引き継ぎの資料にアカウントの一覧が並んでいることがある。XとInstagramは先月の投稿で動いているのに、Facebookページの最後の投稿だけ3年前という組み合わせは珍しくない。閉じるのか、戻すのか。判断の材料は担当者の好みではなく、どの年代がその画面を開いているかという数字の側にある。
引き継いだアカウントに、Facebookだけ眠っている
自治体や観光協会の発信を学生が手伝う場面では、媒体の数そのものが最初の負担になる。4つも5つも渡されて、どれも同じ頻度で回そうとすれば月の半分が投稿づくりで埋まる。先に決めたいのは、何を載せるかより、どれを残すかである。
Facebookページは、公式アカウントの中でいちばん早く作られていることが多い。2010年代の前半に開設され、担当者の異動のあたりで更新が途切れる。止まった媒体は古いものと見なされやすいが、古さと届かなさは同じ意味ではない。残っている読み手がいるかどうかは、別に確かめる必要がある。
総務省情報通信政策研究所は、13歳から79歳までを対象にメディアの利用実態を毎年調べている。令和6年度の調査は同年12月2日から8日まで、全国125地点の1,800人に訪問留置の方法で実施された。この結果を媒体ごとに並べると、Facebookの立ち位置はほかとはっきり違う形で出てくる。
全年代26.8パーセント、山は30代と40代にある
令和6年度調査でのFacebookの利用率は、全年代で26.8パーセントだった。同じ調査のLINEは91.1パーセント、YouTubeは80.8パーセント、Instagramは52.6パーセント、Xは43.3パーセント、TikTokは33.2パーセントである。順位だけを見れば、主要な媒体の中では下のほうに置かれる。
年代別に並べ替えると様子が変わる。10代は13.6パーセント、20代は22.9パーセント。そこから上がって30代が39.2パーセント、40代が38.6パーセントに達し、50代は32.1パーセント、60代は26.6パーセント、70代は8.1パーセントまで下がる。頂点は30代と40代にある。
ほかの媒体は山の位置がまったく違う。Instagramは20代の78.0パーセント、TikTokは10代の65.7パーセント、Xは20代の78.0パーセントが頂点である。10代の数字が1割台にとどまるのは、この調査で並べられた7つのサービスのうちFacebookだけだった。若い年代ほど低く、働き盛りの年代で山を迎える形は、ほかに見当たらない。
届けたい相手は、画面を開いている時間が短い
利用率は「使っているか」を測る数字で、どれだけ長く見ているかは別に調べられている。同じ調査はインターネットの利用項目ごとの平均利用時間も年代別に出しているので、Facebookの利用率と並べてみる。
| 年代 | Facebook利用率 | SNSを見る・書く(平日) | 同(休日) |
|---|---|---|---|
| 全年代 | 26.8% | 34.7分 | 40.0分 |
| 10代 | 13.6% | 67.0分 | 80.2分 |
| 20代 | 22.9% | 67.0分 | 88.6分 |
| 30代 | 39.2% | 48.0分 | 53.1分 |
| 40代 | 38.6% | 35.7分 | 40.9分 |
| 50代 | 32.1% | 31.5分 | 34.0分 |
| 60代 | 26.6% | 15.0分 | 15.8分 |
| 70代 | 8.1% | 6.0分 | 3.0分 |
右の2列は、利用率の山とちょうど逆を向いている。10代と20代は平日に67.0分をソーシャルメディアに使い、休日には80分から90分近くまで伸びる。一方で30代は平日48.0分、40代は35.7分である。Facebookが届く年代は、そもそも画面に向かう時間が半分ほどしかない。
この差は運用の設計に直結する。1日に何本も流して目に留まる確率を上げる方法は、長く見ている相手には効くが、1日30分の相手には届く前に流れていく。月に数本でも、1本で用件が完結する長さに整えておくほうが読まれる。後から検索で辿り着ける形にしておく価値も、こちらの年代のほうが大きい。
男女の差は、媒体ごとに向きが違う
同じ調査には男女別の数字も載っている。Facebookは男性29.1パーセント、女性24.4パーセントで、その差は5ポイントに届かない。男女のどちらかに大きく寄った媒体ではない。
比べると違いがはっきりする。Instagramは男性47.6パーセントに対して女性57.5パーセントで、およそ10ポイント女性が高い。TikTokは男性31.0パーセント、女性35.3パーセント、LINEは男性88.4パーセント、女性93.7パーセントで、いずれも女性のほうが高い。Xは男性44.0パーセント、女性42.6パーセントとほぼ並ぶ。
届けたい相手が決まっているなら、この向きは使える。子育て世代の女性に見てほしい住まいや保育の情報はInstagram側に寄せ、性別に偏りなく30代と40代に当てたい知らせ、たとえば事業の引き継ぎや就業相談、補助制度の説明会はFacebookに置く。同じ内容を全媒体に同時に流す運用をやめる根拠が、ここにある。
Facebookに残す用件を決めてから、投稿を書く
残すか閉じるかは、用件の性質で決まる。移住の相談会、空き家バンクの説明、担い手の募集、同窓会や県人会への呼びかけ。いずれも、動くかどうかを自分で決められる年代が受け手になる。30代39.2パーセント、40代38.6パーセントという数字は、その層に対しては3人に1人以上が画面を持っていることを意味する。
逆に、学生向けのイベント告知や応募の締切をここに置くと、相手の8割近くが最初から圏外にいる。10代13.6パーセント、20代22.9パーセントでは一次の告知を任せられない。同じ原稿をInstagramとXに回したほうが早く、Facebookには報告や記録を残す役を割り振るほうが筋が通る。
引き継ぐ前に確かめておきたいのは3点ある。ページの管理権限が退職した職員の個人アカウントに紐づいていないか、投稿の本数を月いくつと決めるか、コメントへの返信を受ける運用にするかどうかである。ここを決めずに始めると、半年後に同じ状態で次の学生へ渡ることになる。
媒体ごとの年代差をXの側から見た整理は地方PRにXは向いているか|利用率50.3%と4媒体の年代差を見るに、学生が運用に入るときの線引きは自治体のSNS発信に学生が入るとき|運用方針と届く相手の実数にある。写真の扱いと引き継ぎの段取りは地方PRの写真は誰に許可を取るか|Instagramを引き継ぐ段取りまでが近い。地域と学生の関わり方の事例はFLASPOにも載せている。
よくある質問
更新が止まったFacebookページは閉じたほうがよいですか。
閉じる前に、何を載せる場だったかを決め直すほうが先である。30代と40代に向けた告知の置き場として使うなら、月1本でも残す意味がある。載せる用件がひとつも思い浮かばないなら、固定の投稿に連絡先と主な媒体への案内を置いて、更新を止めると明示する形が親切である。
10代に届かないなら、学生の発信には使えないのですか。
読み手として期待できないのと、書き手として使えないのは別である。地域の事業者や役場の担当者が見ている場で活動の記録を残しておくと、次の年度の相談がつながりやすい。発信の相手を学生に限らないなら、使い道は残る。
投稿は何本くらい必要ですか。
本数の基準を示した公的な数字はない。参考になるのは、届けたい年代がソーシャルメディアに使う時間で、30代は平日48.0分、40代は35.7分である。流れる速さが遅い前提に立てば、本数より1本の完結度を上げる設計のほうが合う。
自治体のFacebook開設率は分かりますか。
市区町村単位の最新の開設率を示した公表資料は見つけられなかった。古い数値は出回っているが、年次が10年以上離れるため運用の判断には使いにくい。自分の地域の状況は、近隣の自治体のページを実際に数える形で押さえるのが確実である。
元の数字はどこで読めますか。
年代別と男女別の利用率、利用項目別の平均利用時間は、総務省情報通信政策研究所の令和6年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書(概要)に載っている。公表の経緯は同省の報道資料から辿れる。媒体ごとの経年の動きは令和7年版情報通信白書のコミュニケーションツール・SNSが扱っている。
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