名前が二度変わった制度を追いかける
求人を探していて「地域おこし企業人」と「地域活性化起業人」が別の制度に見えたなら、それは探し方の問題ではない。総務省の令和6年度 地域活性化起業人の状況等には「H26〜R2は『地域おこし企業人』」と注記があり、同じ仕組みが令和3年度に改称されただけだと分かる。三大都市圏などに所在する企業の社員を自治体が一定期間受け入れ、そのノウハウを地域の課題解決にあてる取組に、国が特別交付税で財源措置をする。これが骨組みで、名前が変わっても構造は動いていない。
規模は10年で桁が変わった。平成26年度は17団体で22人。令和2年度に148人、令和3年度に395人、令和4年度に618人、令和5年度に779人と伸び、令和6年度は871人である。内訳は企業派遣型780人と副業型91人で、前年度から92人増えた。受け入れた自治体は439団体で、企業派遣型421団体と副業型45団体が一部重複している。令和6年度から副業型が加わり、令和7年4月には退職したシニア層を対象とする「地域活性化シニア起業人」も創設された。資料を読むときは、まずそれが何年度の、どの型の話なのかを確かめたい。
観光を抜いて最多になった分野
871人はどんな仕事に就いているのか。分野別に数えた結果では、最も多いのがDX(自治体DX・地域社会DX)の255人で全体の29パーセントを占める。次が観光振興・観光誘客対策・DMO設立等の189人(22パーセント)、三番目が地域経済活性化・雇用対策・人材育成・企業誘致等の93人(11パーセント)だった。型で分けると企業派遣型はDXが238人で30パーセント、副業型は観光19人に次いでDXが17人(19パーセント)である。
前年度と並べると、この順位は最近入れ替わったものだと分かる。企業派遣型の比較表では、DXが令和5年度の200人から令和6年度は238人へ38人増え、観光振興等は216人から170人へ46人減った。中間支援機能に関する業務は6人から22人へ、1年で16人増えている。逆に総務(政策調整・行政改革・公有財産利活用等)は24人から14人へ減った。合計が779人と780人でほぼ変わらないなかで分野の構成だけが動いているので、自治体側の課題認識がどこへ移ったかが読み取れる。
| 分野(企業派遣型) | 令和5年度 | 令和6年度 | 増減 |
|---|---|---|---|
| DX(自治体DX・地域社会DX) | 200人 | 238人 | +38人 |
| 観光振興・観光誘客対策・DMO設立等 | 216人 | 170人 | -46人 |
| 地域経済活性化・雇用対策等 | 72人 | 78人 | +6人 |
| 地域産品の開発・販路開拓等 | 75人 | 59人 | -16人 |
| 移住促進・都市農村交流等 | 50人 | 42人 | -8人 |
| 中間支援機能に関する業務 | 6人 | 22人 | +16人 |
| 合計 | 779人 | 780人 | — |
庁内の仕事と地域の仕事は別に数えられている
同じ「DX」の枠に入っていても、現場でやっていることは二つに割れる。公表された令和6年度の活用事例を読むと、その差がはっきり出る。福岡県川崎町と株式会社フォーバルの組み合わせでは、中小企業のDX化の伴走支援をしてきた派遣元のノウハウを使い、町の商工会と連携して産業のDXに関する講演会を開いた。これは町内の事業者に向いた仕事である。一方で同じ派遣者は、庁内のDX推進に向けた事項の整理と企画立案も担い、管理職向けのDX研修と若手職員中心のチーム会議を回している。行政の内側と民間側の両方を扱いながら、DX人材の育成そのものを進める形だ。
副業型だと範囲はもっと絞られる。山梨県丹波山村と株式会社NTTドコモの事例では、村民が村の最新情報を知らない、情報がばらばらで把握しにくいという課題に対し、「村公認LINE」を新しく立ち上げた。最新情報やごみ収集日程表を配信し、デジタル・デバイドの解消を狙う取組である。岐阜県山県市と株式会社Specialist Entertainmentの例では、同じ企業から2名がDXと教育の分野で別々に活動し、市の商工会議所へのITツール導入と、地元中学生向けのキャリア教育プログラムの企画提案を分担した。募集要項に「DX」とだけ書かれていたら、庁内の業務改善なのか、商店や中小企業に向かう支援なのか、住民向けの情報発信なのかを面談で確かめるのが早い。
三つの型で要件とお金の出方が変わる
入口は一つではない。企業派遣型は自治体と企業が協定を結び、企業が社員を派遣する。国の財政措置は受入れ期間中に要する経費が1人あたり上限590万円で、令和7年度から引き上げられた。受入れ前に要する経費は1団体あたり上限100万円(措置率0.5)、派遣者が発案・提案した事業に要する経費は1人あたり上限100万円(措置率0.5)が別枠で置かれている。
副業型は自治体と社員個人の契約で、勤務日数・時間は月4日以上かつ月20時間以上、リモートも可とされる。ただし受入自治体での現地滞在日数は月1日以上が必要で、契約期間は6か月から3年である。特別交付税は報償費等が上限100万円、旅費が上限100万円で、合計の上限は1人あたり200万円となる。令和7年4月に創設されたシニア型は、企業を退職した個人と自治体が契約を結ぶ形で、要件と措置は副業型と同じ扱いだ。対象となる市町村の範囲も型で違い、三大都市圏外の市町村などを含む1,433市町村が基本の対象、三大都市圏外の政令市・中核市・県庁所在市に勤める社員を使える範囲はそこから政令市などを除いた1,375市町村である。募集の形は応募は市町村の公募から始まる|地域おこし企業人の三つの型と要件で整理している。
送り出している企業の偏り
受け入れ側だけでなく、出す側にも集まり方がある。令和6年度に企業派遣型を活用した企業は390社で、前年度から60社増えて過去最高となった。平成26年度は15社だったので、26倍の規模である。人数の多い順では株式会社JTBが40人、合同会社DMM.comが24人、ソフトバンク株式会社が22人、AKKODiSコンサルティング株式会社が21人、富士通Japan株式会社が17人と続く。副業型は社員個人と自治体の契約なので活用企業数には含めず、所属企業は80社と別に数えられている。
人の属性にも傾きがある。企業派遣型と副業型を合わせた871人のうち男性が713人(81.9パーセント)、女性が158人(18.1パーセント)だ。年齢構成は20代が113人(13.0パーセント)、30代が219人(25.1パーセント)、40代が227人(26.1パーセント)、50代が232人(26.6パーセント)、60歳以上が80人(9.2パーセント)で、企業派遣型は40歳以上が6割以上、副業型は30〜49歳で6割以上を占める。都道府県別では北海道の132人が最も多く、三重県58人、福島県44人、新潟県40人が続いた。20代でこの制度に関わるなら、人数の薄い層に入ることになると知っておきたい。制度全体の人数の散らばりは地域おこし企業人は今どこにいるか|地域活性化起業人871人の内訳、自治体側のデジタル施策の現状は地方創生DXの成功事例|生成AI導入30%と重点8項目の現在地が参考になる。学生のうちから地域の仕事に触れておきたい人には、FLASPOのような若者と地域をつなぐ場も入口になる。
よくある質問
地域おこし企業人と地域活性化起業人は違う制度でしょうか。同じ制度です。平成26年度から令和2年度までが「地域おこし企業人」で、令和3年度から「地域活性化起業人」に改称されました。古い資料と新しい資料で呼び方が違うだけなので、年度を見て読み分ければ足ります。
新卒で応募できるのでしょうか。企業派遣型は企業に在籍している社員を自治体が受け入れる形なので、まず対象になる企業に勤めていることが前提です。副業型も企業に所属する社員個人が契約する仕組みで、シニア型は退職者向けです。学生が直接入る枠は置かれていません。
DX分野の派遣はIT企業からだけでしょうか。そうとは限りません。令和6年度の事例では、中小企業の伴走支援を手がける企業や通信事業者だけでなく、エンターテインメント分野の企業からもDXの担当者が入っています。扱う課題が庁内の業務改善か、地域の事業者支援か、住民向けの情報発信かで、求められる経験も変わります。
どの自治体が受け入れているか調べる方法はあるのでしょうか。総務省が年度ごとに出す資料には、都道府県別と市町村別の実績が人数まで載っています。実績のある自治体は仕組みを運用した経験があるので、過去の分野別の活用内容と合わせて見ると、次の募集の見通しが立てやすくなります。
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