ゼミで通った集落に、卒業後も関わりたい。そう考えて先輩に聞くと、就職先が県外に決まって年に一度戻るだけになった人と、そのまま近くの市役所に入った人の二通りが出てくる。同じプロジェクトに入っていたのに進む先が分かれるのは、本人の熱量だけの話ではない。
大学に入る時点で、学生はすでに大きく動いている。どこの高校から、どこの大学に入ったのか。その出発点が、卒業後に地域へ残るかどうかの土台になる。文部科学省は県ごとの進学の流れを数字で公表しているので、まずそこから見ていく。
大学の入学者のうち、県内出身は4割強にとどまる
学校基本調査をもとに文部科学省が示している自県内入学率は、入学者のうち、その大学がある県の高校を卒業した人の割合である。大学では令和7年度が43.8%で、令和6年度の43.3%から0.5ポイント上がった。令和2年度は42.7%で、長く42%台から43%台の間を動いている。
短期大学は様子が違う。令和7年度は66.7%で、令和6年度の68.2%、令和5年度の69.6%からは下がったが、それでも入学者の3分の2が県内の高校出身である。通学の範囲で進学先を決める人が多い学校種だと読める。
この差は、地域のプロジェクトに誰が集まるかにそのまま効いてくる。四年制大学の教室には、半分以上が県外から来た学生が座っている。地域に入る企画を立てても、参加する学生の過半は地元の事情を知らないところから始めるという前提になる。
自県の大学に進む割合は、県によって4倍以上ひらく
学生の側から見た数字もある。文部科学省の地域大学振興に関する有識者会議が令和7年10月に出した都道府県別基礎データでは、各県の大学進学者のうち自県の大学へ進んだ人の割合を自県進学率として県ごとに示している。2023年の値で、最も高いのは東京都の68.3%だ。
| 都道府県 | 自県進学率(2023年) |
|---|---|
| 東京都 | 68.3% |
| 北海道 | 65.6% |
| 福岡県 | 65.2% |
| 大阪府 | 59.7% |
| 宮城県 | 55.1% |
| 広島県 | 52.5% |
| 長野県 | 18.8% |
| 香川県 | 17.4% |
| 佐賀県 | 15.4% |
| 鳥取県 | 15.1% |
| 奈良県 | 15.0% |
上と下では4倍以上の開きがある。東京都、北海道、福岡県のように大学が集まっている地域では、地元の高校生が地元の大学に入る流れが太い。一方で奈良県や鳥取県、佐賀県では、進学する人の8割以上が県の外へ出ていく。隣県に大学が集まっている地域ほど、この値は下がる。
大学のプロジェクトを通じて地域に関わる学生がどこにいるかも、ここから見当がつく。自県進学率の低い県の出身者は、進学と同時に県外へ出ているため、地域に関わる機会は進学先の周辺で探すことになる。
流入と流出の差は、県ごとに向きが決まっている
同じ資料は、県に所在する大学への入学者を、県外の高校から来た人と、県内の高校から県外の大学へ出た人の両方で示している。2023年の愛知県は、大学入学者が39,130人で、県外から入ってきたのが15,037人、県内から出ていったのが10,926人だった。差し引きで4,111人の入り超である。
千葉県は入学者30,831人に対し、県外からの流入16,608人、県内からの流出20,265人で、3,657人の出超になる。北海道は入学者21,536人、流入4,941人、流出7,408人で、資料には流出入差として2,467人の出超が記載されている。自県進学率が65.6%と高い北海道でも、進学の場面では人を送り出す側に立っているということだ。
資料の定義では、県外から流入は大学が所在する県以外の高校卒業者がその大学に入った数、県内から流出は県内の高校卒業者が自県以外の大学に入った数を指す。過年度の卒業者も含むため、浪人を経て進学した人も数に入っている。入学定員は学部の所在地で数えており、1年次を別の県のキャンパスで学ぶ学部はそのキャンパスのある県に計上されている。数字を比べるときは、この数え方の前提をそろえておく必要がある。
この向きは、卒業時の選択にも関わる。出超の県では、地元に残った学生と戻ってくる学生の両方を数えないと若い世代の層が薄くなる。地域のプロジェクトが外から来た学生を受け入れる意味は、ここにある。
プロジェクトは移住の手前にある経験として機能する
大学の地域プロジェクトは、住む場所を決める行為ではない。行き先の地域で何日か過ごし、誰と話したかが残る経験であって、その先に移住が続くかどうかは別の条件で決まる。ただし、判断に必要な材料を集められる期間であることは確かだ。
在学中に確かめられるのは、通勤や買い物の距離感、冬の天候、医療機関までの時間、家賃の水準といった生活の土台である。どれも就職活動の面接では聞きにくく、短い滞在では見えにくい。授業として地域に入る形の違いは地域留学という選択|大学生が国内の地域で学ぶ仕組みと単位の扱いに整理があり、大学側の事業の枠組みは大学の地域事業は就活でどう効くか|SPARCと交付金の骨組みにまとまっている。
進学者そのものが減っていく見通しも押さえておきたい。2040年に向けた進学者数の推計は2040年に大学進学者は46万人になる|地域連携の枠組みはどう変わるかで扱っている。受け入れ側の大学や自治体にとって、学生との接点を作る動機はこれから強まる方向にある。地域の企画や募集を探す段階ではFLASPOのような場に集まる情報も手がかりになる。
在学中から移住を考えるときの順番
順番を間違えると、卒業の直前に選択肢がなくなる。先に決めるべきは地域ではなく、働く形である。
最初に、その地域で自分の職種の求人が出るかを確かめる。年に数件しか出ない職種なら、就職と移住を同時に成立させるのは難しい。次に、住む場所の候補を1か所ではなく複数持つ。プロジェクトで通った集落に住居がなくても、同じ市町村の中心部なら見つかることがある。
三つ目に、住居の探し方を在学中に一度試す。賃貸の情報が不動産会社の店頭にしかない地域もあり、空き家の貸し出しは自治体の窓口や地域の人づてで動くことが多い。卒業の直前に探し始めると、条件の合う物件が出るまで待てない。
そのうえで、関わり方の濃さを選ぶ。年に数回通う形から、数か月滞在する形、住民票を移す形まで段階があり、最初から最後の段に進む必要はない。進学の時点で県外に出た人なら、まず戻る頻度を上げることから始めるほうが現実に合う。最後に、地域側の担当者と連絡が続く状態を作っておく。大学のプロジェクトが終わると関係も切れることが多いため、卒業前に個人として連絡が取れる相手を確保しておくと、数年後に再び動くときの入口になる。
よくある質問
自県内入学率と自県進学率は何が違いますか。自県内入学率は、ある大学の入学者のうち同じ県の高校を卒業した人の割合で、大学の側から見た数字です。自県進学率は、ある県の大学進学者のうち自県の大学に進んだ人の割合で、学生の側から見た数字です。分母が違うため、同じ県でも値は一致しません。
地元の大学に進むほうが地域に残りやすいのですか。公表されている数字はそこまでを示していません。自県進学率が高い県でも、北海道のように進学の時点では人を送り出している例があります。残るかどうかは就職先の求人や家族の事情が絡むため、進学先だけでは決まりません。
県外出身でも地域のプロジェクトに入れますか。入れます。四年制大学では入学者の半分以上が県外出身という状態なので、受け入れ側も県外出身の学生を前提に組んでいます。地元の事情を知らない分は、滞在の初期に聞く手間として見込んでおくとよいでしょう。
在学中にどこまで決めておくべきですか。移住の可否までは決めなくてかまいません。職種の求人が出る頻度、住める場所の候補、連絡が続く相手の三つが分かっていれば、卒業後に判断を持ち越しても選択肢は残ります。
出典は次のとおりです。文部科学省「短期大学について」掲載の自県内入学率(学校基本調査による)、地域大学振興に関する有識者会議 参考資料2「各都道府県における高等教育の現状に関する調査研究 都道府県別基礎データ」令和7年10月22日(mxt_daigakuc01-000045461_14.pdf)。
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