校舎の建設から始めるのではなく、ゼミや研究室が通う関係を先に作り、必要になった段階で拠点を置く。

大学側のヒアリングでも、地方にキャンパスを設置することが目的化することへの疑問が述べられている。地方に役立つ人材の育成は、必ずしもキャンパスを置くことではなく、学部や大学院の区別なくプログラムを作って地域産業の振興に役立てる形でも成り立つという意見である。自治体のニーズや地域資源をそのまま大学へ送っても動かず、個々の研究者が面白いと感じて始め、そこから広がっていく。だから背中を押す役が必要だ、という指摘もあった。実際にゼミ単位で地域に入る形がどれだけあるかは大学のゼミが地域に入る450件に、研究費の規模と自治体からの受託額の差は大阪大学の産学連携108億円に自治体は1,690万円にまとめている。学生として地域の活動に関わる入口を探すなら、FLASPOのような学生向けの情報源から当たるほうが早い場面もある。

よくある質問

「サテライトキャンパスと大学誘致は同じことですか」。同じではない。この調査でいうキャンパス等は学部・学科からセミナーハウスまでを含む幅のある言葉で、サテライトは本体を動かさずに拠点だけを置く形を指す。自治体が負う費用も、法人の設置認可が必要かどうかも変わる。

「数字が平成30年のもので古いのではないですか」。古い。ただし同じ設計で全国の自治体に当てたアンケートはその後に置き換わっていないため、誘致の成否と目的の分布を全国規模で見られる資料としては今も一次情報にあたる。新しい状況を知りたい場合は、内閣府が公開している地方公共団体と大学の連携事例集を地域ごとに読むのが近い。

「学生が関わる余地はありますか」。ある。回答した市町村が自前でできる支援として半数近くが挙げたのはインターンシップや就職活動の支援で、約3分の1の団体が学生の研修先や実習先の確保・手配を挙げている。誘致という言葉から想像される用地交渉よりも、受け入れの現場に近い部分に手が足りていない。

「出典はどこで確認できますか」。一次情報は次の3点である。東京圏の大学の地方サテライトキャンパス等に関する調査研究報告書 概要版(平成30年10月)、同報告書の本体、および内閣府のサテライトキャンパスのマッチング支援ページ。いずれも誘致を検討する自治体向けに作られているが、関わる側が読んでも相手の事情がよく分かる。


アイデアコンテストプラットフォーム「FLASPO」

FLASPO

アイデア1つで、地域や企業とつながれる。

FLASPOは、全国の自治体・企業が開催する若者向けアイデアコンテストのプラットフォームです。
地域や企業が抱える課題に対して、あなたのアイデアで解決策を提案できます。

賞金やユニークな地域体験が獲得できるコンテストも多数。誰でも参加無料・オンライン完結で挑戦できます。

コンテストを探す▶︎

FLASPOで募集中のコンテスト

自治体や企業が出したお題に、学生・若者がオンラインでアイデアを応募できます。募集中のものも、これまでのお題と結果も、一覧で見られます。