地域の広報誌や観光サイト、祭りの記録映像を手がけている人が、もとは地域おこし協力隊だったという話は珍しくない。では任期を終えてその仕事で生計を立てている人は何人いるのか。総務省が令和8年4月に公表した調査には、定住した隊員のなりわいが区分ごとに並んでいる。発信の仕事はそこに単独の名前では載っておらず、二つの区分に分かれて入っている。
任期を終えた8,762人の行き先
調査の対象は、令和2年4月1日から令和7年3月31日までの直近5年間に任期を終えた隊員である。その数は8,762人で、うち6,163人、およそ70.3パーセントが同じ地域に住み続けた。調査時点は令和7年5月1日。令和7年3月末までに任期を終えた隊員は累計で15,045人にのぼり、前回の調査から2,363人増えている。
住んだ場所はさらに細かく分かれる。活動地と同一の市町村内に残ったのが5,038人で全体の57.5パーセント、近隣の市町村内が1,125人で12.8パーセント、他の地域へ転出したのが2,013人で23.0パーセントだった。転出した人のうち228人は、活動地と関わりのある地域協力活動などに従事しているとされている。離れても縁が切れるわけではない。
なりわいの内訳が公表されているのは、同一市町村内に定住した5,038人についてである。起業が2,296人で45.6パーセント、就業が1,753人で34.8パーセント、就農と就林が583人で11.6パーセント、事業承継が70人で1.4パーセント。残った人のうち半数近くが自分で事業を立てているという構成になる。
起業の業種に、発信の仕事はどう入っているか
2,296人の起業の内訳は、業種ごとの人数で示されている。最も多いのは飲食サービス業だが、二番目に来る区分に発信の仕事が含まれている。
| 業種 | 人数 | 資料に挙げられた例 |
|---|---|---|
| 飲食サービス業 | 308名 | 古民家カフェ、農家レストラン |
| 美術家(工芸含む)、デザイナー、写真家、映像撮影者 | 217名 | - |
| 宿泊業 | 181名 | ゲストハウス、農家民泊 |
| 小売業 | 174名 | パン屋、移動販売、農作物の通信販売 |
| 観光業 | 130名 | ツアー案内、日本文化体験 |
| 6次産業 | 101名 | 猪や鹿の食肉加工・販売 |
| 出版・広告業 | 80名 | ライター、広報作成 |
| まちづくり支援業 | 80名 | 集落支援、地域ブランドづくりの支援 |
発信にあたる区分は二つある。デザイナーや写真家、映像撮影者を含む217名と、ライターや広報物の作成を例に挙げた出版・広告業の80名だ。合計297名で、起業した2,296人の約13パーセント、同一市町村内に定住した5,038人の約6パーセントにあたる。飲食と宿泊に次ぐ規模があり、細い道ではない。
ただし人数の多さをそのまま追い風と読むのは早い。表に並んだ数字は準備中の人も含む集計であり、どの程度の収入になっているかは示されていない。わかるのは、この形で地域に残った人が一定数いるという事実までである。
217名が束ねているもの
注意したいのは、217名の区分名が四つの職種をまとめている点である。美術家には工芸が含まれると明記されており、陶芸や織物で独立した人と、企業の動画撮影を請ける人が同じ箱に入っている。したがって映像やデザインで独立した人が217名いる、という読み方はできない。
出版・広告業の80名のほうは、例として挙げられているのがライターと広報作成なので、輪郭はつかみやすい。地域の広報誌や観光パンフレット、自治体のサイトの文章を請ける形が想定される。隣にあるまちづくり支援業の80名も、地域ブランドづくりの支援という例から見て、発信の工程と重なる部分が大きい。
国の統計がこういう束ね方をしているのは、発信だけを本業にしている人がまだ数として立っていないからでもある。実際には撮影とライティングと企画を一人で抱え、季節によって農作業や宿の手伝いを混ぜる働き方が多い。区分の粗さは、そのまま現場の兼業の姿を映している。
雇われる形で発信に関わる道
独立とは別に、就業した1,753人の内訳も公表されている。最も多いのは行政関係の480名で、自治体職員や議員、集落支援員が例に挙がっている。次が観光業の176名、農林漁業の138名、地域づくり・まちづくり支援業の99名、教育業の78名、医療・福祉業の72名と続く。
自治体の広報担当や移住相談の窓口は、この行政関係の480名のなかに入る。採用の形は会計年度任用職員から正規採用まで幅があり、任期中に広報を担当していた隊員がそのまま役場の広報に移る例もある。収入が安定する代わりに、発信の方針を自分では決められない立場になる。
観光業176名と地域づくり支援業99名も、仕事の中身に発信が入りやすい。観光協会や地域の中間支援組織が、サイトの運用や撮影を職員の業務として抱えているからだ。独立の前に数年そこで働き、発注の仕組みと地域内の関係を覚えてから出る順番も現実的である。
受け皿の広さは隊員数の側からも見える。同じ資料によると令和7年度の隊員数は前年度から286名増の8,196人、取り組んでいる自治体は11団体増の1,187団体で、受入可能な1,461団体の約81パーセントにあたる。制度を使っていない自治体は2割を切った。発信の担い手を外から入れる窓口は、全国にほぼ行き渡っていることになる。
任期の3年で何を積んでおくか
この道で残るうえで厳しいのは、発注元が地域の内側に限られることである。自治体と観光協会、商工会、個別の事業者が主な相手で、どれも年度ごとに予算が決まる。任期中に受け取る報償費は切れるのに、仕事の単価は一度決まると動きにくい。だから任期の終盤ではなく、2年目のうちに有償の仕事を一件でも通しておくかどうかが分かれ目になる。
積んでおくと効くものは、作ったものそのものより、誰と作ったかの記録である。広報誌の一号分を任されたか、祭りの撮影を町から発注されたか、移住の相談会の資料を仕上げたか。こうした履歴は次の発注の根拠になり、地域の外から仕事を取るときの材料にもなる。転出した2,013人のうち228人が関わりを残しているのは、この種の履歴が効いた形だろう。
進路の全体像は地域おこし協力隊の卒業後の進路一覧|データで見る5つの道に、同じ調査の別の区分から読んだ道は任期後に教育の仕事へ進む協力隊員|78人の内訳と受け皿の作り方と協力隊の起業補助金は任期後3年まで|2026年度の拡充を読むにまとめてある。学生のうちから地域の発信に関わる方法はFLASPOの事例が入口になる。
よくある質問
協力隊の任期後に発信の仕事で独立した人は何人いますか。
総務省の調査では、デザイナーや写真家、映像撮影者を含む区分が217名、ライターや広報作成を例とする出版・広告業が80名である。区分が複数の職種を束ねているため、発信専業の人数としては読めない。
起業と就業ではどちらが多いのですか。
活動地と同一の市町村内に定住した5,038人のうち、起業が2,296人で45.6パーセント、就業が1,753人で34.8パーセントだった。起業のほうが多い。
自治体の広報職員になる道はありますか。
就業1,753人のうち行政関係が480名で最も多く、自治体職員や集落支援員が例に挙げられている。広報の担当はこの区分に含まれる。
定住率はどのくらいですか。
直近5年間に任期を終えた8,762人のうち6,163人、およそ70.3パーセントが活動地と同一または近隣の市町村に住み続けている。
他の地域へ移った人はどのくらいいますか。
直近5年間に任期を終えた8,762人のうち2,013人、23.0パーセントが他の地域へ転出している。そのうち228人は活動地と関わりのある地域協力活動などに従事していると記されており、住む場所を移しても仕事の縁が残る例がある。
元の資料はどこで読めますか。
人数と区分はいずれも総務省が令和8年4月24日に公表した「令和7年度 地域おこし協力隊の隊員数等について」に収められた定住状況等に係る調査結果による。報道資料は総務省の報道資料のページから辿れる。
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