週末移住はどこまで続くか|地方滞在44%と寒冷地25%が示す現実

金曜の夜に発って日曜に戻る暮らしは、1年の何割になるか

平日は都市で働き、週末だけ地方の家で過ごす。この形は週末移住とも二拠点の暮らしとも呼ばれ、移住ほど重くなく、旅行よりは深い関わり方として語られてきた。ただ、実際にどれくらいの時間をその土地で過ごしているのかは、本人に聞く調査が中心で、はっきりしてこなかった。

計算だけならすぐ出る。土日の2日だけを年間を通して過ごすなら、7分の2で28.6パーセントになる。金曜の夜から日曜の夜までを数えても3割を少し超える程度だ。では現に二つの拠点を維持している人たちは、この線の上にいるのか下にいるのか。

その問いに、本人の申告ではない方法で近づいた資料が出ている。国土交通省の委託調査として令和7年10月31日付で公表された二地域居住者の経済活動における試験調査 報告書で、銀行が持つ口座の入出金データから二拠点を持つ人を特定し、光熱水費の支払いから滞在の長さを推計したものだ。関係人口という言葉を数で捉え直す試みとして、読む価値がある。

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電気と水道の請求から、どちらにいたかを割り出す

この調査が二地域居住者と呼んでいるのは、東京都と、東京都以外のある地域の両方で光熱水費の支払いがある口座の持ち主である。ホテルや間借りで滞在している人、拠点を持たずに地方の仕事を受けているだけの人は入らない。対象となったのは約2,400人で、年代は50代と60代で72パーセントを占めた。

滞在の長さは、6年分の光熱費の平均から基本料金に相当する額を差し引き、使った月を基準にして首都圏と地方の支払い割合を比べる形で推計している。電気も水も、人がいれば使われ、いなければ基本料金しか発生しない。その差を時間の比率に読み替えた。ただし報告書は、これが試験的な分析であり必ずしも事実に即さない可能性が残ると、自分で断りを入れている。

単身赴任者が混ざると結果が歪むため、単身者だけを抜き出した分析も行われている。そこで出た数字が、地方に平均44パーセントという滞在割合だった。年間の変動は小さい。

項目 数値 注
分析対象の口座 約2,400人 東京と地方の双方で光熱水費の支払いがある
50代・60代が占める割合 72% 年代別の口座数から
複数人世帯の割合 87% 夫婦のみ世帯と子どもあり世帯の合計
単身者の地方滞在割合 平均44% 年間の変動は小さい
寒冷地に拠点を持つ単身者 平均25% 冬期を中心に短くなる
地方で就業している割合 16% うち8%は東京と地方にまたがる複業
国土交通省委託「二地域居住者の経済活動における試験調査 報告書」(令和7年10月31日、みずほ銀行)より作成。滞在割合は光熱費から推計した値

44パーセントは、週末だけで説明できる長さではない

先に出した単純計算と並べてみる。土日だけなら28.6パーセント、金曜の夜を足しても3割前後。実測に近い推計の44パーセントは、それを1割以上上回っている。週末に加えて、休暇や在宅勤務の日を地方側に寄せている人がかなりいる、と読むのが自然だ。

就業のデータもその読みを支える。対象のうち8割は首都圏だけで働いていたが、16パーセントは地方でも収入を得ていた。そのうち半分にあたる8パーセントは、東京と地方の両方から収入がある複業の形をとっている。地方側に仕事があれば、滞在する理由が週末以外にも生まれる。

どんな仕事が向こう側で成り立っているかも示されている。二地域居住者全体では情報通信業とその他サービス業の口座が多く、地方でも就業している人や複業をしている人では、教育・学習支援業と医療・保健衛生が目立つ。収入が多いのは情報通信業だった。報告書は、地方で就業している人のほうが都市部だけで働く場合より高い収入が見込まれる、とも整理している。場所を選ばない仕事と、地方側に需要がある仕事。二つの入り方があるということだ。

逆に言えば、仕事が都市側にしかない人にとって、滞在割合を3割より上に押し上げるのは難しい。週末移住が続くかどうかを分けているのは、住まいの有無より、向こう側に用事があるかどうかだ。関わりの入口を探す段階の人は二地域居住とは?費用・メリット・デメリット・始め方を解説から順に見ておくと、自分がどの段階にいるか分かりやすい。

寒冷地では25パーセントまで落ち、冬に途切れる

同じ推計を寒冷地に拠点を持つ人に限ると、数字は平均25パーセントまで下がる。週末だけ通った場合の計算値である28.6パーセントを下回る。冬を中心に、行かない月が生まれているということだ。

費用の面から見ると理由が分かる。地方側の月ごとの光熱水費は12月から3月にかけて高くなる傾向があり、暖房を使う期間に負担が集中する。報告書は、全国の単身世帯の平均光熱費である月12,816円(総務省の2024年家計調査による)と比べれば地方拠点の金額自体は少ないとしつつ、主たる拠点の分に上乗せされることを考えると、20パーセントから60パーセントの追加負担が生じていると整理している。

地域によって金額の水準も違う。光熱水費の総額が大きいのは近畿、北海道、中部だった。寒さだけでなく、拠点の広さや設備の違いも効いていると考えられる。行き先を選ぶ段階で、交通費と家賃だけを比べて決めてしまうと、住み始めてから毎月の固定費で差が出る。

二つ目の家は、家賃や購入費だけで終わらない。使っていない月も基本料金は出ていき、寒い時期ほど一回行くための費用が上がる。行かない月ができるのは意志の弱さではなく、費用の構造から来ている。費用の積み上げ方は二地域居住の費用を積み上げる|家賃・税金・移動の実額で考えるに詳しい。

続いている人の像は、学生がそのまま真似られる形ではない

この調査が描いた人物像を並べると、50代と60代が7割強、夫婦のみ世帯が多く、子どもあり世帯と合わせて87パーセントが複数人世帯、手取り年収は400万円から700万円の層が厚く平均で約800万円だった。東京都の平均より高い。二つの拠点を維持する固定費を払える層が、結果として残っているという形に見える。

20代と70代は必ずしも年収が高くない傾向も示されており、調査自身が、支出に耐えられる層の呼び込みが効果を持つ一方で、単身者をどう取り込むかが課題だと述べている。若い世代が同じやり方で二拠点を始めようとすると、収入の側で先に詰まる。20歳代の関心と実施のへだたりは二地域居住と若者|20歳代の関心44.9%と実施6.7%の段差を読むでも確かめられる。

では学生にできることが無いかというと、そうではない。住まいを二つ持つことが入口なのではなく、その土地に用事を作ることが入口だという順番が、この数字から読み取れるからだ。滞在の長さは後から付いてくる。地域の課題に短期で関わる機会を先に持っておくという考え方は、FLASPOのような場で地域と接点を作る動き方とも重なる。

よくある質問

44パーセントという数字はどこまで信用できますか。本人への聞き取りではなく光熱費からの推計で、報告書も試験的な分析だと明記しています。精度を保証するものではありませんが、申告に頼らない方法で出した値として、意識調査とは別の角度を与えてくれます。

週末移住と二地域居住は違うものですか。この調査は両者を区別せず、二つの地域に拠点がある状態をまとめて扱っています。週末だけ通う形は、その中で滞在割合が低いほうに位置づけられます。

寒冷地だと向いていないということですか。向き不向きではなく、冬の費用と移動の負担が大きいという話です。夏を中心に通う形に設計し直せば続きます。通年で同じ頻度を前提に計画すると無理が出ます。

学生が週末だけ地方に通うことはできますか。拠点を借りずに始める方法なら可能です。自治体の短期滞在施設や、受け入れ側が宿泊を用意している活動から入れば、固定費を抱えずに回数を重ねられます。

地方で収入を得られると続きやすいのですか。調査では地方でも収入がある人が16パーセント、うち半分が東京と地方にまたがる複業でした。向こう側に仕事があると滞在の理由が週末以外にも生まれるため、関わりが長く続く方向に働きます。


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