誘致された拠点は関係人口を生むか|1,348箇所と北海道110の現実

看板は出ているのに、中に人がいない日がある

地方の商店街や古民家に、都市の企業名が掲げられた小さな事務所が入っていることがある。自治体が誘致したサテライトオフィスだ。前を通っても人の気配がない日が続き、本当に稼働しているのか分からない、という話を地元の学生から聞くことは珍しくない。

この感覚には裏づけがある。総務省が令和4年10月26日に公表した地方公共団体が誘致又は関与したサテライトオフィスの開設状況調査のうち、開設した企業384箇所から回答を得た部分を見ると、常駐の要員を置く「常駐型」は250箇所で65パーセント、常駐を置かず短期的に使う「循環型」が127箇所で33パーセントだった。3つに1つは、人が通ってくる場所である。

さらに、常駐型の中でも常駐社員が1人から5人という回答が193箇所、77パーセントを占める。拠点の数と、そこに実際にいる人の数は、桁がかなり違う。

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92から1,348へ、10年の増え方

それでも拠点そのものは増え続けてきた。自治体側への調査で集計された全国の開設数は、次のように推移している。

年度末 開設数(累計) その年度の開設 その年度の減少
平成24年度 92箇所 132箇所 40箇所
平成29年度 429箇所 107箇所 19箇所
平成30年度 576箇所 166箇所 19箇所
令和元年度 710箇所 176箇所 42箇所
令和2年度 916箇所 263箇所 57箇所
令和3年度 1,348箇所 505箇所 73箇所
出典:総務省「サテライトオフィスの開設状況について(地方公共団体調査)」(令和4年10月26日公表、令和3年度末時点)。同一の調査が示す年度別の系列から抜粋した。

注目したいのは減少の列である。令和3年度は505箇所が新たに開き、同じ年に73箇所が閉じた。開設が増えるほど撤退も増えており、10年を通じて毎年どこかの拠点がたたまれている。誘致した数だけが語られがちだが、残る割合は別の話だ。

伸び方の形も見ておきたい。平成24年度末の92箇所から平成29年度末の429箇所までは5年で4.7倍、そこから令和3年度末の1,348箇所までは4年で3.1倍になった。後半の加速は感染症の流行による働き方の見直しと重なっており、令和2年度と令和3年度の2年だけで768箇所が新しく開いている。制度や補助に引かれて一気に増えた分が、どれだけ定着するかはこの先の集計を待つしかない。

北海道110、新潟95という置かれ方

都道府県別に見ると、令和3年度末の最多は北海道の110箇所、次いで新潟県の95箇所だった。以下は80箇所台から60箇所台にいくつかの県が並び、一桁にとどまる県もある。全国に均等に散っているわけではない。

北海道と新潟が上位に来るのは、面積と市町村数の多さに加えて、空き施設の供給と自治体側の誘致施策が重なった結果と読める。逆に言えば、自分の住む県に拠点がいくつあるかは、全国値の1,348からは推し量れない。関わり先を探すときは、県単位の数を確かめるところから始めたほうが早い。

この調査が対象にしているのは、自治体が誘致したか、開設に関与した拠点に限られる。企業が自力で借りた拠点は入っていないため、実際に地方で稼働しているサテライトオフィスはこれより多い。1,348という数は、地域側が関与を持っている拠点の数だと受け取るのが正確である。

入っているのは、どんな会社なのか

企業側384箇所の回答からは、拠点の性格が読み取れる。オフィスの形態は独自事務所が244箇所で64パーセント、シェアオフィスが132箇所で34パーセント。業種は情報サービス業等が261箇所で68パーセントを占め、ソフトウェア開発やウェブ制作、データ入力、広告制作といった業務が並ぶ。

回線さえあれば成立する仕事が中心で、地域の一次産業や製造業と直接つながる業種は多くない。地元で働き口が増えるという期待と、実際に置かれた機能との間には距離がある。詳しい内訳は開設企業調査の結果にまとまっている。

一方で、循環型が3分の1を占めるという事実は、別の読み方もできる。常駐しないということは、本社から短期で人が入れ替わり立ち替わり来るということでもある。地域の側から見れば、一人と長く付き合う形ではなく、多くの人が少しずつ訪れる形になる。

関係人口として数えられるのは、どこからか

では、そこに来る社員は関係人口に入るのか。国土交通省が令和7年6月27日に公表した関係人口の実態把握に関する調査では、18歳以上のうち訪問系が約18パーセントで約1,884万人、非訪問系が約4パーセントで約379万人、合わせて約2,263万人と推計されている。

この調査は居住地以外の特定の地域との関わりを尋ねており、業務での訪問も関わり方のひとつとして拾われる。年間の訪問日数は1日以下が約20パーセント、2日から7日が約49パーセント、8日以上が約31パーセント。循環型の拠点に月に数日通う社員は、日数のうえでは上位3割に入る層と重なる。

ただし、関係人口として地域に効いてくるかどうかは、日数より接点の作り方で決まる。同じ調査で、関係人口になるために改善してほしい点として挙がったのは、時間的な余裕の確保が27.4パーセント、金銭的負担の軽減が26.7パーセント、交通の利便性の改善が26.4パーセント。拠点があることは、このうち時間と交通の壁を部分的に取り払う。あとは地域の側が、その社員に話しかける機会を作れるかどうかである。

関わり方の中身も調査に出ている。訪問系の関わり方は複数回答で、趣味や消費を目的とする型、イベントなどに参加・交流する型、地域の課題に直接寄与する型の順に多い。業務で通う社員は、地域の事業に関わる限りでは三つ目に近い位置にいるが、最初から直接寄与型として入るわけではない。移動の手段としては自家用車が約58パーセントで、公共交通が細い地域ほど、通う側の負担が交通費と時間に跳ね返る。

学生の側から見ると、こうした拠点はインターンや短期の業務委託の入口になりうる。数が伸びない理由を数字で押さえるなら関係人口が増えない理由を数字で見る|時間・お金・交通という壁、働き方の側から入るなら副業は関係人口を続かせるか|年間8日以上31%と移動の壁、分類そのものを確かめたい場合は関係人口の種類と分類|訪問系と非訪問系、5つのタイプで関わりを読むが手がかりになる。地域との接点を探す段階ならFLASPOも併せて見ておきたい。

よくある質問

1,348箇所という数字は最新なのか。総務省のこの調査で公表されている最も新しい集計は令和3年度末時点で、公表は令和4年10月である。以降の年度について同じ形の全国集計は出ていないため、最新値として扱うときは時点を添えておきたい。

サテライトオフィスとテレワーク拠点は同じものか。重なるが同じではない。この調査が数えているのは、企業が業務の拠点として地方に置いた事務所であり、個人が利用するコワーキングスペースや自治体が整備したお試し施設は、企業が入居していなければ対象に入らない。

拠点に通う社員と地域はどう接点を持つのか。多いのは、自治体が主催する交流会や地域イベントへの参加、空き家や商店街の再生に関する協議への同席である。常駐が1人から5人という規模を踏まえると、組織どうしの連携より、顔の見える個人のつながりが先に立つ。

学生が関わるにはどこを見ればよいか。拠点の所在は、誘致した自治体の企画課や産業振興課が把握している。県単位の開設数を先の調査で確かめ、そのうえで自治体の窓口に問い合わせるのが近道だ。情報サービス業が7割という構成から、プログラミングやデザインの経験は接点になりやすい。


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