協力隊は何で評価されているのか|8,000人の目標と中途終了という空白

隊員が増えた、定住率が7割を超えた。地域おこし協力隊の話にはこうした数字が添えられるが、その数字は誰が何のために置いたものなのか。国が自分の事業を点検するために使ってきた物差しをたどると、どこが測られていて、どこが空いたままなのかが見えてくる。

国は二つの数字で、自分の事業を採点していた

各府省は毎年、自分の事業を点検して「行政事業レビューシート」という様式に落とす。総務省が作成した令和3年度のシートでは、事業名は「地域おこし協力隊の推進に要する経費」、事業番号は2021-総務-20-0018、事業開始は平成26年度とされ、根拠には平成21年3月31日付けの総務事務次官通知である地域おこし協力隊推進要綱が挙げられている。

そこに書かれた成果目標は二つだけだった。ひとつは地域協力活動に従事する隊員を令和6年度までに8,000人とすること。もうひとつは、受入可能自治体に対する受入自治体の割合を85パーセントとすることである。当時の実績は次のとおりだ。

成果指標 平成30年度 令和元年度 令和2年度 目標(最終年度)
地域協力活動に従事する隊員数 5,530人 5,503人 5,560人 8,000人(令和6年度)
受入可能自治体に対する受入自治体の割合 76% 75% 73% 85%(令和6年度)

根拠に用いた統計はいずれも総務省の調査である。隊員数は三年続けて5,500人前後で足踏みし、受入自治体の割合に至っては76パーセントから73パーセントへ下がっていた。目標まで残り4年の時点で、二つとも届いていなかったことになる。

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目標は、一年遅れで越えた

その後どうなったか。総務省地域力創造グループ地域自立応援課が令和8年4月24日に公表した令和7年度の隊員数等によれば、隊員は前年度から286名増えて8,196人になった。取組自治体は11団体増えて1,187団体である。

8,000人という目標の最終年度は令和6年度だった。その年の隊員数は7,910人で、90人足りずに期限を越えている。基準を満たしたのは翌年度に入ってからということになる。数字の上では一年遅れの達成だ。

もうひとつの指標も見ておく。受け入れが可能な自治体は1,461団体で、実際に取り組んでいるのは1,187団体だから、割合はおよそ81パーセントになる。令和2年度の73パーセントからは8ポイント戻したが、85パーセントにはまだ届かない。残っている274団体の多くは、制度を知らないのではなく、受け入れる体制を組めていないと見るほうが自然だろう。各県の受け入れ状況は地域別にまとめた記事で確かめられる。

おためしとインターンの参加者も同じ資料に並んでいる。おためしは令和6年度の1,149人から令和7年度は1,450人へ、インターンは1,047人から1,414人へ増えた。委嘱の前に短期間だけ地域に入る入口が広がっており、隊員数の伸びはこの裾野の上に乗っている。

隊員数はアウトプットに近い、と指摘されていた

同じシートの備考欄には、平成30年度の公開プロセスで出た指摘が並んでいる。評価結果は「事業内容の一部改善」だった。注目したいのは、指標そのものへの批判が含まれていた点である。

指摘はこう書かれている。本事業のアウトカムである協力隊員数はアウトプットに近い、定住、起業、中途終了などのアウトカムを設定すべきである、と。特別交付税措置がなされている本体事業についてもアウトカムを明確化すべきという注文や、制度創設から10年の節目を迎えてゴール設定と事業内容を再検討すべきという意見も添えられていた。

何人が活動しているかは、施策を打った結果として地域に何が起きたかを表さない。人数はあくまで投入量の裏返しであり、成果ではない。この区別を国の点検の場が自ら突きつけていたことは、制度を外から眺めるときの足場になる。総務省側の対応状況としては、受入自治体の割合などを新たな指標として置くこと、研修後にアンケートで効果を追うこと、自治体への聞き取りと有識者による検討を実施したことが記されている。

定住と起業は、数えられるようになった

指摘で挙げられた三つのうち、二つは公表資料に姿を見せている。令和8年4月24日に同時公表された定住状況の調査は、令和2年4月1日から令和7年3月31日までに任期を終えた8,762人を対象に、令和7年5月1日時点の居場所を追ったものだ。

同じ地域に定住したのは6,163人で70.3パーセントにあたる。内訳は活動地と同一市町村内が5,038人(57.5パーセント)、近隣市町村内が1,125人(12.8パーセント)である。任期を終えた隊員は累計で15,045人に達し、前回調査から2,363人増えた。

なりわいのほうも細かい。同一市町村内に定住した5,038人のうち、起業が2,296人で45.6パーセント、就業が1,753人で34.8パーセント、就農・就林が583人で11.6パーセント、事業承継が70人で1.4パーセントとなっている。起業の中身まで業種別に並べられており、飲食サービス業308人、美術家やデザイナーなど217人、宿泊業181人と続く。指摘された「定住」と「起業」は、この水準まで可視化された。

就業の内訳も公表されている。行政関係が480人で最も多く、観光業176人、農林漁業138人、地域づくり支援業99人と続く。役所の側に回る人が一定数いることは、任期中の仕事が自治体の業務と地続きであることの裏返しでもある。

中途終了だけが、いまも空いている

残る一つはどうか。令和7年度の公表資料を最後まで読んでも、任期の途中で活動をやめた隊員の数は出てこない。調査の対象がそもそも「任期終了した隊員」と定義されているため、途中で離れた人は分母にすら入らない。

この構造は、70.3パーセントという数字の意味を変える。これは委嘱を受けた全員のうち7割が残ったという話ではなく、最後まで勤め上げた人のなかで7割が同じ地域にとどまったという話である。途中で辞めた人がどれだけいたかが分からない以上、制度全体の歩留まりは計算できない。

応募する側にできることは、全国値を自分の確率と取り違えないことだ。受け入れ先を選ぶ段階で、その自治体がこれまで何人を迎え、何人が任期を満了し、いま何人が地域に残っているかを直接たずねればよい。答えられない自治体は、隊員の動きを把握していないということでもある。任期を終えた後の進路の散らばり方は任期終了後の行き先を追った記事に整理した。学生のうちから地域と関わりを持ちたい人にとっては、FLASPOのような接点を先に作っておくほうが、応募の前に実態を聞ける相手が増える。

よくある質問

「行政事業レビューシートはどこで読めるのか」。各府省が自前のサイトで公開しており、総務省の分は総務省行政事業レビューのページからたどれる。事業名で検索すると、予算額と執行額、成果指標、過去の指摘事項が一枚にまとまった様式が出てくる。

「定住率70.3パーセントは、募集した自治体に残った割合なのか」。違う。活動した市町村そのものに残ったのは57.5パーセントで、近隣市町村への移動を含めて70.3パーセントになる。同じ県内の別の町に移った場合も「同じ地域に定住」として数えられている。

「中途終了の数はどこかに出ていないのか」。国が毎年出す活動状況の資料には載っていない。自治体によっては議会答弁や総合戦略の進捗報告に記載していることがあるので、関心のある市町村の資料を個別に当たるほうが確実である。

「受入自治体の割合が85パーセントに届かないのは問題なのか」。目標として置かれた数字に届いていないのは事実だが、受け入れ自体は義務ではない。隊員を迎える課や住居、活動費の手当てが用意できない自治体が無理に手を挙げれば、受け入れた後の摩擦が増える。割合の上昇だけを成果と見ないほうがよい。

「自治体の評価と隊員の評価は同じものか」。別である。国が点検しているのは事業としての成果で、個々の隊員の活動は受け入れ自治体が年間プログラムに沿って判断する。応募前に年間プログラムの有無を確かめておくと、着任後に何をもって良しとされるのかが先に分かる。


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