自治体の採用試験はいつ動くか|1,788団体の日程と方式の実態

申込は大学3年生の3月、最終合格は4年生の6月

民間企業の面接が本格化するころ、都道府県庁の採用試験はすでに申込を締め切っている。総務省が令和7年10月1日時点でまとめた附帯調査では、令和8年4月1日付けで入庁する人を対象にした試験のうち、受験者が最も早く申し込める時期を「大学3年生の3月」と答えた都道府県が37団体にのぼった。47団体のうち8割近くである。指定都市も17団体が同じ時期を挙げ、2月と答えた2団体を合わせると20団体のうち19団体が3年生の冬までに窓口を開けている。

最終合格の時期はさらにはっきりしている。都道府県で最も多いのは「大学4年生の6月」で36団体。5月が4団体、7月が2団体で、ほぼすべてが夏を迎える前に採用候補者名簿への登載を終える。指定都市も6月が16団体で最多だった。つまり県庁や政令市を本命に据えるなら、3年生の秋に準備を始めて冬に出願するという段取りになる。4年生になってから情報を集め始めると、本命の受験機会そのものが残っていないことがある。総務省の通知資料(別紙2)に団体数の内訳が載っている。

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市区町村は半年ずれて動く

同じ地方公務員でも、市や町の試験は都道府県とまったく別の時計で動いている。申込時期として最も多いのは「大学4年生の5月」で365団体、次に4月の262団体、7月の260団体、6月の169団体が続く。最終合格は4年生の8月が325団体で最多、9月が228団体、11月が226団体で、12月に名簿へ載せる団体も104ある。年明けの1月や2月に最終合格を出す団体も合わせて47ある。

この差は、受験する側にとっては救いにもなる。県庁の一次試験で思うような結果が出なくても、市役所や町村役場の出願はまだ開いている可能性が高い。逆に、市町村だけを見て「公務員試験は4年生の春から」と理解してしまうと、都道府県の日程に間に合わない。志望する団体区分ごとに締切を一覧化しておくほうが、参考書を一冊増やすより効く。日程の全体像は公務員試験のスケジュールの記事でも整理している。

競争率は4.6倍まで下がった

「公務員は狭き門」という前提は、数字の上では崩れている。総務省の令和5年度の調査によると、競争試験の受験者数は399,199人で前年度から39,452人減った。合格者数は86,753人で1,949人増えており、競争率は4.6倍。前年度から0.6ポイント下がっている。10年前の平成26年度は受験者が約55万3千人で競争率7.0倍だったから、受験者は4分の3に減り、門の幅はむしろ広がったことになる。

ここでいう競争率は受験者数を合格者数で割った値であり、採用予定数に対する倍率とは別物である。申込段階の数と実際に会場へ来た数も一致しない。指標の読み分けは公務員試験の倍率の記事に譲るが、少なくとも「受験者が減り続けている」という傾向は総務省の調査結果の概要で一貫して確認できる。採用する側から見れば、これは人材確保の危機である。だからこそ試験の中身が動いている。

試験の中身が静かに置き換わっている

令和7年4月1日時点で全国1,788団体に聞いた取組状況を見ると、一般行政職の採用でどこに力が入っているかがわかる。最も広がっているのは手続のデジタル化で、オンライン申込やウェブ面接の導入が1,123団体。都道府県47団体と指定都市20団体はすべて実施済みである。次が年齢上限の引上げや撤廃で923団体、そして教養試験に代わるSPIなどの適性検査の導入が871団体にのぼる。

取組(一般行政職) 都道府県 指定都市 市区町村 合計
採用手続のデジタル化 46 20 1,057 1,123
年齢上限の引上げ・撤廃 25 9 889 923
教養試験に代わるSPI等の適性検査 40 14 817 871
試験会場の管外設置 35 10 562 607
年度途中の採用枠の設置 11 8 569 588
試験日程の早期化 36 11 467 514
人物試験の配点比率の増加 26 11 427 464
通年募集枠の設置 8 2 231 241
令和7年度人材育成等に関する調査(令和7年4月1日時点、n=1,788)より作成。単位は団体

この並びが示しているのは、法律や経済の知識量で差がつく部分が縮み、面接と集団討論で見られる部分が広がったという構図である。人物試験の配点比率を上げた団体が464、口述の比重が上がれば、話せる経験の中身が問われる。教養試験の対策に半年を費やす前に、自分が何をどこでやってきたかを言葉にできるかを確かめたほうが早い。

どこに配属されるのかを先に知る

合格したあとに働く場所の大きさも、受ける前に見ておきたい。総務省の定員管理調査では、令和7年4月1日現在の地方公務員は280万9,298人で、前年から2,451人減っている。この減少は定年引上げに伴って2年に1度まとまった定年退職者が出る制度上の要因によるもので、平成29年以降は微増から横ばいが続いている。団体区分で見ると都道府県が142万8,860人で50.9パーセント、市町村等が138万438人で49.1パーセントとほぼ半分ずつである。

部門別の構成はもっと重要だ。教育、警察、消防に福祉関係を加えた職員が190万5,469人で67.8パーセントを占め、自治体が自主的に人数を決められる余地が大きい一般行政部門は95万628人、33.8パーセントにとどまる。都道府県だけで見ると一般行政部門は23万9,165人で16.7パーセントしかない。「県庁で地域づくりに関わる」という志望を立てるなら、その椅子が全体の6分の1だという前提から逆算することになる。職種ごとの人数の内訳は公務員の種類の記事にまとめてある。

新卒で入れなかったあとの道も開いている

中途採用の広がりは、学生にとっては保険として知っておく価値がある。令和5年度の中途採用試験は受験者76,471人に対して採用者11,131人、採用倍率6.9倍で、前年度から1.8ポイント下がった。実施した団体は1,103で、令和元年度の794団体から5年で309団体増えている。市区町村だけでも1,036団体が実施しており、令和6年度には約7割の団体が中途採用を行っている。

一方で、受け入れる側の悩みも調査に出ている。中途採用の課題として「募集をしても、応募者や求める人材が集まらない」を挙げた団体は1,419のうち682。「採用時の初任給や職階の設定が難しい」が486、「昇任・昇格などのバランスを取ることが難しい」が552と続く。民間で数年働いてから地元に戻る選択は、以前より現実的になった。地域で働く進路そのものを比べたいときはFLASPOの企画や募集も手がかりになる。

よくある質問

Q. 都道府県と市役所の両方を受けられますか。A. 日程が半年ずれているため、併願は制度上も現実的にも可能である。都道府県の最終合格が4年生の6月に集中し、市区町村の最終合格は8月から11月に広く分布しているので、片方の結果を見てから次に動く余裕がある。ただし同一日に一次試験が重なる組み合わせはあるので、要項で確認したい。

Q. 教養試験の勉強は不要になったのですか。A. 不要ではない。SPIなどの適性検査を導入した団体は871あるが、これは1,788団体のうちの一部で、従来型の教養試験を続ける団体も多い。志望先が公表している試験科目を一件ずつ見るのが確実である。

Q. 年齢の上限はどうなっていますか。A. 一般行政職で上限の引上げや撤廃に取り組んだ団体は923、技術職では937、資格職では1,000に達している。大学院進学や留年、民間を経てからの受験でも、以前ほど年齢が壁になりにくくなっている。

Q. いつから準備を始めるべきですか。A. 都道府県や指定都市が本命なら3年生の春から夏が現実的な起点になる。3年生の3月に申込が開く団体が最も多く、その時点で志望先と受験区分が決まっていないと間に合わない。市区町村中心なら4年生の春からでも間に合うが、面接で話す材料は前年までの活動に依存する。


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