輸出まで届く中小企業は21.0%|地域の会社が伸びる差はどこか

地域で事業を始めた人が「いずれ海外にも売りたい」と話すとき、その「いずれ」はどれくらい現実的なのか。2026年版の中小企業白書を開くと、直接輸出に取り組んでいる中小企業は2023年度で21.0%だった。5社のうち1社という割合で、裏返せば8割は国内だけで商いをしている。この21.0%の内側で何が起きているかを数字で追うと、海外へ出る順番が見えてくる。

5社に1社という現在地

白書が使っているのは経済産業省「企業活動基本調査」を再編加工した数字で、直接輸出額が1百万円以上の企業を輸出実績があるものとして集計している。2023年度の直接輸出企業割合は大企業が28.6%、中小企業が21.0%だった。企業規模の区分は中小企業基本法上の定義に沿う。

ここで言う直接輸出は、商社などを通さずに自社で海外へ出す形を指す。地域の小さな事業者が最初にたどり着くのは、むしろ間接輸出や越境ECを使った形だろう。それでも21.0%という水準は、海外販売が特別な挑戦ではなく、一定数の中小企業が通ってきた道であることを示している。

注意したいのは、この割合が「輸出をやめた企業」を含まないという点だ。1997年度からの推移を見ると中小企業の割合はおおむね横ばいで、新しく始める企業と撤退する企業が入れ替わっている可能性がある。始めることと続けることは別の話で、後者のほうが難しい。

割合が動かないこと自体も読みどころだ。為替や関税のような外の条件は20年以上のあいだ何度も変わったのに、輸出に届く企業の比率はその影響をあまり受けていない。社内に海外とやり取りできる人がいるかどうかという、もっと手前の条件で決まっている可能性が高い。

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売り先はアジアに6割が寄っている

白書は中小企業の直接輸出先地域の推移も載せている。2023年度の構成比は「その他アジア」が40.1%で最も大きく、「中国(香港含む)」が23.7%、「北米」が15.7%、「ヨーロッパ」が11.6%と続く。中国とその他アジアを合わせると63.8%で、アジアに6割以上が集まっている形だ。

この偏りは、距離と輸送費、商習慣の近さの表れでもある。生鮮品や加工食品のように鮮度が売り物になるものほど、近い市場が有利になる。一方で、北米やヨーロッパの比率が一定を保っているのは、単価の高い工芸品や機械部品のような分野が支えているからだと読める。

地域で何を作っているかによって、狙うべき地域は変わる。全国の構成比をそのまま自社の計画に当てはめると、輸送方法や表示規制の前提がずれる。産地の名前をどう扱うかという論点は特産品のPRを学生が担うときでも触れた。

輸出に出た企業は、付加価値の伸び方が違う

白書が引いている帝国データバンクの調査では、2019年以降に直接輸出に取り組んだ事業者と、輸出に取り組んでいない事業者で、付加価値額の増加率の中央値を比べている。2024年と2019年を比較した結果は、直接輸出に取り組んだ企業が23.0%、取り組んでいない企業が18.7%だった。回答数はそれぞれ856者と10,113者である。

差は4.3ポイントで、劇的と呼ぶほどではない。ただ中央値での比較である点は重く、一部の成功企業が平均を押し上げた結果ではないことを意味する。輸出に出たから伸びたのか、伸びる体力がある企業が輸出に出たのかは、この図だけでは決められない。因果の向きを決めずに読むのが正しい使い方だ。

それでも、国内市場が縮んでいく地域にとって、同じ商品を別の市場へ持っていく選択肢が数字の上で成立していることは確かめられる。人口が減る前提で事業計画を立てるなら、売り先の数を増やす方向は検討に値する。

効果を高めた取組の順位に、入り口がある

同じ調査は、輸出に取り組んだ事業者に対して、効果を高めるために何をしたかを複数回答で聞いている。回答1,668者の分布は次のとおりで、上位に来たのは設備投資や資金ではなく、人と情報に関わる取組だった。

輸出の効果を高める取組 回答率
現地パートナーとの連携 41.2%
展示会・商談会への参加 23.6%
海外の市場調査 21.2%
製品・商品・サービスの現地最適化 17.6%
専門人材の採用・育成 10.0%
輸出戦略の策定 9.5%
ブランドイメージの具体化 7.9%
外部専門家等の活用 7.8%
SNS・デジタル広告の運用 4.9%
特にない 25.2%
2026年版中小企業白書の概要(図表の出典は帝国データバンク「令和7年度中小企業の経営課題と事業活動に関する調査」、複数回答、n=1,668)

目を引くのは「特にない」が25.2%で、現地パートナーとの連携に次ぐ位置にあることだ。輸出に取り組んだ4社に1社は、効果を高める取組を特に挙げていない。戦略の策定が9.5%、ブランドイメージの具体化が7.9%という低さも同じ方向を指している。引き合いが来たから出した、という始まり方が珍しくないのだろう。

学生が引き受けられる工程は下から三つめにある

表のうち、海外の市場調査21.2%、専門人材の採用・育成10.0%、SNS・デジタル広告の運用4.9%の三つは、学生が関わりやすい領域である。現地パートナーとの交渉や価格の決定は経営の判断だが、どの国で何がいくらで売られているかを調べ、商品説明を現地の言葉に置き換え、問い合わせの来る経路を作る作業は、時間と語学力があれば担える。

特にSNS・デジタル広告の運用が4.9%で最下位に近いことは、裏を返せば空白が大きいという意味になる。国内向けの発信を海外向けに作り替えるには、季節の表現や決済の案内まで組み替える必要があり、現場の人手では後回しになりやすい。地方の中小企業と大学生の接点については地方の中小企業と大学生の協働に整理がある。

外部環境の変化も頭に入れておきたい。白書は、米国関税措置等に伴う相談窓口を全国約1,000か所に設置し、令和8年1月26日時点で8,751件の問い合わせがあったと報告している。相談内容は関税措置の詳細が中心で、実際に影響を受けている企業では販売先からの受注減少や仕入価格の上昇を挙げる回答が多かった。越境ECから始めるという選択肢は特産品のEC販売でも扱っている。地域の事業者と学生をつなぐ入口としては、FLASPOのような窓口から募集を探す方法もある。

よくある質問

21.0%という割合は、何をもって輸出とみなしているのか。白書の注記では、直接輸出額が1百万円以上の企業を輸出実績があるものとして集計している。年に100万円に届かない小口の販売や、商社を経由した間接輸出はこの割合に入らない。実際に海外へ商品が渡っている企業は、この数字より多いと考えるのが自然だ。

付加価値額の増加率の差は、輸出のおかげと言えるのか。言えない。白書の図は2019年以降の取組状況で事業者を分け、2024年と2019年の付加価値額を比べたものにすぎない。もともと成長していた企業が輸出へ進んだ可能性は排除されていないため、因果を主張する根拠には使えない。

小さな事業者はどこから手をつけるとよいのか。回答率の順位をそのまま手順と読むなら、まず現地で一緒に売ってくれる相手を探し、展示会や商談会で接点を作り、その前段として市場を調べるという並びになる。戦略の策定が9.5%しかない現状を踏まえると、調べる工程を先に置くだけで差がつく余地はある。

地域で起業したばかりでも使えるのか。白書の集計対象は企業規模で区切られており、創業年数では分けられていない。ただ、上位に並ぶ取組のうち市場調査と現地最適化は、商品の数が少ない段階のほうが手をつけやすい。品目を絞って一つの国に合わせてみることから始める形になる。

元の資料はどこにあるのか。本稿の数字は2026年版中小企業白書・小規模企業白書の概要から取った。詳しい分析は2026年版中小企業白書の本編に収められており、過去の年版は中小企業庁の中小企業白書のページから辿れる。


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