祖母が通っていたデイサービスが閉じ、次の送り先が車で40分先になった。地元にもう一つあればいいのにと思って調べ始めると、介護は社会福祉法人がやるものだという説明にぶつかる。会社として始める道はないのか。ここが最初につまずく場所だ。
答えはサービスの種類によって変わる。厚生労働省の介護サービス施設・事業所調査は、どの種類の事業所を誰が開いているかを構成割合で公表している。数字を並べると、会社が主役になっている領域と、社会福祉法人や医療法人でなければ事実上成り立たない領域が、きれいに分かれていることがわかる。
訪問介護は36,905事業所あり、その7割は会社が開いている
令和5年10月1日現在の調査では、訪問介護の事業所数は36,905で、前年より485事業所、1.3%増えた。5年の並びは34,825、35,075、35,612、36,420、36,905で、毎年増え続けている。従事する訪問介護員は500,872人である。
開設や経営の主体を見ると、訪問介護では営利法人が72.2%を占める。ここでいう営利法人は会社法に基づく株式会社や合同会社などで、調査の注記でも旧有限会社を含むと定義されている。次に多いのが社会福祉法人の14.4%、医療法人5.4%、特定非営利活動法人4.1%という順だ。
つまり訪問系のサービスは、すでに会社が担う形で広がっている。地域で新しく始める場合も、同じ枠組みに入ることになる。福祉は非営利の組織が行うものという前提は、少なくとも訪問介護の実態には合っていない。
サービスの種類ごとに、担い手の顔つきが違う
同じ介護保険のサービスでも、営利法人の比率は大きく振れる。物を貸し出す事業では9割を超え、入所して生活を支える事業では1割に届かない。
| サービスの種類 | 営利法人(会社)の割合 | 最も多い主体 |
|---|---|---|
| 特定福祉用具販売 | 95.5% | 営利法人 |
| 福祉用具貸与 | 94.9% | 営利法人 |
| 訪問入浴介護 | 76.0% | 営利法人 |
| 地域密着型通所介護 | 76.4% | 営利法人 |
| 訪問介護 | 72.2% | 営利法人 |
| 訪問看護ステーション | 64.0% | 営利法人 |
| 通所介護 | 54.4% | 営利法人 |
| 居宅介護支援 | 53.6% | 営利法人 |
| 小規模多機能型居宅介護 | 47.6% | 営利法人 |
| 認知症対応型通所介護 | 38.7% | 社会福祉法人(41.6%) |
| 短期入所生活介護 | 9.7% | 社会福祉法人(85.5%) |
この並びには理由がある。用具の販売や貸与は在庫と配送の仕事に近く、訪問系は人を配置できれば始められる。一方で、泊まりや入所を伴うサービスは建物と夜間の体制が必要で、初期投資と人員の厚みが条件になる。参入のしやすさがそのまま構成割合に出ているとみてよい。
会社では入りにくい領域がはっきりある
施設の側に目を移すと、数字の偏りはさらに大きい。介護老人福祉施設はいわゆる特別養護老人ホームで、社会福祉法人のうち社会福祉協議会以外が95.6%を占める。地域密着型介護老人福祉施設では社会福祉法人が99.1%に達し、残りは市区町村の0.9%だけだ。
医療に近い領域では医療法人が中心になる。介護老人保健施設は医療法人が75.6%、介護医療院は89.0%、介護療養型医療施設は78.9%である。通所リハビリテーションも医療法人が78.8%で、短期入所療養介護は77.3%だった。いずれも病院や診療所と併せて運営する形が前提になっているため、単独の会社が後から入る余地は小さい。
相談の窓口にあたる介護予防支援事業所、いわゆる地域包括支援センターは、社会福祉法人が56.7%、地方公共団体が21.0%で、営利法人は2.0%にとどまる。行政の委託で動く性格が強い領域だと読める。
指定を受ける前に、法人であることを求められる
介護保険のサービスを提供して報酬を受けるには、事業者としての指定が必要になる。この指定を受けられる者の範囲は介護保険法第70条第2項第1号で都道府県の条例に委ねられており、各地の条例はそこを具体化している。
京都府の「介護保険法に基づく指定居宅サービスの事業の人員等の基準等に関する条例」は、第4条で法第70条第2項第1号の条例で定める者は法人とすると定めている。個人として申請する道は閉じているという意味だ。つまり起業の順番は、まず法人を作り、人員と設備の基準を満たし、そのうえで指定を申請する流れになる。
指定の相手も種類で変わる。訪問介護や通所介護のような居宅サービスは都道府県が、小規模多機能型居宅介護や地域密着型通所介護のような地域密着型サービスは市町村が所管する。後者は市町村の介護保険事業計画に沿って整備されるため、計画に枠がなければ新規の指定は進まない。始める地域を決めたら、その自治体の計画を先に読むことになる。
需要は増えるが、人を確保できるかで決まる
事業として続くかどうかを分けるのは、利用者ではなく働く人の数である。厚生労働省が令和6年7月に公表した第9期介護保険事業計画に基づく推計では、必要な介護職員は2026年度に約240万人、2040年度に約272万人となった。
基準になる2022年度の介護職員数は約215万人で、2026年度までに約25万人、1年あたり6.3万人の増加が要る計算だ。2040年度までで見ると約57万人、1年あたり3.2万人になる。推計は市町村が計画に位置づけたサービス見込み量をもとに都道府県が積み上げたもので、総合事業のうち従前の介護予防訪問介護に相当する分も含む。
この数字は、新しく事業所を開く側にとっては採用の競争が続くという前提になる。訪問介護のように会社が多数を占める領域では、同じ地域の事業所と人を取り合うことにもなる。地域で何かを始める段取り全体は地域起業と移住|任期を終えた隊員の23.5%が出ていくに、建物から考える場合は古民家で起業するという選択|飲食業308人と空き家バンク19,075件に整理がある。家族の介護を抱えながら働く人の規模は家族の介護でUターンするとき|働く365万人と離職10.6万人の内訳で確かめられる。学生のうちから地域の事業者と接点を作りたい場合は、FLASPOのような募集の場から現場を見ておくと、制度の話が具体的になる。
よくある質問
株式会社でも介護事業はできますか。できます。訪問介護では営利法人が72.2%を占め、福祉用具貸与では94.9%に達します。ただし指定を受ける前に法人を設立しておく必要があり、人員と設備の基準を満たすことが条件です。
特別養護老人ホームを会社で運営することはできますか。調査の数字では介護老人福祉施設の95.6%が社会福祉法人で、営利法人の表示はありません。地域密着型の同種施設では社会福祉法人が99.1%を占めます。会社として入る領域は、訪問系や通所系、用具の貸与や販売に寄ると考えるのが現実的です。
小さく始められるサービスはどれですか。建物の整備を伴わない訪問系は初期の負担が軽い側です。ただし訪問介護は事業所数が36,905まで増えており、同じ地域に複数ある前提で考える必要があります。利用者の送迎や夜間の対応をどこまで引き受けるかで、必要な人員は変わります。
需要はこれからも増えますか。国の推計では必要な介護職員が2040年度に約272万人まで増えます。需要そのものは拡大する見通しですが、同時に1年あたり3.2万人の増員が必要とされており、人を集められるかどうかが制約になります。
出典は次のとおりです。厚生労働省「令和5年介護サービス施設・事業所調査の概況」(gaikyo.pdf)、同「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」(001274765.pdf)、介護保険法、京都府の指定居宅サービスの人員等の基準等に関する条例。
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