自治体職員が大学で働く制度|北海道大学のLRAと道内8機関の枠組み

「地域連携」と書かれた窓口の正体を確かめる

大学のサイトで地域連携のページを開くと、協定の締結や公開講座の案内が並んでいて、学生がどこから入れるのかは見えにくい。北海道大学の場合は、内閣府が公開している地域中核大学イノベーション創出環境強化事業の令和4年度採択校フォローアップ調書を読むと骨組みが出てくる。令和5年7月付のこの調書には、構想が三つの柱で組まれていると書かれている。社会連携組織の新設、自治体との人材交流・人材育成、そして産学官金連携の場の形成である。

三つ目の「場」には具体名がついている。北海道の課題発掘と課題解決についてブレインストーミングをする場として発足した「北海道創発会議」を、令和5年度以降も定期的に開催することが決まった。ハード面では既存施設を改修した「オープンイノベーションサロン」が、計画どおり令和5年9月下旬のオープンに向けて準備されていた。大学の自己資金も投入し、社会貢献を通じて外部資金の獲得額を増やすという設計で、調書の自己評価には寄附講座や産業創出講座が新設され財源の多様化が進んだと記されている。地域連携という言葉の下に、組織・人・場所・お金の四つが並んでいることになる。

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LRAという耳慣れない肩書き

二つ目の柱に出てくるのがLRA(Local Research Administrator)認定制度だ。大学の研究支援人材を指すURAという職名は知られているが、こちらは自治体側に軸がある。仕組みは双方向で、自治体から大学へ、大学から自治体へ、人を行き来させる。OJTによって産学連携の業務を理解し、専門の知見を得た者をLRAとして認定し、地域課題を解決するための人材として送り出す。研修を受けて終わりではなく、認定という形で肩書きが残るところが特徴である。

調書の時点での実数は小さい。LRAの候補生として、北海道、札幌市、岩見沢市から計4名が北海道大学で産学連携業務に従事していた。逆向きには、北海道と札幌市へ大学職員が人材交流として各1名出向している。合わせて6人である。制度を立ち上げた段階の数字なので、ここから広がるかどうかは今後の資料を待つしかない。ただ、自治体の職員が数年のあいだ大学の中で働くという経路が正式に用意されたこと自体が、従来の協定とは違う。協定書の多くは組織と組織を結ぶだけで、人が動く設計までは踏み込まないからだ。

大学院生を受け入れてほしいという要望はどこから出たか

学生の側に用意された入口も、同じ調書に書かれている。LRA認定制度を進めるなかで地方自治体から要望が多かったのが「大学院生の受け入れ」だった。これに応えるため、全学的な仕組みの構築が検討され、課題を抱える自治体と大学院生とを結びつけるシステムを作ると明記されている。学生を送り出したい大学が自治体を探すのではなく、人手と専門性を欲しい自治体が大学院生を名指しで求めた形である。

この順序は進路を考えるうえで意味がある。地域の仕事を探すとき、学生側は「受け入れてもらう」立場で考えがちだが、自治体の側には埋まらない役割がある。調査研究の設計、データの整理、外部資金の申請書づくりといった業務は、庁内の人員では回しにくい。大学院で手法を身につけた人が数か月単位で関わると前に進む領域だ。北海道大学の構想では、札幌市と制定した「ふるさと納税を活用した大学応援メニュー」を他の自治体にも作ってもらえるよう交渉するとも書かれており、資金の経路まで含めて組み立てようとしている。関わる窓口の探し方は京都大学の地域創生プロジェクト|学生が入れる窓口はどこかと並べて読むと、大学ごとの差がわかる。

道内8機関で組んだ枠組み

一校だけでは足りないという判断も、文書として残っている。北海道大学が公開した北海道ユニバーシティアライアンス要綱は令和5年6月19日から施行された。目的は、道内に所在する大学等が各々の特色と強みを生かしながら、教育、研究、社会連携、産学連携に関する情報の収集・共有・解析と具体的事業の検討・実施を連携して行い、北海道における地域課題の解決に資することとされている。運営会議は構成大学等の長で構成し、議長は互選で任期2年、庶務は議長が所属する大学等が処理する。参加を希望する大学等は運営会議の議を経て加えられる仕組みで、入口は閉じていない。

構成大学等(要綱の別表) 区分
国立大学法人北海道大学 総合大学
国立大学法人北海道教育大学 教員養成
国立大学法人室蘭工業大学 工学系
国立大学法人北海道国立大学機構 法人(3大学を設置)
国立大学法人北海道国立大学機構小樽商科大学 商学系
国立大学法人北海道国立大学機構帯広畜産大学 農畜産系
国立大学法人北海道国立大学機構北見工業大学 工学系
国立大学法人旭川医科大学 医学系

別表に並ぶのは8機関で、総合大学に加えて教員養成、工学、商学、農畜産、医学が揃う。北大の調書は、この枠組みによって道内の多くの大学がそれぞれの地域の課題解決を目指して実務レベルで連携し、起業や新産業を創出するための大学連携が実現したとしている。将来的には道内の大学コンソーシアムの形成も構想に挙がっている。自分の関心が農業なのか医療なのか交通なのかで、どの大学の資源に近いかが変わってくる。

国の枠組みの中に大学が置かれている場所

大学の地域連携は、各校の善意だけで動いているわけではない。内閣官房と内閣府がまとめた地方創生10年の取組と今後の推進方向には、地方大学・地域産業創生交付金を通じて全国で12の産学官連携による地域の取組を支援してきたと書かれている。高知県と高知大学が施設園芸分野でAIやIoTを使うデータ駆動型農業に取り組み、島根県と島根大学が地域に伝わる「たたら」製鉄を踏まえた先端金属材料拠点の創出を進めるといった例が挙がる。12件という数は、この種の大型支援が限られた数の地域に集まっていることを示している。

進学先の分布に直接効いている仕組みもある。同じ文書によれば、東京23区内の学部収容定員の増加抑制は地方大学・産業創生法によって2018年から10年間の時限措置として導入された。ただし産業界のニーズが高いデジタル人材の育成については、一定の要件のもとで限定的な例外措置が2023年6月に設けられている。10代後半と20代の東京圏への転入超過が続いているという認識が背景にあり、受け入れる側の定員を調整する形で手が入っていることになる。共同研究の実数から規模を測るなら自治体と大学の共同研究は何件あるか|地方別の実績から確かめる、連携という語の受け取り方の差は自治体の96%と大学の40%|連携という言葉がすれ違っている場所が参考になる。制度の外側で地域と関わる方法を探すなら、FLASPOのような若者向けの場も選択肢に入る。

よくある質問

LRA認定制度は学生も対象になるのでしょうか。公表されている調書では、LRAは自治体職員を中心とした人材交流の枠として説明されています。学生については、自治体からの要望を受けて大学院生の受け入れの仕組みを別に構築すると書かれており、同じ枠ではありません。

北海道ユニバーシティアライアンスに参加すると何ができるのでしょうか。要綱の上では、構成大学等が情報を共有し具体的な事業を連携して検討・実施する枠組みです。学生向けのプログラムとして何が提供されるかは要綱に書かれていないため、個々の大学や学部の募集を確認する必要があります。

道外の大学からでも北海道の地域連携に関われるのでしょうか。アライアンスは道内に所在する大学等で構成されるため、組織としての参加はできません。ただし自治体の側が大学院生や外部人材を求めている事実は変わらないので、自治体の公募や個別の研究室の取組を経路にすることは考えられます。

こうした情報はどこで探せばよいのでしょうか。国の事業として採択された大学は、構想の内容と進捗を調書の形で提出しており、内閣府や文部科学省のサイトで公開されています。大学の広報より具体的な数字と課題が載っているので、気になる大学名と事業名で探すのが早い方法です。


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