読む側は多いのに、書く側はほとんどいない
地方での暮らしを調べていると、個人が書いた記録に行き当たる。家賃、雪かきの頻度、車の維持費、近所づきあい。行政の資料には出てこないことが書かれているので重宝する。では、そういう記録を出している人はどのくらいいるのか。総務省の令和7年通信利用動向調査報告書(世帯編)に答えがある。SNSの利用目的を複数回答で聞くと(n=27,723)、「自分の情報や作品などの発信のため」と答えた人は10.7%だった。
同じ質問で最も多いのは「従来からの知人とのコミュニケーションのため」の86.1%、次が「知りたいことについて情報を探すため」の65.6%である。探す側が三分の二、出す側が一割。「新たな交流関係を広げるため」も11.4%にとどまる。SNSそのものの利用率は79.4%で、13歳から59歳の各年齢階層では8割を超えているのに、その中で発信に回る人はこれだけしかいない。
ブログに近い項目はさらに動きが鈍い。「ホームページやブログの閲覧、書き込み、または開設・更新」は54.5%で、令和5年の56.6%、令和6年の55.4%から三年続けて下がっている。閲覧も含めた数字なので、開設・更新だけを取ればもっと小さい。移住の体験記が貴重に見えるのは、書き手が希少だからである。
サービスごとに分けると投稿する人の少なさが際立つ
総務省情報通信政策研究所の令和7年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査は、サービスごとに「見る」だけの人と「書き込む・投稿する」人を分けて数えている。令和7年度の全年代では、LINEは利用92.9%に対して投稿51.2%。連絡手段なので当然この比率になる。問題は、それ以外の落差である。
| サービス | 利用全体 | 書き込む・投稿する |
|---|---|---|
| LINE | 92.9% | 51.2% |
| YouTube | 81.5% | 4.2% |
| 54.8% | 18.0% | |
| X(旧Twitter) | 44.7% | 9.6% |
| TikTok | 36.7% | 2.7% |
| 27.0% | 6.2% | |
| ニコニコ動画 | 12.1% | 0.7% |
動画を見る人は八割を超えるのに、上げる人は4.2%。写真の共有が中心のInstagramでも18.0%である。Xの投稿は前年度の10.7%から9.6%へ下がった。つまり地域の情報を外に出す行為は、どのサービスを選んでも少数側に立つことになる。検索から読まれる形を残したいなら、流れて消えない置き場所を持つ意味はまだある。
ブログの信頼度は八つのメディアで最下位に置かれている
希少であることは、信用されることと別の話だ。同じ調査が、テーマごとにどのメディアを信頼できるかを聞いている。国内の社会問題について2025年の全年代の結果を見ると、テレビ74.3%、インターネットニュースサイト48.3%、ソーシャルメディア18.4%、そして「ブログ、その他のサイト」は5.4%だった。八つの選択肢のうち最も低い。
この数字には、そもそもブログを情報源として使っていない人も含まれている。使っている人だけで取り直すと13.4%まで上がるが、新聞の81.8%やテレビの78.1%とは桁が違う。メディアとしての信頼度でも、新聞58.8%、テレビ57.9%に対してインターネットは26.3%、雑誌は12.9%という並びになっている(N=1,800)。
書く人が少ないから読まれる、しかし信じられてはいない。移住の記録を出す人が置かれているのはこの位置である。ここを踏まえずに「現地の本当の声」を売りにすると、読み手の警戒とすれ違う。数字を扱うなら出どころを添える、という手間がそのまま差になる。
相談は個人のブログではなく窓口へ7万件以上集まっている
では移住を考えている人はどこへ行くのか。公益社団法人ふるさと回帰・移住交流推進機構の2025年の発表(2026年2月24日公開)によれば、面談・電話・メール・見学・セミナー参加を合わせた相談は73,003件だった。2024年の61,720件から18.3%増え、5年続けて過去最高である。7万件を超えたのはこの年が初めてだ。
希望地のアンケートは2025年1月7日から12月26日にかけて行われ、回答は27,242(窓口相談13,202、セミナー17,481、両者に重複あり)。窓口相談部門は群馬県が2年連続で1位、2位が栃木県、3位が長野県。セミナー参加者部門は群馬県、長野県、和歌山県の順だった。この順位は全国の移住者数ではなく、東京の窓口に来た人とセミナーに参加した人の希望を集めたものである点に注意がいる。実際の人の動きとのずれは希望と実数のずれとして別に読む必要がある。
個人の発信が一割、窓口への相談が7万件超。この二つを並べると、書く側の役目が見えてくる。判断の材料を全部そろえる場所にはならない。窓口や自治体の資料にたどり着くまでの入口になる、という役目のほうが現実に合っている。相談件数と転入超過の読み方を押さえておくと、自分の記録をどこに位置づけるか決めやすい。
信頼度5.4%の場所で、それでも残る書き方
信頼が低いメディアで信用を足す方法は、結局のところ検証できる形にしておくことに尽きる。家賃や光熱費を書くなら、何年何月の自分の契約かを添える。人口や転入超過を書くなら、自治体の統計のどの表かを示す。補助金の額を書くなら、要綱の名前と年度を入れる。読み手が確かめられるなら、書き手が有名である必要はない。
逆効果になりやすいのは、出どころのない数字を断定で書くことだ。「補助金は最大100万円」のような表現は、年度と自治体と要件が抜けると使えないどころか誤解を生む。制度は毎年変わるので、公表日を書いておくほうが古くなったときに読み手を守る。
書く順番としては、自分の条件を先に開示するのが早い。世帯の人数、仕事の形、車の有無、通える距離。条件が違えば結論も違うことが前提になり、読み手が自分の場合に置き換えられる。発信を仕事に寄せていく道筋は任期後に地域の発信を仕事にするでも触れている。地域と人のつながり方を広く見るならFLASPOもあわせて使ってほしい。
よくある質問
移住ブログは今から始めても遅いですか。書く人が増えすぎている状況ではない。SNSで自分の情報や作品を発信する人は10.7%、ブログ関連の項目は三年続けて下がっている。読み手は多く、出し手は少ないという構図は変わっていない。
SNSとブログはどちらを選ぶべきですか。目的で分かれる。知り合いに届けるならSNSで足りるが、検索から後から見つけてもらうなら残る置き場所が要る。投稿率で見るとInstagramが18.0%、Xが9.6%で、流れていく前提の場だと蓄積は作りにくい。
自治体の資料を引用するとき気をつけることは何ですか。公表日と資料名を必ず添える。制度の数字は年度で変わり、調査は時点で変わる。リンクを張っても相手がファイルを差し替えることがあるため、本文に名称と日付を書き残しておくほうが安全である。
自治体から依頼を受けて書く場合はどうすればよいですか。依頼を受けたことがわかる表示を入れる。表示がないまま中立の感想に見せる形は避ける。報酬の有無にかかわらず、関係を明かしておくほうが読み手との摩擦が少ない。
ブログの信頼度が低いのは内容が悪いからですか。そうとは言えない。調査は媒体の種類について聞いているので、個々の記事の質とは別の評価である。ただし読み手が疑いから入ることは前提になるので、確かめられる材料を置く意味は大きい。
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